ディスプレイ EIZO CX240の小工作 - 冷却ファンの音対策 2013年11月

■EIZO CX240の導入  パソコンのディスプレイをEIZOの24.1型高性能ディスプレイCX240にかえた。  別稿「EIZO CX240 ディスプレイを導入した」に、導入の経緯を記している。  ディスプレイとして期待どおりの性能で満足だが、ただ一つ気になったのは冷却ファンの音だ。気にしない人もいると思うが、わが家はパソコンを静音化して机の下に置いているので、机上で目の前にあるディスプレイの発する音は気になってしまう。部屋に入ってきたカミさんが、「クーラー、点けているの?」と言ったくらいだ。まあ、クーラーの音ほどではないのだが。  ネット上にも同様の感想が少なからずあり、ファン交換、低速化の記事も出ている。EIZOのカラーマネジメントセミナー受講の際、社員の方に尋ねたが、有効な答が無かった。自己責任で対策することにした。 ■冷却ファンの音対策  ディスプレイ購入の週に、さっそく静音化作業を実施した。 ①新たなファンを購入  秋葉原の静音パソコンのショップ OLIOSPEC で購入。静かなファンが欲しかったが、一般品だ。15mm厚の8cmファンというと特殊で、これ以外に無かった。  静音化するには、電源電圧を下げて回転数を落とす必要がある。  新ファン:中国Xinruilian社製 RSL8015S       DC12V 0.09A 8cm角 15mm厚       2000rpm、23.02CFM、21.6dBA ②作業開始  まず、ディスプレイの裏板を外す。隠れたフックをミニマイナスドライバで探って外した。実は、作業の中でもここが一番の難所だったが、フックや裏板を割らずに完了。 ③既存ファンを回して風量・風向を確認したうえで、取り外す  旧ファン:山洋電気製 San Ace 80 9PH0812M703       DC12V 0.06A 8cm角 15mm厚       EIZOの特注品なのか、ネット上にスペックデータは無い。  液晶・バックライトの裏面を、金属薄板で覆っており、シールド、放熱、埃よけにしている。下部が1cmほどスリットになっており、外側にファンがついて、排気している。ただ、スリットからどんどん熱を吸い出す効率的な排気にはなっていない感じ。金属薄板まわりの空気をファンで流して撹拌する設計のようだ。  EIZOも、全ての製品に冷却ファンを付けているわけではない。この製品は、放熱に念を入れたということではないか。  新ファンの取り付けは、4か所のねじのうち2か所だけで留める形だ。元々この形だが片側が浮いたままなので、クッション材の足を挟んだ。気持ちばかりの振動対策だ。 ④最適な電源電圧を探る  新ファンの静音化のため、電源電圧を下げて回転数を落とすわけだが、風量も減ってしまう。  音と風量の見当をつけるため、ずいぶん昔に工作した電圧可変安定化電源を引っぱり出した。これは、秋葉原の秋月電子通商の基板を使った直流電源で、電圧を3.2V~25V程度の範囲で変えられる代物。出力電圧メータも付けてあってこういう時こそ便利。これを新ファンに仮接続し、電圧を変化させて回転状況を確認する。テスターで電流も測定。  ファン剥き出しの状態では、定格の12Vだとかなりうるさい。6Vで音が微かになるが風量も弱くなる。4.8Vより電圧を下げると起動回転しなくなる。7Vくらいが適当と見当がついた。  電流は、12V 0.09Aの定格に対し、5Vで0.041A、6Vで0.050A、7Vで0.058A、8Vで0.068A。 ⑤電源電圧を7Vに下げる回路を追加する  ちゃんとやるには電圧可変型三端子レギュレータなどを使うのが良いだろうが、横着して、抵抗を直列に入れる簡易方式にした。  手持ちの1W級抵抗を68Ωから順に試し、91Ωで④で試した7Vの音くらいの静かさになるとわかった。  発熱を考えると、1W級抵抗1本でも大丈夫とは思うが、2、3本の並列が良い。270Ω2本、300Ω1本の3本並列で、93Ωになる。さらに念のため、小型放熱器に熱伝導性両面テープで貼り付けた。  ファンが約120Ωなので、ファンにかかる分圧は約6.8V。良い塩梅だ。 ⑥結果  机にセットし、音は注意すれば微かに聴こえる程度で、気にならないレベルになった。  風量が減るので放熱の低下が懸念されるところだが、裏板やその開口部、液晶パネル表面などを触っても熱をもっていない。ファンからは温かい風が弱いながら出ていて、空気は流れている。これで行けそうである。  ファンの騒音問題、これにて解決! ⑦ご参考までに  新ファンに交換したが、旧ファンについても可変電源で、風量、音量を確認した。  定格の12Vではうるさい。8Vで結構静かになり、7Vで音は微かになる。可変電圧最小の3.2Vでもちゃんと起動する。  少しの電圧低下で静音化でき、交換した新ファンより回転が滑らかな印象である。国産の優秀なファンだと思う。慌てて中国製ファンを買う必要は無かった。保管しておき、新ファンに不具合が出たら使いたい。 ■4年半経って、元のファンに戻した(2018年5月)  この記事を書いてから4年半、パソコンは毎日のように使っている。ファンの音は気にならない静かさを保ってきた。風量を減らしたが、ディスプレイにも特に悪い影響は無かったと思う。  表立った問題は何も無いのだが、ディスプレイの寿命を10年と考えれば、ファンを交換して良い時期かもしれない。保存している元のファンに現役復帰してもらうことにした。参考に書いたように、優秀そうな国産ファンであることだし。  前回同様、直列抵抗を入れて回転数を落とす簡易方式で静音化する。ファンの定格は12V 0.06Aなので、抵抗成分180~200Ω程度と推測する。150Ωの抵抗を直列すれば、ファンへの分圧は6.5~7V程度になるはずだ。  ファンを交換し、5W 150Ωのセメント抵抗を前回使った放熱器に取り付けた。  ディスプレイ使用状態で、静かに回転していて全く音は聞こえない。穏やかだが風はちゃんと流れていて、これまでのXinruilian製ファン+直列93Ωの風量と同程度だ。  これで安心。ディスプレイが寿命を迎えるまで行けるだろう。