パソコン用新キーボード(PCその6) - Keychron Q8 購入 2022年8月

 パソコン用キーボードに関して、Alice配列の「Vision」の木製ケース自作記事を書いたのはつい1年前のことだ。  キーボードのAlice配列とは、左手・右手のキーを人間工学的に角度をつけて分けたレイアウトだ。金属ケースに入れたデザインは、2018年にマレーシアのデザイナーyuktsi氏が設計した「TGR-Alice」がオリジナルで、機能美がある。その影響で、Aliceクローンのカスタム・キーボードがいくつも作られている。  その一つが、私が出会ったSatT99氏の「Vision」で、洗練されてとても美しい。私の自作木製ケースでは美しさも台無しだが、おかげでAlice配列の使いやすさは実感できた。一般的なタイピング、運指方法は、最初に左手・右手(の人差し指)をホームポジション(FとJ)に置き、そこからの各指の守備範囲が定まっているわけだが、Alice配列ではホームポジションに自然と指が行くので具合が良い。  先日、Keychron社から、Aliceクローンの既製品65%キーボード Keychron Q8が発売されたので買ってしまった。 ■Keychron Q8  Keychron社は香港のメーカーで、デザインが洗練され、コストパフォーマンスが高いキーボードを作っている。自ら最先端のものを創造するというより、自作キーボード界のトレンドを上手に取り入れて製品としてまとめ、自作キーボードより量産して廉価で売っている。  Q8もまさにその例で、Alice配列、ずっしり重い金属ケース、打鍵感が良いといわれるガスケット・マウント、ソケットによりスイッチ交換可能、QMK/VIAによりキーマップ編集可能、といった最近の自作カスタム・キーボードの流行を盛り込んでいる。つまり、メーカー製のカスタム・キーボードである。そして自作カスタム・キーボードの半値以下だ。  著作権や特許権などがどうも無いらしい自作キーボード界なので、メーカーによるこうした商品化もありだろうけれど、いささか複雑な気持ちになる。香港企業といっても製造は広州、立派な中国製で、だからこそ成り立つ品だ。これまた複雑な気持ちになる。  さはさりながら、Q8は、Visionで使いやすさを実感したAlice配列だ。さらに、数字(Shiftで記号)キー、矢印キーが加わって、常用する文字・記号をレイヤーの切り替え無しに打つことができ、操作性が高い。キーキャップも選択幅がぐんと広がる。と、私の望む要素を備えていて、しかもお安い。何より、共同購入(グループバイ)による頒布で極めて入手が難しい自作キーボードと違って、普通の販売で待たずにすぐ買うことができる。ということで、複雑な気持ちは脇に置いて、購入を決めた。  Keychron Q8は、キ―スイッチ、キーキャップが付く完成版と、付いていないベアボーン版があり、後者を選んだ。キーキャップは、同じKeychron社のサイトでチェリー・プロファイルのものが廉価で売られていて、デザイン・色が良さそうなので一緒に購入(Cherry Profile Double-Shot PBT Full Set Keycaps - Royal)。キ―スイッチは、木製ケース版Visionで使ったMOMOKA Frogスイッチが手元に少し残っているので、買い足してこれを使うことにした。 ■組み立て  Keychron社サイトで水曜日に注文したら、翌週水曜日にわが家に到着した。広州市から香港を経ての空輸で、通関手続きも含めてだから、これは早い。国際宅配便会社はDHLだった。追加の課税も徴収されなかった。  早速、組み立て。といっても、はんだ付け不要、キ―スイッチをソケットに差し込み、キ―キャップを被せるだけなので、30分足らずで終了。キ―スイッチは、事前に端子足を磨いて接点復活剤を薄塗りしておいた。  キーマップ編集ソフトVIAのキーテスターで動作テストを行い、1個だけ反応が悪いスイッチがあったので交換。スイッチの不良ではなく、たぶん端子足とソケットの接触の問題だろう。キ―キャップは、私の一部入れ替え箇所を含めて、Q8に必要な種類・サイズのキーが十二分に備わっていて、具合良く組むことができた。VIAで、キーマップの一部を初期状態から変更して作業終了。 ■使ってみて  使い始めから、違和感なく打鍵できた。  木製ケース版Visionとは同じAlice配列だが、Visionの40%/48キーに対し、Keychron Q8は65%/68キー+1ノブ(ロータリー・エンコーダ)。最上段の数字キー(Shiftで記号)の分、Visionより1行増えていて、Q8はレイヤーを切替えずに文字・数字・記号の入力ができる。パスワードを入力する場合など、やはりこの方がストレスが無い。一方、1行少ないVisionは、見た目がシンプルだし、いちいち手元を見なくてもホームポジション位置、個々のキー位置が直感できて指が迷わない。身体の延長の感覚が得やすい点で、道具としてはこちらが上だ。1行多いか少ないかで、一長一短だ。  数字行をアルファベット行から少し離してくれれば(F1~F12キーのように)、シンプルな配列に見えて、ぐっと打ちやすくなると思うのだが。あと、右手小指のPのキーは、TGR-AliceやVisionのように右に振ってくれると良かったかも。  65%キーボードのため、手持ちのキーボード、東プレREALFORCE R2(英語配列)と配列がほぼ変わらず、違和感無く使うことができるのは具合が良い。  アルミ削りだしケースは良い作りで、歪みや雑な仕上げは無い。カスタム・キーボードによくある真鍮の底面ウエイトは付いていないが、約1.9kgの重量があって、音が響かず静かだ。ガスケット・マウントの効果で、ソケットにスイッチを差し込む際にはプレートが数mm沈むが、通常の打鍵で沈むことは無い。硬いガチガチではない一方、重い金属ケースの安定した支えがあって適度な良い打鍵感だ。  キ―キャップのデザイン・色も気に入った。グレーのケースに合い、Keychron社の完成版Q8と比べても悪くない。MOMOKA Frogスイッチも良い感触だ。総合して、高い完成度のキーボードになった。  常用のキーボードとして、東プレREALFORCE R2と交代で使うことになりそうだ。