シニアのスマートフォン - 低コストでの運用 2017年11月

 遅まきながらカミさんともどもスマートフォンを導入した。PHS携帯電話からの乗り換えだ。私は仕事をリタイアしたシニアで、携帯も余り使わない。とはいえ、たまには使うので、格安SIMと中古スマホを組み合わせた、低コスト、最小限度のスマホ導入である。  今更のスマホ導入。記事にするほどのことでもない。それでも、「携帯からスマホに替えようか」とか「スマホを使っているが、毎月の料金が高い」と思っておられる御同輩が案外多いかも知れない。御参考にメモにしておくことにした。  シニアをライトユーザーと置き換えても、通用すると思う。周囲を観察すると、大手通信事業者のスマホを使い、数年おきに新しい機種に更新、という人が多いようだ。高コストでも、それがならわしになっている。でも、ヘビーユーザーでないならば、格安SIMとほどほどのスマホの組み合わせで十分であり、維持費は半分になる。中古スマホとの組み合わせなら、さらに低コストだ。 ■PHS携帯電話から格安SIMスマホへ  これまで、夫婦で長年PHS携帯電話(PHSは通信方式の一種)を、それに加えて私は格安SIM(説明は後ほど)を入れたタブレット端末(iPad mini)を使ってきた。一般の携帯電話より割安なので、まずまず満足してきた。  ところが、PHS事業は右肩下がりが続き、今年(2017年)ついに新規受付を停止。もはや風前の灯となってしまい、乗り換えを考えざるを得なくなった。  乗り換え候補の第一は、ドコモ、AUなど大手通信事業者の携帯電話(いわゆるガラケー)だ。PHSと同じ携帯であり、使い勝手は同じだ。しかし、今や販売はスマホ一辺倒で、携帯電話は先細りだ。利用料金もこれまでのPHSより高くなる。  第二は、大手通信事業者のスマホだ。ドコモ、AUなどのショップに行けば、先ずもってスマホを勧められる。しかし、料金プランは高過ぎだ。一見して解りにくい仕組みになっていて、割引・キャンペーンと言いつつ、旨みあるお手盛りの商売をしている。ショップの兄さん/姉さんのお勧めのまま従うと、スマホ1台に毎月6,000円、7,000円を支払うことになる。  第三は、中小通信事業者の「格安SIM」によるスマホへの移行だ。「格安スマホ」とも呼ばれ、その名のとおり安いのがメリットだ。  当方は仕事をリタイアしたシニア。メインに使うのは自宅のパソコンで、スマホは外出時だけだ。そして、外出自体が毎日のことでは無くなっているのだ。カミさんとて同様。実際、これまでのPHS携帯とタブレット端末だって使用頻度はごく少なかった。こんなライトユーザーに大手キャリアのプランは不相応。第三の格安SIMのスマホが適当だ。  SIMとは、スマホや携帯電話の内部に入っていて通信に必要なICカードのこと。ドコモ、AUなどの大手通信事業者の通信設備を借り受けて、比較的安い料金設定でSIMを提供する中小の事業者があり、これが格安SIMだ。航空業界における格安航空会社のようなものだ。大手と比べて通信速度が遅い、電話通話料金が割高、といった弱点があるが、ライトユーザーにとっては大した問題でない。  格安SIMのこれも弱点かもしれないが、大手と違ってショップがあちこちに無く、手取り足取りのサービスが無い。店を探し、あるいはネット販売で購入して、自分でスマホの裏/横を開けてSIMを入れ、設定することになる。その分、安いわけだ。「難しそう」 「面倒」と思うかもしれないが、やってみればさほどのことではなく、ちょっとの手間だ。PHSから乗り換える契約、電話番号を変えない乗り換え(=MNP)も、手続きは簡単だった。  2015年、大手に対しSIMロック(利用制限)解除が義務化され、SIMの自由化に道が開かれたことで、格安SIMも普及しつつある。「格安」という胡散臭い名前は、そろそろ言い換えてやったら、と思うのだが。(*MVNO(Mobile Virtual Network Operator 仮想移動体通信事業者)という名称はある。) ■どの格安SIMにするか  格安SIMといっても、数十社が様々な料金プランを打ち出して競い合っている。どれを選ぶかが次の問題だ。私は、①ライトユーザー向けに割安なプランがある、②5年、10年先も安定して存続していそう、という二つの条件で選択することにした。  ①は、格安SIMも大容量志向で、ライトユーザー向けには力が入っていない状況のためだ。それでも、シニア・子供向けに特化した「TONEモバイル」、準従量制の「FREETEL」、小容量からプラン展開の「イオンモバイル」など、面白い工夫の会社がある。  ②は、この業界の激しい変化に懸念があるからだ。今はベンチャー的に多くが参入しているが、既に吸収合併の動きが出ており、5年後には数社に絞られているかもしれない。まして10年先は格安SIMという事業スキーム自体がどうなっているやら。PHSで変遷を経験した身としては、このうえ振り回されるのは御免だ。シェア上位で運営が堅実、親会社に存続させる意思ありそう、といった点に注目したい。  最終的に2社に絞った。①を重視するなら、小通信容量を家族でシェアできるプランがあって、ままあ安上りな「BIGLOBE モバイル」。②を重視なら、料金・サービスは中庸だが、寄らば大樹の陰、NTTドコモ直系の「OCN モバイル ONE」だ。  結局、低コストを優先して、「BIGLOBE モバイル」を選んだ。BIGLOBEは、最近KDDIに買収されて子会社になったので、②の安定性も強化された。契約したプランは、 主契約:3GBプランのSIM1枚(自分用) シェアSIM:音声通話SIM1枚(カミさん用)、データSIM1枚(iPad mini用) である。1か月3GBは小容量の部類だが、それをさらに二人でシェアして不足しないだろうか? たぶん間に合うはず。私たちの利用はその程度なのだ。  合わせての料金、月2,700円也。電話通話料500~1,000円程度がこれに加わると思われる。大手通信業者のプランと比べれば、まさに格安だ。  これまで、夫婦のPHS2台、iPad miniの格安データSIM(3GB)1枚で、電話通話料を含め月4,500円程度だったので、それよりさらに安くなりそうだ。 ■スマホ本体も中古格安にした  スマホ本体は、格安SIM各社がセット購入のプランを用意している。24か月払いで1,000~2,000円を通信料月額に上乗せして最新機種を購入することができる。  SIMだけ契約し、自分でスマホ本体を買って用意するプランもある。スマホって、単体で新品を買えるのだ。Amazonやヨドバシカメラなどで、1万円から10万円以上まで、ピンからキリだ。ただし、SIMとセット契約の方が割引率が大きい場合もあり、自分で購入するのとどちらが有利とも言いがたい。BOOK-OFFなどで、中古を売っているのでそれでも良い。既にスマホを使っている人は、それを流用しても良いのだ。  いずれにしても、ライトユーザーには新品の高性能スマホは宝の持ち腐れだ。結局、自分で用意、それも中古で、とした。  たまたま、シニアをターゲットとしたNTTドコモのスマホ「らくらくスマートフォン4」の新聞広告を見た。興味を持ったが、ドコモ独自のスマホで、格安SIMでないから利用料金は当然高い。スマホ本体だけを中古で入手できないか? 中古スマホ店「イオシス」のサイトを調べたら、一世代前の「らくらくスマートフォン3」がちょうど出ていた。2014年発売の旧モデルの中古品(大古品?)だが、何と3,000~5,000円程度。これは格安! 初めに導入した「らくらくスマートフォン3」  上の写真が「らくらくスマートフォン3」だが、富士通製の国産スマホで、工業デザイナーが入って本体、画面構成をデザインし、シニア向けコンセプトを実現しているらしい。  画面が小さめだが、小型軽量は利点だ。何とディスプレイは有機EL。最新型iPhone Xと同じだ。ただしピクセル数はずっと少ないが。シニア向けの設計思想を貫き、鮮明で見やすいディスプレイを奢ったのだろう。それ以外は、CPUをはじめ全体に低スペックだが、私たち夫婦には十分と思える。気に入った。  元ドコモの中古品でSIMロックがかかったままだが、ドコモ回線の格安SIMを選べば、問題なく使える。  ダメなら買い替えれば良い値段であり、スマホお試しにぴったりだ。2台購入した。カミさん用にはAランク品(美品)のホワイト、私はBランク品(普通品)のブラック、合わせて8,000円也。Bランクでも傷が無くきれいで、動作も問題ない。  BIGLOBEのSIMとの組み合わせで、シニアのための格安・最小限スマホの出来上がりだ。 ■使ってみての感想 ●利用状況はどうか?  事前の予想どおり、やはりわれら夫婦はライトユーザーそのもの。次のような使い方 だが、実のところ、①②より③④の方が多いくらいだ。スマホはこれらの機能がコンパ クトな1個にまとまっており、やはり携帯電話より重宝と言える。 ①メール・電話・LINE ②インターネット・ブラウジング(地図、乗換え案内、調べ事など) ③カメラ ④音楽プレイヤー ⑤その他(時計、歩数計、電卓、辞書、アラームなど) ●BIGLOBE SIMはどうか? Q:格安SIM一般のことだが、大手通信事業者と比べて通信速度が遅い? 電話の通話料が高くなる? A:BIGLOBE SIMもその通りだが、ライトユーザーの私達には、さほど問題にならない。 Q:大手通信事業者(ここではNTTドコモ)が提供するスマホサービスを利用することができない? ドコモのメールサービス、クラウドサービスが使えない? A:回線はBIGLOBEがドコモから借りているが、私個人はドコモと契約関係が無いので、サービス利用ができない。例えば、「・・・・@docomo.ne.jp」といったドコモのメールアドレスを使えない。これは当然のことで、あきらめなくてはいけない。それを承知で格安SIMを契約したのだ。  代わりのアプリやサービスを自分で調達・加入することになる。ただ後述のように、らくらくスマートフォン3に限っては、様々な制限を設定したシニア向け設計なのでそれがネックとなる。 Q:格安SIMの中でも、とりわけBIGLOBE固有の問題はあるか? A:特段無いと思う。 Q:利用料金は本当に安いのか? 3GBの通信容量で不足しないか? A:半年使った結果だが、BIGLOBE SIMの月々の利用料金は、夫婦のスマホ2台とタブレット1台、合わせて月2,700円。スマホ2台分のNTT電話料金が月800円ほど。合わせて月3,500円ほどである。予想に違わず、まさに格安だ。  二人で月3GBという容量だが、不足したことは一度も無い。実のところ、月末に二人分のデータ通信使用量を確認すると0.5GBにも満たない。翌月に持ち越せるので、残り5.5GB以上の状態が常なのだ。3GBで大丈夫どころか使い切れずに大半を捨てている。 ●「らくらくスマートフォン3」はどうか? Q:シニア向けで低性能、しかも中古機で支障ないか? A:中古機の中でも年式が古く、低性能の部類なのは確かだが、オンラインゲームや動画などのヘビーユーザーなら性能不足と感じるだろうが、ライトユーザーの私たちにとっては特に問題無い。性能面の不満は無く、十分行ける。  中古ゆえの故障や問題点は特に無い。電池の劣化も無かった。 Q:シニア向けスマホというコンセプトはどうか? →総じてよく煮詰められていると思うが、それが仇となっている面もある。  この機種独自のインターフェースであり、それに慣れる必要がある。慣れると愛着がわく。利用アプリが基本的なものに限られるのは不便である。 Q:アプリが基本的なものに制約されるって、どういうこと? A:一般にAndroid用アプリの入手は「Google Play」サイトから行うが、らくらくスマートフォン3の場合はそれができず、ドコモの「dマーケット」からアプリのダウンロードを行う。しかし、格安SIM使用のため、ここでも多くの場合「ダウンロードできません」となる。ドコモのクラウドを使うアプリも利用できない。  がんじがらめで、プリインストールのごく基本的なアプリ以外は使えないと思った方が良い。かなり厳しい制約だ。  ブラウザー、地図、乗換案内などのアプリは、プリインストールされているものが貧弱で使い勝手が悪い。一般なものに替えたいが、GooglePlayからダウンロードできない。「NHKニュース・防災」、「BIGLOBEでんわ」、「Evernote」といった使いたいアプリも、軒並みダウンロード不能。いくらライトユーザーといっても、これほどアプリが制約されると、やはり不便だ。 ■以前使っていた携帯電話、ワイモバイルPHSが、2020年7月末でのサービス終了を先日発表した。ついに終了宣言だ。  格安SIM+中古スマホへの乗り換えは、私たち夫婦のニーズに合っており、運用コストも下がって、悪くない選択だったと思う。タイミングとしても正解だったようだ。 ■「らくらくスマートフォン3」からAQUOSに換えた(2018年7月追記)  約8か月間「らくらくスマートフォン3」を使い、同じく中古Androidスマホだが別の機種に換えた。「らくらく」はやはりシニア向けの特別な機種で、一般的なアプリが使えない不自由さに不満が高じたのだ。  なお、「らくらく」は、近所のBOOK-OFFで2台2,000円也で売却できた。  新たなスマホは、海外旅行時に現地のSIMを使いたいのでSIMフリー、道具としてのほどほどの性能と値段、という条件で探した。iPhoneでなきゃ、といったブランドのこだわりは全く無いが、できれば国産(設計)が良い。適当な品が中古スマホ店、秋葉原の「イオシス」にあった。  シャープ製の2機種で、紺のAQUOS SH-M04は自分用、小さめの白のAQUOS miniSH-M03がカミさん用。それぞれ、2016.12、2016.6の発売。格安SIM向けの国産機種、という貴重な少数派である(日本以外では、こうしたSIMフリースマホこそが標準の姿なのだが)。  どちらもBランク品(普通品)だが傷なくきれいで、1万4千円と1万8千円ほどだった。どちらも小柄で軽量な部類なのが気に入った。防水・防塵対応というのも実用的だ。カミさんの方が、よりコンパクトかつ上等である。  スマホ本体を換えても、SIMは差し替えて使えるが、サイズが「らくらく」のmicro SIMより小さなnano SIMのため、物理的に差すことができない。サイズ変更をBiglobeに申し込んで送ってもらうのが正道だが、2枚分の手数料が8千円近いので、「SIMカット」という裏道を試みた。SIMの四辺を自分で切って小さくする乱暴な方法だが、工作としては初歩的だ。中身のICは極小なので、傷つかないようだ。カットのガイド用pdf版テンプレートがネット上にあり、慎重にカッターで切ってやすりで仕上げ、2枚とも成功。(邪道です。他人様にお勧めするものではありません。)  AQUOSの2機種は、「らくらく」と違って標準的なAndroid機であり、同じ中古でも、アプリを自由にインストールして制約無く使うことができる。さっそくいろいろと試している。最新型の高性能機でなく1年半/2年前の中性能機だが、動きもキビキビ、問題ない。カメラなど付属機能も悪くない。ライトユーザーの実用の道具としては十分だ。中古といっても、どちらもさほど使われていなかったようで、電池の劣化も特に無い。  最初からこちらにすれば良かった!?  ただ、「らくらく」から換えて、これまで無かったアプリの通知や広告が、やたらと多いことに驚いた。通知はブロックするようにしたが、広告はインストール誘導型も多く、大変煩わしい。  思えばこれが一般社会なのであって、それが一切無い「らくらく」は、いわば高齢者施設の中に居るようなもの。強い保護と制限のもと、害悪が遠ざけられた世界だった。それが、「らくらく」の(短所と背中合わせの)長所だったのだ。  そうした短所と長所の両方を承知した上であれば、シニア向けとして「らくらくスマートフォン」は満更悪くない選択かもしれない、と改めて思った。  結局、①格安SIMと中古スマホという選択が低コストで実用に足り、ライトユーザーにはおすすめ、②通信容量は夫婦で月3GBでも余ってしまう、③「らくらく」などのシニア向けスマホは長短両面あるので慎重に、というありきたりの結論になった。そもそも、あまり使わないのだから、ほどほどの性能で安い実用品で良い。  「スマホのことはよくわからないし、面倒。あれこれ自分でするより、毎月の支払いが高くてもショップ任せにしたい」「アクセサリーの一種だから、高級な最新機種を持ちたい」という方は、この限りでない。ショップの兄さん/姉さんの雇用確保、わが国の経済発展への貢献にもなるし、それもよろしいのでは。