キーボードの新調(PCその3) - 東プレ REALFORCE R2 2020年5月

■これまでのキーボード  手元に二つのキーボードがあって、どちらも由緒正しい(?)代物だ。    ①IBM 5576-A01    ②FILCO Majestouch FKB108M/NB  ①は、日本IBMがPS/55他のパソコンと組み合わせたというから1987年発売か。付属説明書は1991年発行だ。1997年頃に秋葉原で新古品(未使用旧モデルの廉売)を買ったもので、断続的だが20年以上使ってきた。106キー日本語配列の1号機だそうだ。今はもう見かけない座屈スプリング+メンブレンスイッチ式。昔のものはこんなに立派だった、という伝説的キーボードである。  ②は2004年発売、買ったのは2007年頃だったか。メカニカル式キーボードの代表格で、Cherry社のMXスイッチを使っている。後継の現行機も評価が高い。ここ数年はカミさんがデスクトップPCで使っていた。  二つとも古く、①はもはやビンテージだが、動作に問題は無い。3月にパソコンを新調したが(その1記事)、キーボードについては今後も①をメイン、②をサブとして使って行くつもりでいた。 ■定額給付金で東プレのキーボード導入  ところがその後、新型コロナ肺炎関連の経済対策として、定額給付金一律支給という話が出てきた。思いがけない支給だが、趣旨に鑑みれば、この10万円は貯蓄するのではなく日本経済のためにしっかりと消費しなくてはいけない。  給付金の使途を考える中、昔のことだが英語配列(US配列)のキーボードを使った時期があり、日本語配列(JIS配列)より使いやすかったことを思い出した。手元の二つのキーボードはどちらも日本語配列であり、いくつも届きにくいキーがあってホームポジションが崩れるのだ。  私は、ローマ字入力派で、「生半可」タッチタイプである。だいたいのキー位置を指が覚えているが完全ではなく、しばしば手元を見て確認している。最下段のN・M・読点・句点、右手小指を使うEnter・Backspace・記号類ではホームポジションを守れない。  英語配列のキーボードは、Enterキー、Backspaceキーが横長で右手小指に近いので届きやすい。記号類のキーが整理されているので、( ) 「 」も打ちやすい。最下段のN、M、読点、句点の位置は日本語配列と同じだから問題全てが解決するわけではないが、だいぶましになる。かな入力派ならば日本語配列を選ぶほかないが、ローマ字入力の場合は英語配列の方がホームポジションを守りやすく、ストレスが少ないのだ。  仕事を離れたシニアの私は、職場のパソコンとの整合性など考える必要が無い。自分一人の使い勝手を考えれば良いのだから、この機会に英語配列キーボード、それも良質な国内製品を新調するのは良いかもしれない。  候補を調べ、世評が高い東プレ製品にした。独自の静電容量無接点方式スイッチを使っていて、打鍵感が大変良いという。種類が多くて迷うが、英語配列で、テンキー無し、APC機能付、変荷重、アイボリー色のRealfoce R2TLA-USV-IVに決め、定額給付金の支給を待たずに購入した。相模原市の東プレの製品(旧称東京プレス工業株式会社だそうだ)、秋葉原のパソコン店のネット通販。微力ながらの国内企業応援だ! ■キーボードの比較  良い機会なので、三つのキーボードを比較してみる。 ①IBM 5576-A01  このキーボードは、他では得られない打鍵感、明快な入力感がある。ストロークの途中に明確なタクタイル(この場合は引っ掛かる感触)があって、カシャとクリック音がする。確実な入力感が得られ、打鍵が快いのだ。  ただし、タッチはかなり重く、長い入力では疲れる。また、カシャ・カシャと打鍵音が盛大で、周囲の迷惑になるほどうるさい。こうした短所と背中合わせに打鍵感の良さがある構造なのだろう。  往時はこれが標準、現在にあっては超硬派、強烈個性のキーボードだ。 ②FILCO Majestouch FKB108M/NB  Cherry社MX茶軸スイッチを使うメカニカル式だが、押し下げ圧が軽くリニアで、タクタイルといっても引っ掛かりというより微かな摩擦程度の感触だ。底打ちで入力感を得ることになる。IBMに比べると暖簾に腕押しの頼りなさだ。  打鍵音は、IBMより小さいもののカチカチと高音成分が多く、少々うるさく感じる。  FILCOサイトの現行製品に関する説明によると、「MX茶軸は接点部にごくわずかにソフトな感触があるタクタイルタイプ。軽快な入力感が楽しめます」ということだ。一般的な評価としては、オーソドックスで誰にも受け入れられる優良キーボードなのだが、私はIBMとの比較で中途半端に感じてしまう。相性が良くないようだ。同じFILCO Majestouchでも、IBMに特性が近いMX青軸を使った機種ならばどうだったろうか。 ●追記 2020年6月  ヨドバシカメラで、MX青軸、茶軸、赤軸のテストボード、陳列品のキーボードを試してみた。  軸ごとの違いといっても、超硬派のIBMとの比較で言えばごく僅かで小さい範囲だ。微かなタクタイル感、クリック音の有無くらいで、違いは微妙だ。三種類とも押し下げ圧が軽く、私を含めてたいていの人は底打ちにより入力感を得ることになるだろう。とすれば、打鍵音も特に赤軸が小さいわけではなく、大同小異ということになる。三種の中では、タクタイルというか、クリックが感じられる青軸の打ち心地が、比較的良いと思った。といって、青軸が絶対というほどではない。 ③東プレ Realfoce R2TLA-USV-IV  押し下げ圧が軽く、ストローク途中の引っ掛かり感が無いのはFILCOと同様だが、カップラバーとコーン型ばねで押し下げ圧にうまく山を作ってあり、スコッという感じの独特の打鍵感だ。IBMともFILCOとも方向が異なる軽くソフトな感触だが、これはこれでなかなか打ち心地が良い。そもそも、打鍵と言うが、もはや「打つ」ではなく「押す」感じなのだ。東プレ社は「指に優しいソフトタクタイルフィーリング」と言っている。  打鍵音は小さい。底づき音が低音域のコト・コトなのでうるさくない。押さずに打ってしまうと戻りの当たり音(こちらはプラスチックの高音)があるが、IBMに比べれば気にならない音量だ。ちなみに、東プレは高音域を抑えた静音型Realforceも作っているが、私は通常型で十分に静かと感じる。  「押す」入力を受け容れるならば、東プレは性格穏やかでこれという欠点が無い、今の時代の優等生キーボードだ。  キーボードについては、人それぞれの主観的な好みがあり、さらに慣れの要素も大きいと考える。しばらく使うと順応した打鍵になり、そのキーボードが自分の基準になってしまう。私の場合は、これまで主に使ってきたIBMが基準になっている。それが前提の評価だが、打鍵感だけ取り上げればIBMが捨てがたいものの、総合評価は 東プレ > IBM > FILCOの順だ。  今後は東プレを専ら使っていくことにし、IBM、FILCOはついに引退だ。 ■英語配列は実際どうか  総じて良い感じだ。ホームポジションからの指の届き具合は購入前の予想どおりで、Enterキー、Backspaceキーが近いのは何といってもありがたい。記号類の配列も具合良い。スペースキーが長いこともやはり良い。  英語配列の短所としてよく指摘されるのが、IME(かな漢字変換)オン・オフのトグルキーだ。頻繁に行う操作だが、日本語配列で「半角/全角」キーひとつで済むものが、英語配列では「Alt」+「`」の二つになって面倒なのだ。だが、この問題はkarakaram氏のフリーツール alt-ime-ahk.exe をスタートアップに入れることで解消する。右AltキーでIMEオン、左Altでオフになり、トグル以上に使い勝手が良い。感謝。  ひと月もすれば配列の違いにすっかり慣れて、使い良い道具になっているだろう。 ■Ctrl・Caps Lockの入れ換えはどうか  付属の設定ソフトで、左端のCtrlキーとCaps Lockの位置を入れ換えることができる。交換用キートップも付属している。入れ換えると、よく使うCtrlキーがホームポジションの左隣になって使いやすくなるので、そうすることにした。  こちらも、しばらく使えば慣れるだろう。 ■変荷重キーはどうか  東プレのキーボードは、キーの押し下げ圧の違いで、30g、45g、55g、変荷重の4種類がある。30g、40g、55gのモデルは、全キーをその荷重で統一してある。変荷重というのは、主要なキーは45g、小指が使う文字キーは30g、ESCキーだけは55gと、キーによって荷重を変えてある。他のメーカーには無い特性だ。  私が選んだのは変荷重モデルだ。人差し指でキーを押してみると、確かに場所によって押し下げ圧が異なる。30gと思しきキーは確かに軽めだし、55gのESCキーは重めだ。極端な違いでは無いのだが。  実際に30gキーを使う小指では、軽いとは特に感じない。つまりは、弱い小指でも楽に押せるので違和感が無いということだろう。  なお、ほとんどのキーは45gだが押し下げ圧として適度と思う。人差し指、中指には、30gでは軽すぎるかもしれない。55gとなると重く感じるだろう。  購入前には変荷重と統一荷重とで迷ったが、私はゲームに使うわけではなく文章入力だけなので、それに向く変荷重モデルで正解だったと思う。ただ、人間には順応性があるので45g統一、30g統一のモデルであってもそれに慣れ、格別問題無いだろう、とも思う。 ■APC機能はどうか  今回導入したR2TLA-USV-IVには、APC(Actuation Point Changer)機能がある。付属の設定ソフトで、スイッチ反応位置(キータッチの深さ)を1.5mm、2.2mm、3mmのいずれかに設定できる。すなわち、キータッチに対する感度を設定できるのだ。これは、東プレ独自の静電容量式のスイッチだからこそ可能な機能だ。一括設定も、キーごとの個別設定もできる。  2.2mmが標準だが、感度が鋭敏な1.5mmは速い入力に向き、感度を鈍らせた3mmは不意の誤入力防止に向く。一瞬の入力速さが問題になるのはタイプやゲームのプロフェッショナルの話であり、素人の私は余計なキーに触っての誤入力を防止したい。  一括設定で、試しにデフォルトの2.2mmから1.5mmや3mmに変えてみたが、入力感が変わることは特に無かった。1.5mmで反応が鋭敏過ぎる、3mmで入力を取りこぼすといったことは起こらず、APCの効果を実感できなかった。これは、私の打鍵の癖として、底づきするまで深く押し下げているせいかもしれない。今後、このキーボードに慣れるにつれて底打ちしなくなっていくと思われ、そうなればまた話が違ってくるかもしれない。  とりあえずは、基本は2.2mm、あまり使わないキーを3mmに個別設定して、当初の狙いの誤入力防止を試みることにした。しばらく試行錯誤して効果をみたい。  APCとは別に、2種類の厚みのキースペーサーが付属していて、デフォルト4mmのキーストロークを浅くする調整ができる。これによりストロークを浅くし、APCも1.5mmに変えれば、浅いキータッチの別タイプのキーボードに変わる。私はデフォルト4mmのままで良い。 ■木製パームレストを自作した  パームレストはやはり必需品だ。市販もあるが、作ってみることにした。  材木屋にカリン(花梨)の端切れがあった。幅80mm・厚み15mmとちょうど良い寸法で、柾目で反りも無い。カリンは重い材質で、赤茶のきれいな木肌の高級材だ。二つに切ってもらい、365mmのMサイズ、295mmのSサイズの2本ができた。端材なので、カット代込み千円未満という値段であった。  市販品で評判良いFILCO製パームレストは、天面の1/2幅に傾斜がついて手首側が下がっている。良いのかもしれないが、カリンは密で硬いため加工が大変だ。平らのままの天面でよしとする。  そうすると、自作と言っても塗装だけだ。木地そのままでは汚れるし、反りも出てくる。ペーパー研磨、つや消しウレタンニス拭き塗りを3回繰り返して、終了。市販品に見劣りしない仕上がりだ!?  使い心地を決めるのはパームレストの高さだ。高さは、裏面につけるすべり止めで調節できる。REALFORCE R2は手前部分の高さが18mmであり、人によって違うと思うが、私の場合は15~19mmの範囲が良い感じで、ベストは17mmだ。  これでカリン材パームレスト2本が完成。サイズとしてはMサイズがぴったりの幅だが、Sサイズも実用になる。15mmほどキーボード手前に置いて、文句のない使い心地だ。 ■吸振マットを貼り付けた  バード電子製「RF吸振マットHG」が、東プレ REALFORCE R2 テンキー無しタイプ専用、タイピング時のキーの振動・反発を吸収する、という。ほどほどの価格なので試してみることにした。  キーボードの裏に貼り付けた。幅の半分ほどをカバーし、製造番号の箇所は窓が開いている。  東プレキーボードの内部は、鉄板フレームにスイッチユニットが乗っていると思われ、重くしっかりした構造だ。それでもプラスチック筐体の裏面を叩くと鳴るので、隙間が空いていてマット貼り付けの効果はあるはずと考えたが、実際は予想以上。東プレキーボードの良さをさらに向上してくれる。価格に見合う効果があった。  打鍵音は、低音域の底づき音、高音域の戻り音が、どちらも小さく落ち着いた音になった。音が半分以下になった感じで、一段と静かになった。良いじゃないか!  打鍵感も向上した印象だ。力が一部筐体の振動となってぼやけていたのが、しっかり伝わる感じだ。といってもカツンと撥ね返る硬さではなく、ちょうど良い手ごたえ。基礎がしっかり安定した感じである。  厚さ3mmなので、キーボードの端の高さは21mmに変わった。カリン材パームレストの高さも20mmにし、これでOK。 ■デザインのこと  東プレキーボードは、R2になってボディの無駄をそぎ落とした直線的なデザインになった。すっきりして好ましい。購入したのはテンキー無しのタイプだが、予想以上にサイズが小振りなので具合良い。マウスをすぐ右に置くスペースができた。  難点は配色デザインだ。アイボリーモデルのボディとキートップの色はいかにもオフィス向け。30年前のIBM 5576-A01と変わらない。無難で落ち着いた配色ではあるが、まるで洒落っ気が無い。右上のキー3個の囲みも、デザイン上のアクセントと思うが、無くもがなだ。  アイボリーでなければブラックモデルだが、こちらもありきたりの黒一色だ。キートップの表示文字が墨色となると、私の生半可タッチタイプの及ぶところではない。  純正で交換用全キーセット(6色)が売られているが、どれも主張が強い色の単色セットだ。1、2個をアクセントに使う分には良いが、全部/一部の交換というと難しい。アクセント用にばら売りするとか、小粋な配色の2・3色組み合わせセットを出すとかしてくれると良いのだが。

1か月後の報告 - 2020年6月追記

■キーの一部を別色にしてみた  配色デザインについて不満を述べたが、東プレ用交換キートップとして、Esc、Ctrl、Enterの3キーセットが中国の通販サイトAliExpressで売られていたので注文してみた。9色のうち、くすんだオレンジ色を選択。  ひと月かかって到着した。アクセントを加えたかったのだが、中途半端な色で微妙な感じだ。 ■使い心地はその後どうか  東プレキーボードの「押す」入力にすっかり慣れ、指を大きく上下させて「打つ」入力ではなく、あまりキーから指先を離さず押す感じになった。自ずと、底まで強く打つ打鍵はしなくなった。軽い押し下げ圧にも馴染み、使い心地は悪くない。  「押す」入力に慣れてくると、さらに進んで軽く触れるようなタッチにもなってくる。すると、東プレで標準的な45gの押し下げ圧でもキーの反発力を感じる。さらに軽い30gの機種を選ぶ気持ちもわかる感じがしてきた。ただ、軽さを追及すると入力感が薄れるのかもしれない。45gか30gか、各自が自分の最適圧を決めるほかない。まあ、慣れの問題だ。私は、主要キー45g、小指キー30gの変荷重で良しと考える。  APC機能について、使わないキーのAPCを3mmに設定するなど、個別設定を試行錯誤してみた。正直なところ、ほとんど変化が感じられない。誤入力減少が狙いなのだが、はっきりした効果は無い。が、微妙に効いている感じもある。APC機能は、必須ではないがあっても良い、といったところか。  キー配列については、英語配列、位置を変えたCtrlキー、AltキーによるIMEオンオフという変化に当初混乱したが、じきに慣れて間違えなくなった。もうこの配列を使い良く感じている。  実は、キーボードの入れ替えてから、改めてタッチタイプを練習している。昔やった増田 忠氏のメソッド(きくこかけ・・・)に句読点や長音の記号(ー)も加えて、毎日3分間練習だ。しかし誤入力が多い。生半可タッチタイプたるゆえんだが、完璧は無理でも少しレベルアップできれば良い。  それはともかくとして、パームレスト、吸振マットのおかげもあって、東プレキーボードは使い良い道具になった。さらに言えば、使って楽しい道具になっている。 ■ついでにマウスも新調した  マウスはLogicool M500tをこの4年間使ってきた。有線マウスの代表格で、手に馴染んで性能も良いのだが、重いのが難点。マウスは、ちょっと持ち上げて位置を変えることを時々行う。M500tはケーブル別実測119gで、この持ち上げがずっしり重いのだ。  マウスも定額給付金で新調することにした。  デスクトップPCで使うので、やはり安定的な有線が良い。有線で軽量のマウスというと、最近のゲーム用マウスがそうした方向になっているようだ。軽量化され、有線といってもケーブルが極めて柔軟で邪魔にならない。ゲーミングマウスはビジネス用よりやや高価だが、検討の結果、Endgame Gear製XM1を購入した。ドイツのメーカーで、国内企業応援にならないのが残念だ。  使い勝手は上々。ケーブル別実測70gで、500tとの差はたかだか49gだが、実感は大違いだ。実に軽快に動き、持ち上げやすい。白基調のすっきりしたデザインで好感が持てる。(上の写真)  合わせて、マウスパッドもゲーム用のLogicool G640Rに替えた。ゲームではマウスを低感度に設定して大きく動かすものらしく、巨大なパッドだ。私はゲームをしない高感度派なので、1/4の大きさにカットした。XM1マウスとの組み合わせで適度な滑り具合となり、こちらも良い道具になった。