ドイツ ヴェーザー川自転車道 - 準備編 2019年9~10月

■1 きっかけ  5年ほど前だが、小柳津厚尚氏の「ドイツ自転車旅行を楽しむ」(2006年 連合出版)を読んだ。定年になった小柳津氏が、ドイツのヴェーザー川自転車道を単独で10日間ツーリングした紀行記である。準備や自転車の運搬も含めて、経験が具体的に記されている。海外での自転車など考えもしなかったが、やればできるかもしれない、と少し関心を持った。  海外旅行にはこれまでカミさんと一緒だったが、今年は一人で行くことになり、この小柳出氏の本を思い出した。一人旅なら実行可能だ。  調べてみると、ドイツには自転車道がいくつも整備されているが、ヴェーザー川自転車道はその端緒で、最もよく整備され、一番人気らしい。ドイツ中央部の山間地から北部の平野で起伏が少ない。メルヘン街道に重なって見どころのある町が多く連なる。そうした点でも良さそうだ。  小柳津氏の本の影響か、日本からも行く人がいて、いくつかネット上に紀行記事が載っている。   POTALIEN 「AnPonmanのドイツメルヘン街道ちゃりんこ旅22日間」(2008)   BikingBlog 「ヴェーザー川自転車道の旅」(2013)   どるふぃんきっくの徒然草 「ドイツ・メルヘン街道自転車の旅」(2015)  せっかくのドイツ旅行なので、自転車ツーリングだけではなく、観光もあちこちしたい。18泊20日の旅とし、前半でハン・ミュンデンからブレーメンまで6日間のヴェーザー川自転車道ツーリング、後半はJ.S.バッハの足跡を巡る観光という欲張った計画にした。  この記事は、その全体ではなく前半のヴェーザー川自転車道についてである。  ヴェーザー川自転車道を走った紀行文は別記事に記す。   ドイツ ヴェーザー川自転車道 - 紀行編  ドイツでの自転車旅行について、またその準備について、ネット上にかなり情報があって大いに参考になる。私が追加することはほとんど無いが、新規・補遺の情報を記し、今後実施する方のご参考になればと思う。  ドイツでの自転車ツーリングをどう準備したか、▼----- 印の文で実際の旅行でどうだったかを記す。 ■2 自転車は携行か、現地レンタルか  当初、自転車については現地でレンタルの方針でいた。飛行機での往復運搬が無い、これが何しろ大きなメリットだ。  しかし、フランクフルト市内、カッセル市内などで貸自転車店がないか、ネットで「Fahrradverleih」(貸自転車)等のキーワードで検索したが、市街を走るシェア自転車の類はあるが、長距離ツーリングに適した自転車のレンタルはほとんど無い。次のフランクフルトの2店くらいだった。   自転車店「Fixiestube」   自転車ツアー催行会社「Frankfurt Bike Tour」  2店にメール(英語)で尋ねると、2週間なら一日10ユーロ弱。さほど高くない。しかし、借りられるのは2店とも、マウンテンバイク寄りのクロスバイクというか、ママチャリに変速機をつけたような自転車だ。太いタイヤでフェンダーや荷台が付き、フレームはいかにも重そう。ハンドルが高く、立ったライディング・ポジションだ。車輪取り外しのクイックレバーも無く、パンクしたらどうするのだろうか。無論、ペダルもビンディングではない。  重くてスピードが出ないだろうし、30kmも走ったら疲れてしまいそうだ。400kmの行程を走れなくはないだろうが、せっかくの海外自転車ツーリングが難行苦行になってしまう。電動自転車もレンタルされているが、それでは自転車ツーリングの意味が無くなる。  走行後に、フランクフルトまで戻って返却しなくてはならないのも難点だ。  方針を転換し、日本から自転車を携行することにした。27年乗ってきたクロスバイク(アラヤ MF700CXC-A)を携行する予定でいたが、出発1か月前に、車輪リムが減耗してへたり、フレームも歪んでいることが判明した。とうとう寿命が来たということだ。  行きつけの自転車店「サイクルショップ・フルヤ」と相談し、アラヤ/RaleighのRFC 550mmを急ぎ購入した。市街地走行や軽ツーリングを想定したロードバイク寄りのクロスバイクで、フレームはクロモリ、低グレードの部品を使って価格を抑えた入門者向けの車種だ。適応身長175~190cm(これは市販完成車としては最大級だ)が購入の決め手になった。  サドルの高さを合わせるとともに、ステムを裏返しててハンドルの高さを少し上げた。適応身長のほぼ中央値が私なので、これで大体のポジション出しができた。  次に、フラットバーなのでエンドバーを追加した。フラットバーは、手首を内側に少し捻って握ることになる。ポジションが限定されるので、長距離を走ると疲れるのだ。  ネット上の情報で、グリップを70mmに短くしてエンドバーを内側に付けている記事があった。  Cycling Wonder 「バーエンドバーはグリップ内側に取り付けよう」  これをヒントに試行錯誤した結果、エンドバーを外側・内側の中間、グリップの中ほどに付けることで落ち着いた。グリップはホームセンターで入手した片面が波状のゴムシートを寸法に切り、両面テープで貼り付けている。エンドバー根元近くを親指と人差し指の輪で握るのが主になり、ロードバイクと同様の握り方になる。ブレーキレバーに人差し指、中指の2本がしっかり届く。親指側シフトレバーには届かず、握りをいったん離すことになり、これが唯一の難点だ。  エンドバーは芯々430mmでほぼ肩幅。エンドバーの外側グリップは50mmと短いが、下りの急坂など強いブレーキが長く必要な時以外は握ることが無いのでこれで十分だ。この方法は多様なポジションがとれて効果的。お勧めできる。  あとは、旧車から取った部品だが、サドルはサンマルコのロールス、ペダルはシマノのSPD(PD-A520)に変更した。タイヤもパナレーサーGravel King 700×26Cに変更。これで、1日100kmくらいの走行も問題なさそうだ。  慣らし走行後、「サイクルショップ・フルヤ」の店主が、ディレーラー、車輪、ブレーキなどをもう一度念入りに調整してくれた。  ピカピカの新品なので、盗難やいたずらに気を遣うことになるのが唯一難点である。 ▼-----  現地では、ドイツ人は実際、上記のレンタルのような普段づかいの実用自転車でそのままツーリングもしているようだ。MTBやロードバイクは少数だった。  大多数は重そうなスチールフレームで、タイヤも我が国のママチャリほどの太目。無論、フェンダー、キャリア、スタンドが付く。リアキャリアに、片側か両側か防水性のパニア・バッグを付けている。  また、ドイツ人の足の長さもあるがサドルをぎりぎり高く設定している。それ以上にハンドルが相当高めで、サドルと水平かむしろ高いくらいにセットしている。ほとんどの人が前傾姿勢でなく、背筋を立てたポジションで乗っている。大柄な人だと目の高さが2mほどになり、びっくりする高さだ。  ドイツの自転車道はアスファルト舗装とは限らず、ブロック舗装、石畳、ダートの箇所が結構あって、路面は必ずしも良好ではない。市街地で設置率が高い自転車レーンも、石畳箇所があり、小段差が多い。気候も短時間の降雨が頻繁だ。なるほど、この地に適した自転車であり乗車ポジションなのだ、と納得した。  写真はブレーメンで駐輪していた自転車の例。手前はMTBにフェンダーとスタンドをつけ、ハンドルを高くした贅沢街乗り車。奥の何台かがドイツの平均的な自転車だ。なぜか色は黒ばかり。  ドイツ鉄道(RB)の自転車スペースで見かけた電動MTB(ドイツのRaleigh)。女性のものだろう。これもハンドルポストを高く改造している。クッション付きのシートポストは、背筋を立てたポジションで尻が痛くなることの予防だろう。  細いクロモリフレームで重量11.5kgの我が自転車は、走るにも持ちあげるにも軽快だが、周りに比べるとたいそう華奢に見えた。こうしたロードバイク的なクロスバイクは、ドイツでは全く見かけなかった。装着した26C(26mm幅)のタイヤは、結果としてこれで走破できたが、32C(32mm幅)くらいのツーリング用タイヤならより安心できたと思う。結局、ドイツで自転車道を走る場合、昔のランドナーのような車種が良いのだろう。  フランクフルトに滞在中、レンタル自転車の問い合わせメールに返信してくれた自転車店「Fixiestube」に行ってみた。朝の開店前だがこんな外観だった。落書きは、この店に限らずドイツではとても多い。 ■3 飛行機輪行は輪行袋で  自転車携行となると、一番の課題は飛行機での輪行だ。  調べてみると、航空会社の規定が何年か前に変わったようで、規定内のサイズ(一辺120cm・三辺計203cm以内)・重量(23kg以内)なら2個の荷物を携行可能だ。すなわち、制限内なら追加運賃無しで自転車1台とスーツケース1個を携行できることになる。  今回使った日本航空は、「分解式自転車を輪行袋(自転車専用収納袋)に入れていただいた状態でお預けいただく事を条件に、受託手荷物として承ります」としている。規定サイズを超えると2万円の超過手荷物料金となる。  日航に電話確認したところ、   ①制限内なら特に事前連絡は不要   ②空港カウンターで一般の受託手荷物として受け付ける   ③到着空港ではスーツケースのターンテーブルに流さず別途手渡しする   ④飛行機貨物室に立て積みか横に寝かせて積むかは当日の貨物量による   ⑤天地方向の注意書きはあった方が良い とのこと。国際便で、飛行機輪行が普通に受け入れられる時代になったようだ。  とはいえ、取り扱いがどこまで丁寧かはわからない。慎重な人は専用ハードケースや段ボール箱に入れている。ただ、三辺計203cmのクリアが困難らしく、段ボールで箱を自作する記事があった。しかし、ハードケースにせよ段ボール箱にせよ、往路は良いが、帰路でも使うためには空港で預かってもらうことが必要で、これがネックになる。  不安は残るが輪行袋、それも薄地で小さくたためるもので良しとした。前後輪ともエンド金具をつける、後ディレーラーは外さないが段ボールの自作保護具で守る、輪行袋に天地方向の注意書きを日本語・英語・ドイツ語でつけるなど、出来る限りの用心はすることとして。  輪行袋に入れてみたら、重量は問題無いが、私の自転車の場合はフレームサイズが特に大きいため、三辺計215cmほどになってしまう。ハンドルをステムとともに外す、フォークを内向きに固定する、サドルを目いっぱい下げる、ペダルを外す、段ボール保護具を切り詰める、とここまでやって、105×73×24cm、三辺計202cmでぎりぎり規定内になった。  ただ、202cmは「好意的」測り方によるもの。輪行袋は三辺が直交していないわけで、直方体の枠で杓子定規に測られるとサイズ超過は必定だ。  なお、貨物室も与圧がかかっていてそのままでも大丈夫らしいが、一応、タイヤの空気圧を1/2程度に下げることにした。 ▼-----  輪行袋の自転車が受託手荷物の規定内かどうか、出発当日、はらはらしながら成田空港の日航カウンターに運んだが、受付女性がメジャーを当ててざっくり測り、足し算をして規定内と言ってくれた。ふるい落とす審査でなく、受け容れる姿勢で助かった。  カウンターの奥にベルトコンベヤーがあるが、寸法的にそこには載らない。男性係員が来て、「自転車ですね」と、手持ちで運んで行ってくれた。  到着のフランクフルト空港でも、スーツケースのターンテーブルに流さず、手持ちで持ってきてくれた。  帰路のフランクフルト空港カウンターも同様の取り扱いだった。ペダルの片方がどうしても外れず、受付では一層はらはらだったが、規定内と認めてくれた。  心配していた飛行機輪行での自転車損傷だが、帰路、後ディレーラーが少々内側に曲がった。エンドは無事だった。往路、帰路とも天地方向の注意書きは外れて無くなっていたが、他には大きな傷等は無かった。  後ディレーラーの曲がりは、帰路の飛行機輪行を疑うが、直前、ライプツィヒ駅で輪行袋に入れて空港まで鉄道輪行だったので、その時の損傷かもしれない。  いずれにしても、自作段ボール保護具では守りきれなかった。飛行機輪行であれ、鉄道輪行であれ、後ディレーラーはやはり外す方が良いかもしれない。 ■4 衣類は30リットル・バックパックの範囲で  輪行袋を肩にかけるとなれば、もう一方の手でスーツケースもというわけにはいかない。  先々のホテルに荷物を送ることも検討したが、ドイツ国内の郵送・宅急便は日本ほど几帳面でないらしく、信頼しきれない。  結局、自転車と全ての荷物を肩にかけるか、背負うかせざるを得ない。  自転車ツーリング時は、背負いを避け自転車固定のバッグで、というのがセオリーだが、そうも言っていられない。  容量30リットルのバックパック、ドイター製トランスアルパイン30を購入した。30リットルは、登山用とすれば日帰り・1泊用の小型ということになる。自転車用としてはこれが最大級だ。これ以上だと背負いきれなくなる。  自転車に固定するバッグは、①シートポストに固定する手持ちの6リットルのリアバッグ、リクセン&カウル製コントアーマグナム。②今回購入した三角フレーム内バッグ、ブラックバーン製アウトポスト・フレーム・バッグ・ラージ、これは約7リットルだが約10リットルに拡張できる。どちらも容量がさほどなく、主たるバッグにはならないが、重いものはなるべくこの二つに入れる。  三つのバッグの計46リットルに合わせ、20日分の荷物を最小限にするよりない。  最もボリュームある荷物は衣類だ。これは、30リットルのバックパックに入れる。  衣類を減らすためには、宿で毎日洗濯することは当然。さらに自転車以外の街歩き着を制限するほかない。化繊のポロシャツ、フリースベスト、レインウェア上下など、自転車・街歩き兼用とした。折りたたみ傘、パジャマもやめ、100gでも減らすようにした。それでも街歩き用としてジャケット1着、シャツ1枚、チノパンツ1本、ウォーキング靴1足を持参した。これと、手元に置くスマホ、カメラ、書類などで、30リットルのバックパックは満杯だ。  バックパックは、ちょうど機内持ち込みサイズなので、機内に手持ちした。  自転車固定の二つのバッグには、衣類以外の重さがある小物、自転車の工具などを詰める。自転車ツーリングの行程中は、水や補給食、レインウェアなどがここに加わる。これら二つのバッグは、自転車フレームに固定して輪行袋に入れ、ひとまとめにする。 ▼-----  結果は、バックパックの30リットル容量が満杯になって推定重量5~6kg。重いには重いが、何とか背負って走れる範囲だった。ヘルメットを納めるネット、サイドや腰ベルトのポケットもあって、このドイター製は融通が効くのも良かった。輪行袋は、自転車と二つのバッグで合計約16kgで、肩にかけて歩くには結構重かった。 ■5 飛行機、宿の手配  航空券は、成田発着だがフランクフルト直行、シートピッチ広めの日航にし、日航サイトで手配した。  宿は、booking.comを通して事前に予約した。宿との必要なメール連絡もこれを通してできる。  ツーリング行程の4泊分の宿だけは、天候や体調のこともあるので、予約はせず、当日あたることにした。ユースホステル(Jugendherberge)、民宿(Pension、B&B等)など、コース上にかなりの数の宿がある。booking.comも使えるが、スマホアプリのBett+Bikeがあって、自転車ツアー向き宿を地図とのリンクで紹介している。町ごとの観光案内所に飛び込んで尋ねてもよい。  10/3のドイツ統一記念日だけは、祝日で民宿も休みの可能性があると考え、三ツ星ホテルを事前予約した。 ▼-----  飛行機については、結果としては、上記のように輪行袋の規定サイズぎりぎりを許容してくれ、日航で正解だった。  宿については、ツーリング行程では、その日の自転車走行を午後3時半を目途に終わらせ、その町で宿を探した。事前にユースホステルの会員登録をしていたので、泊まろうと考えていたが上手くマッチせず、結果として民宿(Pension、Gästhaus)、簡素なホテル(Hotel garni)になった。  ホテル探しに、スマホのBett+Bike、booking.comが役立つ場面もあったが、ヴェーザー川自転車道のルートの多くでは、小さな町村のせいか、スマホの通信がつながらず、使えなかった。幸い、観光案内所がなかなか親切で、英語のやりとりで紹介してくれ、助けられた。直接、飛び込みで行った宿もあった。  家族経営の民宿は祝日に休みかも、という予想は当たっていて、祝日の前日、翌日にも断られる経験をした。  事前予約しておいた日は、今日の宿は定まっているという安心がやはりあった。ホテル探しには時間とエネルギーを割くことになるので、事前予約しておくのが良いのか、天候・体調に合わせて当日探すのか、自転車ツーリングの場合は難しいところだ。 ■6 鉄道の手配、自転車持ち込み  ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)は、運賃設定が日本よりかなり高く、反面、長距離高速列車(ICE,IC)の2等席の早期割引率が極端に大きい。定価の半額以下、時には3割以下だ。ただし、列車特定、キャンセル不可の条件が付く。定価とこうも違うと、早期割引で買わないわけにはいかない。大きい移動について、利用日の約2か月前に、ドイツ鉄道のサイトで自転車持込も含めて早期割引で手配した。  細かい移動は、その都度乗車券を買うことにする。 ▼-----  幸い、予約した列車は、事故・遅延が無い平常運転で、当方の乗り遅れも無く、すべて事前手配どおり済んだ。  ドイツ鉄道には、スマホのアプリ「DB Navigator」があって、英語表示で乗換案内と切符購入が一連ででき、遅延状況もわかる優れものだ。事前手配以外のローカル線利用の時に至極便利だった。  列車への自転車持込について、今回の体験の範囲で整理してみる。持ち込みは、自転車は輪行袋に入れず、走れる状態のまま可能だ。  Uバーン、Sバーン、RB(Regionalbahn 各停)は、乗車券だけで自転車持ち込み可。予約の必要も無い。  Uバーン、Sバーンは、自転車車両、自転車スペースは特に設けてない。どの車両でも自転車と一緒に普通に乗車すれば良い。乗車時間が短いので、私は乗車したドアの近くに立って、自分で自転車を支えるようにした。  RBはローカル線の各停でゆとりがある。自転車マークのついた車両に自転車スペースがあって、乗車券だけで無料持ち込み可。自転車スペースは、座席が折り畳みになっていて、そこに自転車を寄せて、自分のゴムベルト、マジックテープなどで固定する。RBで一度、車内検札があったが自転車持ち込み料金は請求されなかった。  RE(Regional Express 快速)は、自転車車両に自転車スペースがあってRBと同じ様子だが、「一定距離以上」の場合に、乗車券のほか自転車券(Fahrradkarte)が必要らしい。スマホアプリ「DB Navigator」で乗車券を買った時、そんな注意書きが出た。30分程度の乗車で必要なのかわからないでいたら、車内検札で5€の自転車券を発券された。一つの自転車スペースで6台など限りがあるが、満杯のことはまず無いので、自転車券を事前に買って予約せず、このように車内検札で払うやり方で良いと思う。  ドイツ鉄道に関するネット情報で、近距離電車も長距離列車も改札口が無いので、乗車券無しで乗車できてしまう。その代わり車内改札があって、不正乗車は厳しく高額の罰金を払わされる。車内では発券してくれず、車内清算してもらうつもりだったという言い訳は効かない。という話を読んでいた。どうやらそれはUバーン、Sバーンの話であって、REでは自転車券を車内発券する融通があると知った。  IC(Intercity 特急)については、今回自転車持ち込み乗車を体験していないので、不明。  ICE(Intercity Express ドイツの超特急)については、従来、自転車持ち込み不可とされてきた。しかし、持込可能な新型のICE4車両が2017年から運用され、最近は可能な列車便が増えつつあるようだ。私は、自転車持込可能なICE列車便で全行程を組み立てることができた。  先頭または最後尾の車両が自転車マークがついて、自転車スペースが設けられている。自転車券は9€で、予約するとスペースの番号が割り当てられる。自転車券を自転車に貼って、番号のスペースに置く。ICEは長い車両編成なので、列車到着後に自転車車両を探すのでは乗り遅れてしまう。プラットホームに早めに行って、自転車車両の停車位置を図表(ホームに1枚掲示されている)で確認し、列車到着を待つべきだ。  写真はブレーメン-ハンブルク間のICE。左:フックに吊るした私の自転車(ハンドルに自転車券)、右:お隣の自転車は前輪固定(ヘルメット内に自転車券あり)  ICEのオンライン予約は、乗車券と自転車券(Fahrradkarte 9ユーロ)を一度に手続きした方が良いようだ。私は、自転車レンタルから携行に方針変更したので、行程の後半について、予約済みの切符本体に自転車券を日本に居るうちに追加しようとした。しかし、予約システムの不備なのか、追加ができなかった。フランクフルト中央駅の窓口で追加購入したが、係員はいかにも面倒くさそうな様子だった。  私個人の憶測に過ぎないが、ドイツ鉄道はICEへの自転車券無しの持ち込みを黙認しているのではないか。ICEの乗車券車内検札は確率1/2くらいの頻度で、毎回では無かった。乗車券でそうなのだから、自転車券の検札まで手が回らないのではないか。(だからといって、自転車券不購入を勧めるものでは無論ありません。)  自転車スペースは、ICE列車の言わばゆとりスペースなので、列車混雑時、ここに人が来てしまうようだ。指定席券を持たず、自由席も空きが無くて座れない人がかなりいるのだ。結構、自転車以上に人であふれ、床に座り込んでいる人もいた。  また、DBの都合で臨時に車両編成が短縮されて自転車車両が無くなり、(自転車予約を知っていて)待ちかまえていた乗務員にプラットホームで声掛けされ、最後尾1等席車両に案内される、という面白い経験もした。 ■7 地図のこと  小柳津氏の本で紹介している専用地図「Weser-Radweg」(bikeline)を取り寄せた。詳細ルートのほか、経由地の観光など詳しく記されている。巻末に宿の一覧もある。ドイツ語だけで英語併記が無いこと、5万分の1で自転車用地図としては細かすぎること、その割に宿や公衆トイレの位置が地図上に無いこと、かさばって重いことが欠点だ。  プラニングの段階では役立ったが、持って行くか迷った。結局、不要ページを外し、半分近くに減らして持って行った。  ネット上で、ヴェーザー川自転車道の公式サイト https://www.weserradweg-info.de/があり、地図とリンクして同様の情報が載っている。こちらもドイツ語だけだ。ただ、パソコンでは翻訳ソフトが使え、こちらの地図には、宿、公衆トイレの位置も載っている。プラニングには役立った。  スマホ用アプリもあるが、走行中に地図を見るのは難しい。  いずれにしても、自転車で走っている最中には、経由する地名がわかるメモが欲しい。一日ごとの行程メモを自作し、ハンドルに固定した地図ケースに入れる方法にした。原始的だが実用上便利だ。bikelineの地図やスマホは必要に応じて見れば良い。 ▼-----  実際に走ってみると、自転車道の設定そのものや案内標識が少し不親切な場合があり、道に迷うことが何回かあった。  ドイツ入国後、現地の通信業者 Ortel Mobile のプリペイドSIMを入れたが、大きい都市、観光地では通信状況が良いが、自転車道の行程の多くの小さい町村では通信ができなかった。このため、公式サイトもGoogleマップも役立たなかった。  頼りにしたのはbikelineの地図で、よく取り出して利用した。この自転車道では、やはり紙の地図が必要だった。 ■8 プリペイドSIMのこと  現地での情報収集に、スマ―トフォンは必須だ。私のスマホはSIMフリーなので、現地の通信会社のプリペイドSIMに入れ替えれば良い。海外旅行の際には毎度そうしている。  しかし、ドイツでは2017年7月から、テロ対策のためにプリペイドSIM購入時の本人ID、(ドイツ国内の)住所の確認を厳格化しているという。旅行者には不便なことで、ドイツでローミング接続可能なプリペイドSIMを日本で入手しておくのが良いという。「ヨーロッパ周遊用SIM」と称するものが何種類か販売されているので、その中の英国O2の8GB、電話2000分のものを購入し、説明書どおりに事前に開通希望日を登録してアクティベートを申請しておいて、持参した。 ▼-----  ところが、フランクフルト到着後開通してくれない。何度か試みてダメで行き詰った。宿泊ホテルのフロントで、旅行者用のプリペイドSIMを売っている店が無いか尋ねてみたら、近所にあると教えてくれた。少々怪しげな店だが、Ortelという通信会社の5GB、電話も付いて20€のSIMを買った。中国系と思しき若い女性が対応してくれ、超特急でアクティベート、設定をしてくれた。パスポートの提示は要求されたが、住所など聞かれもしなかった。スマホが使えればそれで結構である。(フランクフルト中央駅南口を出、市電の通りを渡ってすぐの店です。) ■9 ドイツの10月は、寒く、変わりやすい天気だ  今回走るのは、9/30~10/5という日程である。ドイツの10月は、日本の11月の感じで気温が日に日に下がっていくらしい。旅行ガイドブックの言うベストシーズンは9月までだ。ブレーメンの気象統計を見ると、10月上旬の最低気温は約7度、最高気温は約15度。半分以上は曇りの日、雨も3割くらいの確率でありそうだ。風も4,5m/sくらいらしい。かなり寒い日がありそうだが、重ね着で調節できるだろう、と想定した。  自転車用に持って行ったウェアは次のようなものだ。  街歩きとの兼用を考えた結果、サイクルウェアより、モンベルやユニクロのスポーツ向きが多い。 上 アンダーシャツ 3:化繊袖なし   シャツ 3:化繊長袖ポロ   ベスト 1:薄手フリース   ウィンドブレーカー 1:裏地付き   レインウェア 1:ゴアテックス   ウィンドブレーカー 1:自転車用ナイロン 下 インナーパンツ 2:自転車用   タイツ 2:ジョギング用   ショートパンツ 2:化繊ジャージ   ロングパンツ 1:化繊ジャージ   レインパンツ 1:ゴアテックス   靴下 3:街歩き用綿混紡 ▼-----  実際のドイツの天気は、想像以上に不安定で気まぐれだった。  最低気温7度、最高気温15度は、平均するとそんなものだが、寒い日は最低気温1度、暖かな日は最高気温25度で、一日一日の寒暖の差が大きい。  一日の中でも変化が大きい。曇りが基本だが、雲が頭上低く速く流れて、小雨が降ってくる。10~30分ほどで雨が止み、陽射しが差してくる。しばらくしてまた曇りになって・・・・・、その繰り返しだ。大きい木の下、屋根のあるバス停などで待ち、しのいだが、一日雨が多い予想だった5日目の行程は、自転車をあきらめて電車で行き、休養日にした。  風は、無風・微風の日があるが、強い向かい風・横風の日もあった。  晴れて、景色の良い川沿いの自転車道を走る、そんな快適な時もあったが、見渡す限り畑で遮るものの無い一本道で、向かい風や雨に苦しむことも結構あった。  皮肉なことに、前半の自転車道の日程を終えて、後半の観光日程になったらだんだんと雨が減り、ライプツィヒでの最終二日は良く晴れて25度にまでなった。山の天気が変わりやすいと言われるが、ドイツの天気はそれに似ている。  ウェアは、持って行ったものの組み合わせで間に合った。早朝の出発時には少々寒かったが、我慢の範囲で、現地で買い足さずに済んだ。