LANケーブルの自作

電源タップ・電源ケーブルの自作 - ある意味究極? 2018年2月

 オーディオ用電源タップの自作について、新たな工作でなく、5年ほど前に作って使っ てきたものの改造だが、ご紹介する。  電源ケーブルの自作にも言及して、ケーブル自作シリーズはこれにて一段落だ。 ■自作電源タップのコンセプト  オーディオ用の電源タップ、電源ケーブルの世界は、知らない人から見ればちょっと異常だろう。オーディオ目的の名のもと、ホースのように太いケーブル、ごついコネクタを使って、何万円、何十万円の価格だ。ケーブルやコネクターが、信号系だけでなく電源系においても音質に影響することが常識になって久しいが、それにしても・・・。  コスト的にとてもお付き合いしきれないので、ずっと私は安い材料で自作している。高額な市販電源タップ、電源ケーブルの使用経験は無い。それらと比較したうえでの記事でないことを、はじめにお断りしておきたい。  電源タップや電源ケーブルの自作は、材料を買ってきて接続するだけ。工作としては単純で難しいものではないが、目指す方向というか、自分なりのコンセプトはある。  コンセプトの第一は、物理的な振動への対策だ。そもそも屋内配線が50Hz/60Hzの交流で振動しており、壁コンセントから電源タップ、電源ケーブルに伝わる。アンプが音楽信号を増幅すれば、その波形の振動も逆に電源ラインに伝わり、他の機器に影響する。  電源タップやコネクターは、電極の振動を抑えるとともに、本体自体がコンパクトで空洞が少ない頑丈な構造で、鳴きにくいものが良いだろう。  ケーブルも、振動の伝播を遮断するため、硬いものばかりでなく柔らかいケーブルを一部に使ってコントロールするのが良いという。  コンセプトの第二は、接点の接触への対策だ。  接点として、まず誰もが気になるのは、プラグの刃とプラグ受けの接触だろう。単にプラグ受け側のばね圧で押さえるだけの構造で不確実な接触だが、これをはんだ付けしてしまうわけにもいかない。個人にできる対策は、ばね圧を強く保ち、接点を清掃するくらいだ。  接点としてもう一つ、ケーブル芯線とプラグ導体との接続がある。一般に、ねじやばねで留める簡単な構造で、こちらも確実とは言えない接触だ。少しでも確実なものにする対策はないか、である。  知ったふうなことを述べたが、種を明かすと、これは私のアイディアではない。振動対策の重要性は、ソニーのオーディオ技術者金井 隆氏がサイト「かないまる」で提起している。特に電源コード自作記事にヒントをいただいた。確実な接続についても、後述の銅単線を使った方法は金井氏のアイディアである。感謝。  もうひとつ、コンセプトの第三は電気的なノイズへの対策だ。AC電源ラインには高周波ノイズが乗っているという。家の外部からのノイズ、屋内の電気器具が発するノイズ、個々のオーディオ機器自体が発するノイズ。  これまで、市販のノイズフィルター、雑誌にあった柴崎 功氏設計のシャント型回路などで対策してきた。ヘッドフォンケーブルでアモルメットコアの効果が予想外にあったので、電源タップにも導入することにした。コモンモードノイズに効くという。   ヘッドフォンケーブルの自作記事 ■材料 ・コンセント:パナソニック製 接地15A露出ダブルコンセント WK1512K 1個 ・プラグ:フルテック製 FI-11M(Cu) 1個 ・ケーブル:塩田電線製 VCTF2.0sq3芯電源ケーブル PC-23 0.3m 2本   切り売り電源ケーブル中、ぴか一の柔軟性だ。塩田電線は既に販売終了だが、オヤイデ電気に「軟質OFC電源ケーブルPC-23」があり、多分同一品と思う。 ・アモルメットコア:中村製作所製 NS-145 2個 ・外装FLチューブ:手持ちのもの 若干 ・御影石台座:100×150×30 2個(以前に石材のネット販売で購入していた) 以上で、計9千円ほど。 ■コンセント側の工作  コンセントはオーディオ用でなく、工事等での仮設用で、肉厚の硬質プラスチック製。内部に空洞がほとんど無く、コンパクトでガチガチ。実用本位で頑丈だ。600円ほどのうれしい価格。本来は、Fケーブルの単線をばね金具で固定接続するようだ。銅の電極は無メッキ。      プラグ受けの接点を磨いて清掃しておく。私は、綿棒につけたコンパウンド、オヤイデ電気で買った磨き布「ポリマール」を厚紙で裏打ちしたもの、無水エタノールなどを使っている。仕上げの接点復活剤はリーズナブルなものが見つからない。とりあえず、接点酸化防止を期待し、安いサンハヤトの「接点復活王」を少量塗っている。  ケーブルの接続を確実にするため、銅金具にPC-23ケーブルの芯線を直接はんだ付けする。その前に、今回の作り直しの目玉、アモルメットコアをケーブルに挿入した。  反対側にも細い平行ケーブルをはんだ付けし、2極コネクター(プラグ受け)を付けた。これはAC電源用ノイズフィルターを接続するためだ。  完成後、柴崎氏設計のノイズフィルターを接続して試聴したが、アモルメットとの重複は、過ぎたるは及ばざるが如しと感じた。結果としてコネクターは使っておらず、無用な工作だった。  コンセント内での鳴きを防止するため、銅金具の周囲にエポキシ接着剤を充填する。    コンセント本体を閉じて、御影石台座を二段重ねして接着したものに、強力両面テープで固定して完成だ。   ■プラグ側の工作  プラグ側は、以前に作った時のままで改造の工作は無いが、1~2年おきの接点清掃のため、分解した。  ケーブルは、壁コンセントまで近いので0.3mと短いが、塩田電線のPC-23を使用している。2sqの3芯だが、アース線は使わず、2芯を接続する。この電線の特徴は、柔軟性だ。とても柔らかく、曲がりやすい。金井氏の、一部に柔らかいケーブルを使って振動の伝播を遮断するというアイディアに沿い、このケーブルを採用した。  プラグはフルテック製で最廉価の銅端子メッキ無し(銅メッキ?)のものだ。金、ロジウムなどのメッキも良いのだろうが、銅の素材そのままというのも悪くないのかも。磨いて光らせるのも楽しいものだ。1~2年おきに磨けば、ひどく酸化するようなことはない。  磨き、清掃は、上記のコンパウンド、「ポリマール」、無水エタノールを使う。  問題は、ケーブル芯線とプラグとの接続だ。フルテックは、たいていのプラグと同様のねじ留めの固定で、確実な接続とはいえない。はんだ付けは、周囲のプラスチックが溶けそうで、できそうにない。もっと高価なコネクターも同様であり、ねじ留め構造はほとんど欠陥と思うが、個人にはどうしようもない。  そうなると、芯線をどう末端処理してねじ固定するかだが、方法はいくつか考えられる。 ①芯線そのまま。  シースを剥き、撚った裸線をそのままねじ固定する。導体同士が直接接触するのは良さそうだが、撚り線の表面が酸化するので、半年くらいで裸線部分を切り捨て、やり直す必要がある。また、3.5sq、5.0sqなどの太い芯線は入らない。ねじがバカになってしまい、強い締め付けが難しい。 ②芯線をはんだメッキしてまとめる。  そのままメッキすると太くなるが、余分な線を根元にまとめるなどして細くできる。ねじの締め付けはしやすくなる。はんだを介した接触になるのが弱点。また、撚り線をはんだメッキしたものなので、磨いて表面の酸化防止をすることができない。 ③芯線に圧着端子を付ける。  先が細い棒状になった圧着端子があるので、これを使う。きちんと圧着すれば導体の酸化は心配無いらしいが、不安ならさらにはんだを流し込む。芯線の酸化は解決する。棒状の端子を磨くこともできる。  圧着端子やはんだなど、複数の金属が介在するのが懸念事項だ。圧着端子の中身は銅だが、電設用であり吟味されたものでない。 ④芯線に銅単線を付ける。  下の写真のように、径2mm程度の銅単線を芯線にきつく巻きつけてはんだ付けし、そのまま銅単線の端をねじ固定に使う。太い芯線もうまくまとまる。銅単線なので、ねじの締め付けはし易い。磨き易いのも利点で、簡単に酸化膜を落とせる。③圧着端子と同様に複数の金属が介在する。  一長一短である。雑誌やネット上の電源ケーブルの自作記事を丹念に読むが、この末端処理をどうしているのか、ほとんど記されていない。①の方法なのだろうか。市販品はどうしているのだろうか。  私は、①、②、③と試したが、どれも納得がいかなかった。ダメにしたねじもずいぶんある。  そうした中で、金井氏の「かないまる」サイトに④の方法が記してあるのに出会った。末端処理の中では比較的スマートで優位性を持つと考え、この何年かは④を採用している。  銅単線は、気休めだが、オヤイデのFケーブルから取った102SSC導体の2mm単線を使っている。  今回、この銅単線もよく磨いて清掃する。     ■できあがった電源タップ  完成した電源タップは、三つのコンセプトに関してできる範囲の対策を徹底した。特に振動対策の結果、質実剛健、堅固そのものの外見になった。比べればたいていのオーディオ用電源タップがヤワに見える。なおかつ低コスト。その意味では「究極」といえるのでは。  が、果たして音質にどう影響しているか。良い音になっているか。他と比較しているわけでなく、何とも言えない。今回の改造で追加したアモルメットコアの効果も、正直わからない。  物理的振動やコモンモードノイズだけでなく、音に影響する要素はいくつもある。オーディオはそう簡単ではないだろう。  まあ、音に変な癖は出ていないと思うので、まずはこれで良しとしましょう。   ■電源ケーブルの自作  アンプなどの機器に使う電源ケーブルの自作についても、簡単に記す。  電源プラグ、インレットプラグをケーブルに付けるだけの工作だが、導体の末端処理は、上記「プラグ側の工作」の④銅単線はんだ付け方式を、プラグ側、インレットプラグ側両方で採用している。具体的な工作方法は上記と同様なので、省略させていただく。  現在使っている電源ケーブルの材料は、次のとおり。実質本位のものだ。アモルメットコアは使っていない。 ・プラグ      フルテック製 FI-11M(Cu) ・インレットプラグ フルテック製 FI-11(Cu) ・ケーブル     オヤイデ製 TSUNAMI NIGO V2 0.6~0.8m(必要十分な短さ)  オヤイデのケーブル(商品名には抵抗がある)は、5.5sqと極太なので、出来上がりは相当に硬い。振動の伝播という点では、問題ありかもしれない。使い勝手としても、突っ張って曲げにくく、余りよろしくない。  音質については、云々する能力が無いが、たぶん力強くハードな方向なのだろう。