NASとスイッチングハブの交代
 - DELA N100とNETGEAR GS105 2019年1月

 わが家のPCオーディオ機器の新旧交代の話題で、本来の電気工作の話ではないが御容赦願いたい。 ■NASの交代  昨年、PCオーディオに時々不具合が生じるようになった。具体的には、前触れ無しにWindows PC上のコントローラー Upplayが"No Media Renderers found"というエラーメッセージを出し、楽曲データベースと接続できない状態になってしまう現象だ。スマホのコントローラー BubbleUPnP からも認識できない。NASのリセット、LANケーブルの点検など、あちこちいじるうちに復旧するものの、1、2か月するとまたおかしくなる。  原因の解明ができないままに、機器の中で最古参のNAS(QNAP TS-119)がそろそろ交代時期なのか、と考えるようになった。2011年11月に導入し、既に8年経過している。中のハードディスクは2年前に交換しているが。  この台湾QNAP社のTS-119は、購入当時はまだオーディオ用NASという範疇が無かったが、ネットワークオーディオに向くという評判だった。  後継機は、バッファローの兄弟会社、メルコシンクレッツのオーディオ用NASの新製品DELA N100にした。オーディオ向け、ファンレスで静音、リニア電源化可能な外部電源、といった当方の条件にちょうど合う。希望より少々値が張るが。  他の候補としては、I・O DATAの「Soundgenic」シリーズがあった。条件を満たして、ずっと低価格だ。良いと思ったが、内部ハードディスク(あるいはSSD)の交換が、システムソフトウェアが載せてあるために困難らしい。ハードディスクの寿命は5年程度で、交換は必須だ。それでは困るので、候補から消えた。    ●新たなNAS DELA N100     外部電源は、12V/4AのACアダプター(スイッチング電源)が付属してきた。機器側プラグはφ2.1でセンター+。  昨年、PCオーディオ用5V・12Vマルチ電源2号機を自作し、QNAP TS-119には12V/2A出力を使用してきた。出力電流2Aでは不足が少々不安なので、新たに12V/3.5Aの電源を自作することにした。製作記事はこちら ■スイッチンハブの交代  新NASに入れ替えた直後には難なく音が出たのだが、翌日から "No Media Renderers Found" となり、その後はあれこれやっても接続できない。  一度音が出たということは、NASではなくLAN回線のどこかに問題あるということだ。無線LANの電波強度、LANケーブル、無線LAN子機やPCのLANポート、スイッチングハブのいずれかだ。改めて一つひとつ確認し、ようやくスイッチングハブが怪しいと思い至った。  LAN回線上の単純な機器であるスイッチングハブが故障するなど考えもしなかったが、ネット上の情報では、家庭用の廉価スイッチングハブの耐久性は数年程度らしい。あるいは、電源は自作だが、出力電圧が少々高い5.7Vほどだったので、それが寿命を縮めたかもしれない。スイッチングハブの経年劣化は、完全に途絶える「故障」でなく、時々不通や速度低下が発生するといった「不調」が特徴らしい。困ったものだが、まさに当てはまる。  これまで使ってきたスイッチングハブは、2011年に導入したPLANEXのFX-08Mini、FX-05Miniだ。このPLANEXのMiniシリーズも、廉価ながらPCオーディオ界では高評価だった。  PLANEXのMiniシリーズは既に販売終了しているので、後継機を探した。金属筐体、低ノイズ、外部電源(DC5Vまたは12V)が条件だ。条件に当てはまる機種は少なく、米国NETGEAR社のGS105-500JPSくらいなので、これに決めた。  FX-05Miniと同じ5ポートで、筐体は一回り大きく、外部電源はDC12Vだ。性能も向上して1000Mbps対応になっている。値段は3千円ほどとお手頃。  なお、NETGEAR社はGS305-100JPSを出していて、グレー塗装の同じ金属筐体、同じ機能でDC5V外部電源だ。さらに安い2千円弱なので敬遠したが、こちらでも良かったかもしれない。    ●新たなスイッチングハブ NETGEAR GS105-500JPS     LAN回線で、PCオーディオ系(NASやプレイヤー)とその他(無線LAN子機やWindowsパソコン)とを分離すべきとの論があり、これまでスイッチングハブ2台をカスケード接続して分離していた。無線LAN子機背面のLANポートを使ってWindowsパソコンに接続すれば、スイッチングハブ1台でも分離を実現できるので、今後は1台で行くことにした。  付属の外部電源は、12V/0.5AのACアダプター(スイッチング電源)。機器側プラグは、φ2.1、センター+。  これまでのPLANEXの2台には、PCオーディオ用5V・12Vマルチ電源2号機から5V/2A出力を使用してきた。上述のとおり、旧NASに使っていた12V/2A出力がちょうど空くので、これを流用することにした。  スイッチングハブを交代したら、LAN回線の不調はすっかり解消し、何事も無かったようにUpplayが接続し、安定して音楽を聴くことができるようになった。BubbleUPnPも。やれやれ。 ■リニア電源とACアダプターとの比較試聴  N100の電源を、新たな自作12V/3.5Aリニア電源(トランスを使った定電圧安定化電源)と、付属の12V/4A ACアダプターを使った場合とで、音質を比較してみた。何回か、日を置いて繰り返し聴いた。プレイヤーソフト lightMPD/upnpgw、USB-DAC/ヘッドフォンアンプ OPPO HA-1、ヘッドフォン ULTRASONE edition9 という体制だ。  一聴しての差は小さい。ACアダプターで特に不満なく聴くことができ、悪くない印象だ。しかし、少し長く聴いていると何だか違う。やはりリニア電源の方が良い。  普段聴くのが主にクラッシック音楽なので試聴もそれで行ったが、リニア電源の方が、演奏・音色のニュアンスが感じられ、音につや、こく、躍動感がある。深みや滋味があるのだ。聴いていて楽しく、心地よい。電源のノイズが減って、情報量が多く感じるということだろうか。ただ明確な差ではなく、何となく違うということなのだが。  次に、新スイッチンハブの電源についても、同様に自作12V/2Aリニア電源と、付属12V/0.5A ACアダプターとを比較してみた。  結果は、リニア電源が優った。こちらは何となくの違いではなく、より明確な差だ。ACアダプターでは、fレンジ、dレンジとも狭い、こもった音になる。予想外の違いの大きさで驚いた。ACアダプターのままではこれがボトルネックになって、システムの本来の力を発揮できないことになる。  リニア電源にする効果は、NAS以上にスイッチングハブにおいて大きかった。スイッチングハブは単純機能のほんの端役と考えていたので、これは意外だった。このスイッチングハブはNASに比べてはるかに廉価なので、ノイズ対策等にコストをかけられないのか。あるいは、LAN回線の中で、NASよりスイッチングハブの方がプレイヤー側にあるので、強い影響力を持ってしまうのか。  そもそもの話だが、lightMPD/upnpgwは、数分間分の音楽ファイルをメモリーに一時的に保存して再生している。NASから受け取った音楽ファイルを、リアルタイムで再生しているものではない。そうすることで、物理的にはLANに接続しているが、ソフト的に切り離している。  このため、NASやスイッチングハブの交換、ましてやその電源の違いによる影響は、ほとんど無いのではないか、と私は予想していた。音質への影響は意外にあった。理論的にどういうことなのか、私の知識ではよくわからず、この点今も釈然としない。 ■N100 USB-DAC直結再生との比較試聴  N100は「USB-DAC再生機能」を持っていて、OPPO HA-1に直結して聴くことができる。プレイヤー機器抜きのシンプルなシステムになる。これといつも使っているプレイヤー lightMPD/upnpgw を使った場合とを比較した。  USB-DAC直結再生の音は、これはこれで悪くない。やや高域寄りで低域が減じる、音の分離が僅かに減じる、かな? しかし、lightMPD/upnpgw で聴くと、やはりこちらが滋味まで感じさせ、上を行く。  ここで、電源の比較に戻ってしまうが、N100の電源をリニア電源から付属ACアダプターに替える実験もしてみた。USB-DAC直結で lightMPD/upnpgw が仲介しないので、電源の影響があれば直接的に現れるはずだ。  結果としては、リニア電源のUSB-DAC直結再生との差はほとんど無い。同様に悪くない音、しかし滋味とまではいかない。N100は、上手に対策を行ってACアダプターの弊害を取り除いているということだろうか。  N100本体で選曲をすることになる操作性の問題もあり、lightMPD/upnpgw を使っていこうと思う。 ■新旧NASの比較試聴  DELA N100とQNAP TS-119を比較した。(リニア電源の機器側プラグを、新スイッチングハブ用に変更してしまったため、比較はN100付属のACアダプターで行った。)  結果は、僅かながらN100が優った。ただ、大差ではなく、細かく言えばN100の方が低域に底力があり、低音楽器で迫力がある、という程度だった。  ACアダプターでは本当の実力と言えない。両方ともリニア電源を使った場合にどうかである。以前のリニア電源のTS-119の音についてはもはや記憶の中のものだが、N100の方が上回ると思う。 ■まとめ  PCオーディオの原因不明の不調から、NASとスイッチングハブを交代させることになった。不調が解消され、音質向上にもなったのは良かった。  新旧のNASは、発売年が10年違い、汎用とオーディオ用の違いがある。価格差も大きい。新NAS DELA N100が優っていて当然なのだが、明白な差ではなく、何となく違う、という微妙な差だ。それが金額に見合うのか、というのがまともな判断だろうけれど、見境が無くなるのがマニアのめでたさだ。  スイッチングハブがLAN回線不調の原因、というのは発見だった。また、リニア電源にすることによる音質の向上ぶりに二度驚いた。NETGEAR GS105-500JPSが使いものになるとわかった(ただし、リニア電源に替えることが前提)。スイッチングハブも、オーディオ用ということで桁が二けた違う高額品が出てきているようだが、私はこれで十分。安いものだし、予備にもう1台買っておこうと思う。  PCオーディオの機器について、付属ACアダプターでは駄目で良質の電源に交換すべき、という考えが広まっている。私が12V・5Vのリニア電源を自作してきたのもそのためだ。市販品を購入したり、モバイルバッテリーを流用する人も増えているようだ。  デジタル機器内部のICの動作電圧は、3.3、2.5、1.2Vなどの低電圧が多くなっているという。NAS、スイッチングハブも、恐らく電源の12Vそのままでなく、内部にDC-DCコンバータがあって必要な電圧に降圧していることと思う。それを考えると、外部電源を良質のものにすることにどれだけの意味があるか、という気がしてくる。それでもスイッチングハブの場合のように違いが感じられるわけで、何ともわかりにくい。  まあ、当方はただの素人。聴力の老化もあるので、試聴結果も確定的な話ではない。眉に唾をつけて、騙されぬようお願いいたします。