無線LAN・固定電話系の電源 - ACアダプターから置き換えた 2020年7月

  12V電源   5V電源 ■従前の無線LAN系電源  半月前に無線LAN機の入れ替えを行った(関係記事)。そこで気になったのは複数あるACアダプター(AC-DCアダプタ)だ。  書斎では、全てのACアダプターをクリーンな電源に置き換えている(関係記事)。今回入れ替えた無線LAN子機/中継機NEC Aterm WG1200CRも、ただちにマルチ電源3号機から供給するようにした。PC系ネットワークの無線LAN子機/中継機NEC Aterm WG2600HSも、以前の自作12V電源(シャントレギュレータIC TL431使用のリニア電源)にした。  ところが、居間では機器付属のACアダプターをそのまま使っていて、無線LAN系が3個、固定電話用の1個を加えると4個ある。   ①無線LAN親機 NEC Aterm WG2600HP3用 12V 1.5A   ②ひかり電話ホームゲートウェイ RT-S300NE用 12V 2.3A   ③VDSL装置 VH-100E「S」用 12V 1A   ④固定電話 パナソニック VE-GZ20用 5.5V/500mA  なお、②③は機器本体ともどもNTTのレンタル品で、それぞれ9年、15年使っているベテランだ。故障しないと交換してもらえないので、古いままだ。  電源として、特に不具合なく本体機器に電力を供給しているが、何せ低コストのACアダプターなので隠れた問題がありそうだ。  ①②④はスイッチング・レギュレータで、スイッチングノイズが直流出力に重畳しているだろうし、周囲の空間にも電磁波として出しているだろう。③は今や珍しいトランス式のシリーズ・レギュレータで、重い。スイッチングノイズが無いかわりに、整流ノイズやリップル、電圧変動があるだろう。  また、もう一つの問題だが、見た目がすっきりしない。ACアダプターが4個、ごちゃごちゃとつながっていて形が悪いので、プラスチックのかごに入れて隠してきた。 ■構想  では、これらのACアダプターをどう置き換えようか?  とことん質を追求するなら、オーディオ系と同じ超低ノイズ電源の自作になるが、さすがに無線LAN機器や固定電話に対してそれはやり過ぎというものだ。  ACアダプターときちんと設計されたスイッチング電源ユニットとでは、同じスイッチング電源といっても全く別物である。高品質の汎用スイッチング電源ユニットを使えば、クリーン電源とまで言えないが実用上十分にノイズを抑えた電源になるだろう。工作の手間はさほどでなく、コストも1万円未満だろう。(実際には、手持ちの部品・ケーブルを使ったので、6千円ほどのTDKラムダのユニット購入だけで済んだ。)  電源を一つにまとめれば配線が整理され、見た目もすっきりする。  ただ、無線LANの速度が上がる、固定電話の音質が良くなる、といった機能上の効果があるかといえば、これは無いだろう。電源の置き換えは、あくまで気休め、自己満足の事柄だ。  非オーディオ系にそこまでやりますか、ということなのだが、まあ、今回の機器入れ替えを機会に思い切って交換することにした。 ■工作 (1)スイッチング電源ユニットの選択  24時間365日運転になるので、信頼性、耐久性が命だ。またそもそもの目的からして、十分にノイズ対策されていることが大事だ。ここで安物買いをしてはいけない。  ①②③の12V3系統は、日本メーカーの汎用スイッチング電源の代表選手、TDKラムダのHWS-Aシリーズを購入した。80W級、出力12VのHWS80A-12/Aで、耐久性やノイズ対策は信頼して良いだろう。ACアダプター①②③の定格電流を合計すると4.8Aであり、58Wということになる。50W級では不足なので、次に大きい80W級とした。実際の消費電力は30W程度と思うが。  ④の5.5V 500mAは、手持ちのユニット、スイス TRACO POWERのTPM10105 5V 2Aを使うことにした。この電源は小型のオンボード型ながらノイズ対策がしっかりしているようで、これまでPCオーディオ用に何回か臨時に使って、アナログ電源に引けを取らない高音質を確認している。付属ACアダプターの5.5Vから5Vに下がることになるが、誤差の範囲、まず問題ないだろう。 (2)構成  スイッチング電源に入出力を配線するだけだが、念のため、AC入力側に外付けノイズフィルター(EMCフィルター)を入れた。12V電源では出力を3系統に分岐させ、パスコンを入れた。HWS80A-12/Aはヒューズ内蔵なので、外付け省略。常時通電なので、電源スイッチやパイロットランプも付けない。   (3)ケース、実装  手持ちの部品・ケーブルのストックを使ってやりくりすることとし、HWS80A-12/Aは秋葉原 奥沢の簡易なアルミシャーシ(W200xD100xH50)に取り付けた。2個あったので、1個はHWS80A-12/Aにかぶせるカバーにした。上方への電磁波放射を遮る狙いだ。デザイン性ゼロの外見だが、目に触れない場所に置くのでそれで良い。知らずに触れて家人が感電しないことだけ気をつけた。  ノイズフィルターやパスコン(手持ちの電解コンデンサ1,000μF+スチロールコンデンサ330pF)はシャーシ内に収めた。単純な配線だが、空中配線にせず、堅実に縦型ラグ板や端子台を使った。ラグ板を隅に寄せ過ぎたのは失敗で、配線が混雑してしまった。工作としては、プラス・マイナスの極性に注意するくらいで難しくない。     5V電源は、スイッチングハブへの直接給電実験に使用した3.3V低ノイズ電源(関係記事)が残っていた。木製の台にTRACOの電源ユニットを載せ、アルミ板の天板を付けたバラック仕立てのものだ。これを流用し、低ノイズ・リニアレギュレータIC TPS7A4700基板を外してユニットの5V出力をそのまま使う形にした。工作といってもそれだけ。こちらもデザイン性ゼロだ。 (4)DCプラグ  機器に繋ぐDCプラグだが、規格の標準化がされておらず少々厄介だ。EIAJ(日本電子機械工業会)の、電圧に応じた5種類の規格があるが、あまり普及していない。一般には、外径5.5mm、内径2.5mmまたは2.1mm センターピン無しのものが比較的多く使われていて、手持ちのストックもある。  今回の4種の機器のプラグは、①②が同じで外径5mm センターピンあり、③が外径6mm センターピンありで、あまり見ない規格だ。④はEIAJ-2に近い寸法だが、準拠品なのか不明だ。  いずれも手持ちが無いので、元のACアダプターから切り取って流用することにした。②③は、NTTに返却する時に文句をつけられるかもしれない(?)。 ■完成  通電試験では、12V電源3系統、5V電源1系統、それぞれ安定して動作し、出力変動、発振、異常発熱等は見られない。  システムに組み入れて常時運転に入ったが、無線LAN機器、固定電話は正常に動作している。発熱は、どちらもさすがスイッチング電源で効率が良く、少し温かくなる程度だ。(固定電話の5.5Vと5Vの電圧差は、やはり問題なかった。)  目隠しのプラスチックかごから置き台を変えたこともあって、見た目もすっきり整理された。  機能上の効果は特に無いが、やるだけやって安心した。ノイズ対策がなされ、より安定した電源になったものと期待したい。