コンパクト・デジタルカメラのリコーGRを買った
 ― カメラあれこれ その2 2015年6月

 散歩や旅行、自転車ツーリングに持っていくカメラが欲しくなった。  現有のフォーサーズ一眼レフ、オリンパスE-620は良いカメラと思っているが、持って歩くには大きく重い。キャノンのミラーレス初代EOS-MはAPS-Cなので、35mm相当の単焦点レンズなら比較的小さいが、それでも持ち歩くにはちょっと億劫になる大きさ重さだ。その点、10年経ったコンパクト、パナソニックLumix DMC-FX8は良いのだが、どうも撮っていて頼りない。 ■カメラ市場を眺めると  私の希望は単純なことで、ポケットに入る小ささ、操作が簡単、そこそこ良く撮れるカメラが望みだ。しかし、これに当てはまるものが案外無い。  探してみて、最近のカメラ市場の様子がだんだんわかってきた。現在売られているものは、いくつかの要素で分類できそうだ。  ①価格(高←→安)1万円前後から10万円、20万円と幅が大きい。  ②多能性(高←→低)これ1台で何でも撮れる高倍率ズーム、マクロ・・・。  ③画質(高←→低)大きい撮像センサー、優秀なレンズが決め手。  ④コンパクト性(大←→小)適度に大きい方が撮りやすいが、携帯性もほしい。  ⑤速写性・操作性(高←→低)やはり取り出して直ぐ撮れるカメラが良い。  メーカーは、まずは①価格が優先だろうけれど、その他の要素については、②>③>④>⑤ の優先順位で製品開発し、市場に送っているように感じる。安い価格帯のものであっても、妙に②の多能性を競っている印象だ。  その結果、市場は大まかに見ると、  A 安くてコンパクトながら多能性志向の低価格帯  B 良好画質で多能性を持つ中価格帯  C 高画質志向かつ個性的機能を持つ高価格帯 の三分野に分かれている感じだ。  A分野は、④のコンパクト性を達していて実売価格は1万円台で安い。価格からすればビギナー向けなのだろうが、10倍以上のズームレンズなど、②多能性に重きを置き過ぎの感じだ。最小サイズの撮像センサーを載せているが、その割に2000万画素など高画素数だ。これも頑張り過ぎで、③の画質はというとセンサーサイズなりのようだ。  起動時の24・25mmの広角は遠近感強すぎだし、250mmなどの望遠も使われるのだろうか。撮りたい構図のイメージを事前に持っていないビギナーにとって、高倍率のズームレンズは迷うばかりだろう。電源オンから撮れる状態になるまでの動作は遅く、操作がまだるっこしい。  安くてコンパクトでありつつ、可能性としては1台で何でも撮れる。それは偉いが、できること、できないことをよく承知してはじめて使いこなせるカメラだ。見かけはヤワでも実はなかなかの難物と思う。  シャッター押すだけの簡単カメラを求めるわがカミさんらの層(写真術入門を望まず、説明書も読まない方々です)には適さない。一方、これを使いこなすような上級者にとっては、あちこち物足りないだろう。結局、誰向けのカメラなのだろうか。  ビギナーが扱いやすい40mm相当程度の単焦点レンズ(ズームなら、広角端でなく40mm相当くらいで起動してほしい)など機能を絞って操作が簡単、動作が素早く、まずまずよく撮れる、しかも丈夫、そんなビギナー向けカメラは売り物にならないのだろうか。カメラに慣れない高齢者向け、子ども向けにもなりそうだけれど。  シャッター押すだけのビギナーズ・カメラはというと、最近はスマートフォンのカメラがその役割を荷っているだろう。それとの差別化を図ろうとして多能性志向になってしまうのだろうけれど、メーカーは、少し見当違いの進化をさせているのでは。  B分野は、中サイズの撮像センサーを載せて、③のそこそこの画質も目指している。A分野の高級化版で、②の多能性志向は同じだ。写真・カメラに素人ではないが、レンズ交換まではしない、というユーザー層向けか。あるいは一眼レフユーザーのサブ機か。そんな枠組みの中で、特徴を競っているように思う。それはそれで、工夫ある面白いカメラが少なくない。  このところは、B分野のセンサーの大型化競争になっているらしい。1/1.7型センサーのニコンP340、キャノンS120などは、ほど良いコンパクトカメラだったようだが、生産終了となり、直系の後継機が無い。B分野は今や、より大きな1型センサーに移行しつつある。  ④のコンパクト性はというと、ポケットに入る大きさの機種もある。が、明るいレンズを載せるなど高性能にこだわる機種は、ポケットに入りにくい大きさ・重さだ。ズームレンズ一体型一眼というのか、形状も価格もデジタル一眼に限りなく近いものもある。ここまでくるとさすがにコンパクトと呼んでいないようだ。  ⑤の速写性・操作性は、機種によるのだろう。動作がキビキビと早いこと、カメラ任せのオートで撮影しやすい簡単カメラであることを望むが、このあたりは実際に使ってみないとわからないものだ。何社かの機種は、起動時のズーム位置を記憶しておくなど、カスタマイズ性を持たせているようだ。  C分野は少数派で、RAWデータを一枚一枚現像・加工するような作品志向の玄人さん向けか。  機種それぞれに強い個性があり、特徴をひとからげにして言うことができないが、大型センサーを載せつつ、単焦点レンズにするなどむしろ単能性志向だったりする。④のコンパクト性は犠牲になる傾向だ。マニア向けの高級機で、価格もシビレるお値段だ。 ■私の選択  三分野それぞれに面白そうな機種もあるが、初めに述べた私のささやかな望み、小さくて、操作が簡単で、そこそこ良く撮れるカメラ、という基準に照らすと、帯に短し襷に長しというやつだ。  私としては、②多能性、③画質はメイン機のデジタル一眼があるのでこれに任せたい。サブ機として、第一に④ポケットに入るくらいのコンパクトさ、第二に⑤億劫なくサッと撮れる速写性・操作性、第三として③ある程度以上の画質、そして①ある程度以下のお値段、を望んでいる。  A分野に、使い良い単能カメラがあればだが、これが無いのは前述のとおりだ。一方、このカテゴリーには、1万円前後で重さも100g程度というカメラがある。サッと撮れない使い勝手悪さ、画質のもの足りなさは前述のとおりだが、それに目をつぶれば、とにかくこのコンパクトさ、安さだ。ぶつかったり雨にぬれたりで壊れても惜しくはない。頑丈な防水カメラ以上に自転車やハイキング向きかも。しかし、現有の、10年選手で減価償却済みのパナソニックLumix DMC-FX8 と重なってしまうか。  B・C分野で、コンパクトさに加えて、使い勝手、画質を考慮すると、結局、B分野のソニーのRX100かRX100Ⅲ、C分野のリコーGRあたりに絞られる。RX100とGRは発売から大分経って、値段もリーズナブルになっている。  現行機にこだわらなければ、B分野でニコンP340、キャノンS120の中古という手もあるかもしれない。これら2機種とRX100は、起動時のズーム位置を記憶してくれるようである。  ソニーRX100はズームレンズを持ち、多能だ。コンパクトさと画質を高水準でバランスさせ、値段もお安い。ただ多機能な分、速写性、操作性は劣りそうだ。  リコーのGRは、28mm相当の単焦点レンズで速写性が高く、大型のAPS-Cセンサーで高画質だ。28mmの広角というのがネックだが、35mm相当、47mm相当で撮影できるクロップ機能があることがわかった。これは、センサーの使用エリアを狭めて撮影する機能であり、画質は落ちるが広角~標準の三焦点を選んで使えるのだ。  どちらを取るか迷うところだが、最終的に使い勝手を優先し、GRを選択した。 ■さらばフィルムカメラ  思い立って、手元にあって使うことがないフィルムカメラを、この際処分することにした。コンタックスの一眼レフAriaとレンズ数本、コニカの35mmレンズ機 Hexarだ。  ずっと棚の置物になったままで、今後も使うことが無さそうだ。昔の思い出があって無くなることは寂しいが、中古として誰かに使ってもらえるならその方が良い、と思うようになった。フィルムからデジタルに、これでついに完全移行だ。  埃を払って中野のFカメラに持ち込んだら、新品GRを買って少しお釣りがくる値付けだった。レンズのカビ、剥離など、指摘があった。適切な査定なのだろう。  結局、古いフィルムカメラをリコーGRと交換した形になった。  Fカメラには、中古フィルムカメラが多く陳列され、そこそこに客が来て流通しているようだった。客層は、六十、七十の御同輩男性がほとんどだが、中には二十歳前後の女性がいたりする。カメラ女子?? 写真学校に行っていて、フィルムカメラが教材だったりするのだろうか。  手元のフィルムカメラは、骨董的な二眼レフ、ローライ・コードV(Va、VbではなくV型)だけになった。これも処分と思ったが、いつかまた6×6判で撮るのも悪くないか、と思いとどまった。 ■GRを使ってみて  私は、標準、35mmの画角は勘が働くが、28mmの広角はダメだ。当面は35mmクロップ基本でいくことになりそうだ。まあ何度も撮るうち、28mmにも慣れるだろう。  GRに、望遠の画角を、マクロの寄りを、といった無いものねだりをしてもしょうがないので、それは一眼に任せることで割り切れる。  なお、クロップにした時の画素数だが、28mm相当が元々APS-Cセンサーの割には欲張っていない1600万画素なので、35mmで1000万画素、47mmでは560万画素に減る。貧弱なスペックのようだが、素人である私はポスターのような大プリントにすることがないし、実際見た目の画質は全く問題ない。  GRにはファインダーが無いのだが、実は私としてはこれが一番心配だった。  デジカメ背面の液晶モニターで撮ることに未だに慣れず、どうも苦手だ。構えが不安定で、水平、垂直がきちんと出ないだろう。老眼のためモニター画面がしっかり見えないだろう。日の当たる屋外だとなおさら見えにくい。そうした心配をしていた。  それで、外付け光学ファインダーを中古で見つけ、併せて買った。コシナ/フォクトレンダーの40mm用。40mmというのは、GRの35mm・47mmクロップを使う前提だ。  実写してみると、液晶モニターが割に鮮明に見え、電子水準器機能もあるので、大体は光学ファインダー無しで撮っている。光学ファインダーを付けると愛嬌があり、速写性が一層高まって良いのだが、出っ張って胸ポケットに入らなくなるのがやはり困る。  手ぶれ防止機能が無いが、低速シャッターを使わないでISO感度を自動で高めていく設定にすれば問題ない。1/30くらいまでいけそうだが、安全を見て1/50までの設定にした。ストラップは、リコーの開発スタッフのブログを参考に、大きいボタン(洋服のです)を使ったフィンガーストラップを作ったが、小指に掛けてがっちりホールドできている。  この1/50以下になるとISOを上げる設定をはじめ、GRは様々な設定を自分好みにでき、自由度が高い。シャッターなど動作音を消す、オートパワーオフの時間を長めにするなど、道具としての使い勝手が良くなるのでありがたい。  GRを使い始めてまだ間もないが、旅行や散歩の際に携帯し、気が向いたらスナップという用途にちょうど良いカメラだ。やはりコンパクトなのは何よりで、気軽にポケットに入れて持ち歩ける。キビキビ動作してサッと撮りやすい。写りもよろしい。  撮りやすくて良く撮れるカメラというのは、案外少ないものだが、このカメラは、スナップ写真用の道具、というコンセプトがよく煮詰められている。  何より、ちょっと写真を撮ってみようかという気持ちにさせてくれることが良い。  ちょうどこれを書いた時点で、二代目のGRⅡが発表された。GRの発売後2年になるので代替わりが言われていた。私は、センサー画素数増加と手ぶれ防止機能追加、もしかするとファインダー新設などと占っていたが、全て外れ。大きな変化はなく、細かな改良のマイナーチェンジのようだ。それだけ初代GRの完成度が高いということだ。画素数を変えない見識も立派だ。  写りの良さはこんな感じ。夕暮れの雲のグラデーションをよく出している。  実はこのショットはカミさんが撮ったもの。35mmクロップ、露出補正-0.7は私が設定したが、あとはオート撮影モードで、無加工のJPGファイル出し。結果として、f2.8、1/50、ISO 500となった。手ぶれも高感度ノイズも感じられない。  このカメラは、ビギナーに向く、シャッター押すだけの簡単カメラでもある。    【その後の感想】2015年12月  その後、散歩や旅行、孫のスナップなどに使い、活躍している。クロップ機能は活用しており、35mmクロップを基本に、28mm、47mmを時々使っている。  自分好みの設定にしているが、あとはオートで、露出補正をする以外はカメラ任せ。オートのホワイトバランスも精度が高いようで、色味にも不満は無い。撮りやすくて良く撮れる、という印象はそのまま変わらない。良いカメラだ。  散歩、旅行にはぴったりだが、自転車ツーリングは振動や雨がより心配であり、少々もったいないので使っていない。  外観は、意図して高級感を持たせず、地味で目立たないデザインにしているのだと思うが、それまた気に入っている。ボディもレンズも大きい一眼レフだと撮影する気配が強くて、撮られる側も構えてしまう。黒いプラスチック製の何の変哲もないコンパクトカメラ、というGRの外見は強みだ。  水平の傾いているのが目立つ写真になりがちなのは、心配していたとおりだ。垂直方向の線も、上すぼまり、上広がりになりやすい。自分のせいであり、対策はカメラをきちんと水平に保持することにつきるのだが、電子水準器を使ってもやはり難しい。  結局、このカメラで撮った写真は、Lightroom を使って、角度の修正やトリミングなど事後的に加工することが多くなった。一眼レフで撮った写真については無加工が基本という考えだが、本機のような広角系コンパクトの場合はそうも言っていられない。加工ありきで数多くという撮り方になってきた。  使っていてもう一つ気づいたことは、電池のもちの悪さだ。  半月の長旅に行く際、本体内蔵のものに加えて、メモリ2枚(16Gと8G)、充電池1個を予備に持った。メモリの方は十分余裕があったが、電池は1日で2個を使い切る日もあって困った。予備電池を増やし、多く撮る日は本体電池と合わせて計3個持つことが必要だ。  電池の容量が小さいのは、このカメラの数少ない弱点だ。カメラのコンパクトさと引き換えの小さな電池であり、仕方ないと思うが。