介護・医療を予習して老い先を考えておく 2021年1月

 70代が間近になり、元気で過ごしているのもあと何年のことか、この先を展望しておこうという気持ちになった。  現在、夫婦ともに高齢者の二人暮らしだが、漠然とした不安として、今後、70代、80代になればいずれは病気や認知症になって自立した生活ができなくなるだろう、寝たきりになるのでは、という恐さがある。  自分の両親を考えると、それぞれ亡くなる前の数年、80歳を境に頭と身体が弱り、急速に自立生活ができなくなっていった。これまで、80歳は遠い先と思って来たが、もう12年後のことだ。遺伝からして90代までの寿命は無いだろうが、健康寿命をできるだけ保ち、ピンピンコロリが望ましい。が、そうは問屋が卸してくれないだろうなあ。  両親の終末期は、介護保険制度が始まった1997年からさほど経っていない時期だった。その頃の介護サービス、施設の状況はわかるが、その後の変化で今どうなっているのか知識がない。この頃は高齢者施設も新種のものがどんどん整備されているようで、自宅近辺でいくつか見かけたり、新聞折り込みチラシが入ったりするが、どういう施設かわかっていない。(今回の調べで、「サービス付き高齢者向け住宅」や「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」とわかった。)  ここいらで介護や医療について予習し、自分とカミさんの老い先を展望しておくべきだ。  わが国の急速な高齢化社会の進行に対応しようと介護保険制度ができて20年以上経ち、現在の介護サービス・施設のシステムに至っている。必要に対して対応が不十分である、建前と実際のギャップがある、公益性と営利性の狭間にあって玉石混淆である、人手不足である、など様々な問題を抱えていることは聞こえてくる。  今回、何冊か本を読んだが、新田國夫・安藤 明「安心して自宅で死ぬための5つの準備」2012 主婦の友社 が最も参考になった。ほかに、「親の介護に直面したら・・・」とか「老後の住まい・施設・・・」といったタイトルの本がいくつもあるが、個人の介護経験を深く語るか、介護サービス・施設を横並びに浅く説明するものがほとんで、なるほどわかったという気にならない。  新田医師は終末期の在宅医療・ケアに長年携わる人で、その視点から総合して高齢者が終末に至る過程を記してくれている。福祉側でなく医療側からだが、介護サービス・施設について問題点を含めて俯瞰的に解説している。読むことで、漠然と考えていたものが半ばはっきりして、自分の老い先をこれまでより具体的にイメージできるようになった。  以下、この本に沿う形で記すことにする。 ■多くの人は、75歳以降、疾患により徐々に自立度が低下する  この本の第2章「加齢によって身体に何が起こるか知っておく」で、前提とすべき認識が示されている。  まず、「じつは、75歳以上でも約70%の人達が『元気』です」として、都の2012年統計が掲げられている。同じ統計の全国最新版が厚生労働省「2018年度介護保険事業状況報告(年報)」から算出できるが、全国の65~74歳介護保険第1号被保険者の95.7%、75歳以上の67.5%が要支援・要介護認定無し、とほぼ同様の比率である。「元気」とは、要支援・要介護の認定を受けていない、ことを言っている。それも、ある時点での比率であり、75歳以上の約70%は終身ずっと認定無しのまま、というわけではない。  続けて、高齢者の日常生活自立度変化の類型が示されている。このデータの方が、実態をよく示していると思う。出典は秋山弘子氏の論文「長寿時代の科学と社会の構想」(『科学』2010.1 岩波書店)で、全国高齢者20年の追跡調査(N=5,715)により自立度の変化パターンが分析されている。  秋山の分析はわかりやすいグラフになっている(この文中の図2)。これによると、 ①男性の19.0% 女性の12.1%が、70歳になる前に健康を損ね、重度の介助が必要となる・死亡となる群 ②男性の70.1% 女性の87.9%が、75歳ぐらいから徐々に自立度が下がる群 ③男性の10.9%が、80代、90代まで自立を維持する群、である。  男性は脳卒中など疾病により急速に動けなくなる、あるいは死亡する人が多い傾向があり、女性は筋骨格系の衰えによる運動機能低下で自立度が徐々に落ちる傾向がある。男女合わせると、約8割の人が70代半ばから徐々に衰えはじめ(男性の方が急降下)、何らかの助けが必要になっていく、ということである。  介護保険事業状況報告は要支援・要介護認定の有無、秋山論文は日常生活動作(ADL)の低下で、二つは異なる概念だが、合わせて考えると、70代前半までは自立した生活をしている人が多数派である。ある時点で見ると、75歳以上で要支援・要介護認定を受けずに頑張っている人の比率は約7割だ。その人達も70代半ばから疾患等により徐々に日常生活の自立度が低下し、どこかで要支援・要介護に至り、80代後半ではほとんどの人が死亡に至る、ということになる。この認識は実感にも合う。 ■慢性疾患や障害とつきあう心構えを持つ方が良い  新田は、70代半ばからの自立度低下について、「これはつまり、75歳を過ぎた頃からいろんな疾患を抱え始めるということです」として、脳卒中、心不全、肺炎等の感染症、がん、認知症、転倒による骨折を説明している。また、75歳以上になると、入院してベッドで寝ていることにより身体機能が低下する廃用症候群になりやすく、自立度が急激に落ちると説明している。疾患による身体活動の低下が、さらに別の疾患やサルコペニア、フレイル、ひいては老年症候群をもたらすことにもなるのだろう。  2020年度高齢社会白書でも、介護が必要になった主な原因として次があげられている。(多い順) 男性:脳血管疾患(脳卒中)>認知症>高齢による衰弱>骨折・転倒>関節疾患>心疾患(心臓病) 女性:認知症>高齢による衰弱>骨折・転倒>関節疾患>脳血管疾患(脳卒中)>心疾患(心臓病)  これらの疾患には、食生活、運動、ストレス、その他の生活習慣、遺伝、免疫システムなど様々な要因があり、予防するといっても思うようにはいかない。  さらに新田は、高齢者の病気は老化が関わっておりほとんどが完治するものではないとして、完治させなければと思わずに慢性疾患や障害を自然のこととして受け入れ、サポートを受けながら日常生活をいきいきと継続することを提唱している。  自分の場合も、脳梗塞の既往歴があって脳血管疾患が危ない。また両親を考えれば、認知症やがんも大いにあり得る。カミさんはこれまで大きな病歴は無いが、骨粗しょう症が危険因子で転倒による骨折に注意だ。  病気は避けがたいが、これからの新たな発症や重篤化をなるべく先延ばししたいものだ。食生活、運動など、自分たちができる範囲のことを意識してやっていくほかない。 ■亡くなる前に寝たきりになっている人は数%  新田は、終末期の在宅医療・ケアに長年携わってきた経験から、亡くなる前に寝たきりだった人は数%で、多くの人は不自由を抱えながらも平穏に生活していて、亡くなる1、2週間前まで床についていなかった、と指摘する。  亡くなる前には長い期間ずっと寝たきりのイメージがあるが、そうではないということで、勇気づけられる話だ。ただ、これは新田が診た在宅死の人の話であり、現在一般的な病院死の人の場合は寝たきりだったケースがもっと多いのかもしれない。  また、延命治療について述べられている。胃ろうを作り、さらに気管切開を施した場合は、誤嚥による肺炎が起きないため、何年も寝たきりで生き続けることになる。あるいは、在宅の終末期で状態の急変があって救急車を呼べば、集中治療室で救急救命医療を受け延命治療がなされることになる。延命治療は、本人・家族の意思がポイントだ。本人の意思確認ができない状態の場合は、家族も医師も悩むことになるのだろう。  私たち夫婦としては、治す治療がもはや無くなって死に向かっている状態の場合、延命のための治療はいらない、これを意思としたい。 ■これからの選択肢を場合ごとに考えておく  今回、新田・安藤の「安心して自宅で死ぬための5つの準備」を読んで、病気や認知症になった場合をこれまでより具体的にイメージできるようになった。ちなみに「5つの準備」とは次のようなことで、この本の各章のタイトルになっている。  1 死ぬということについて心づもりをしておく  2 加齢によって身体に何が起こるかを知っておく  3 「病院信仰」を捨て、かかりつけ医に在宅医療を頼む  4 医療と介護の公的サービスの現状を知って使いこなす  5 「最後の2週間を幸せに生きる」と心に決める  なるほど、漠然と将来への不安を持ったままいるより、こうした準備をしておく方が良い。  準備の4「医療と介護の公的サービスの現状を知って使いこなす」として、以下、自分とカミさんにこれから起こり得る状況を想定し、介護・医療の選択肢を場合ごとに考えておくことにする。(居住している横浜市におけるサービス、制度、施設を前提とする。) ●急性疾患になった場合 【選択】かかりつけ医(休日の場合は休日急患診療所)を受診、急を要する場合は、救急車搬送を依頼 *病気になった時の一般的な選択だ。場合によっては病院入院になり、要介護になるきっかけになり得る。 ●高齢者夫婦あるいは一人になって、将来が不安になった場合 (漠然とした不安の段階) 【選択】(介護サービス等が無い一般の)賃貸住宅への転居 ・一般のアパート・賃貸マンションは、高齢者を入れたがらない。 ・市住宅供給公社や県住宅供給公社の「高齢者向け優良賃貸住宅」が選択肢になる。1DK~2DKと狭いが、バリアフリー設計、非常時通報装置付きで家賃補助がある。 *バリアフリー設計、非常時通報装置付きはメリットだが、現行より狭い居住面積、生活環境の変化はデメリットだ。現行より住居費支出が多くなり、10年、20年の長期になれば生活資金設計に影響する。特に必要が生じない限り、漠然とした不安の段階でこの選択はしない方が良い。 (食事作りなど家事が不安・億劫になった段階) 【選択1】サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への転居 ・安否確認、掃除、買物代行などの生活支援サービスを提供。施設によっては食事も。 ・介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを契約して利用。重度の介護状態になると、住み続けることが難しい。 ・有料老人ホームと比べ、初期費用は敷金程度で低額であるとともに、外出・外泊等自由に生活できる。 【選択2】住宅型有料老人ホームへの転居 ・食事を含めた生活支援サービスを提供。介護が必要になった場合は、外部の介護保険サービスを契約して利用する。医療処置が必要な場合への対応は無い。 ・多くの場合、高額の入居一時金が必要。 *サ高住、住宅型有料老人ホームともに、公的施設ではなく営利法人が設置主体で、急増している。バリエーションが幅広く、サービスの質はまちまちだが、基本は営利優先のビジネスと考えるべき。デイサービス、訪問サービスなどの介護事業を併設することで収益を確保する傾向になっている。入居者の囲い込み、介護漬けが言われている。  頭はしっかりしているが自立度が少し下がったと自覚する場合の選択肢だが、まだ食事作り・家事が不安・億劫な程度で、不可能という段階にまで至っていないならば、自宅で頑張る方が良い。施設に入れば施設頼り、施設任せの生活で、楽ではあるが、生活全体が大幅に変化するだろう。日常生活動作全般が減退し、自立度の低下を早めることになる。コストも高額で、老後の生活資金設計が崩れる。この選択は慎重であるべき。 ●疾患・認知症で介護・看護が必要になった場合 【選択】介護保険サービスを利用する ・地域包括支援センターまたは区役所高齢障害支援課に相談する。 ・利用までの手順 ①要介護(要支援)の認定を受け、②ケアマネージャーを選定 ③ケアプランの作成を依頼、④サービス事業者と契約、⑤サービス利用 ・認知症初期が疑われる場合、「認知症初期集中支援チーム」の訪問・支援を依頼する。 *介護が必要になった場合の一般的な対応である。  疾患・認知症による日常生活動作(ADL)の低下がどのようなものかは、その時にならないとわからない。新田医師の言う病気や障害とつきあう心構えが必要なのだろう。自立度の低下と折り合いをつけながら、介護保険サービスを活用して夫婦補い合って老々介護で頑張ることになる。サービスは多様な種類があるようだが、今はそこまで予習しなくても良いだろう。通所、ショートステイ、訪問介護・看護を一体的に提供する小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護などの新種も出てきているようだ。  まずケアマネージャーの選定だが、ケアマネが所属する居宅介護支援事業所は居住する区内に48事業所もあり、選定は大変難しそうだ。地域包括支援センターと相談しながらの試行錯誤になるのだろう。  経済的には、介護保険サービスの自己負担分(1割)他であり、現行生活費+アルファになるが、年金と貯蓄取り崩しでまかなえる範囲だろう。 ●疾患・認知症で施設入所が必要になった場合 【選択1】公的施設に入所する ・地域包括支援センターまたは区役所高齢障害支援課に相談し、公的施設の情報を得る ・入所までの手順 ①利用施設を選択、②入所申し込み、③サービス事業者と契約、④入所 ・公的施設の種類 (1)介護老人福祉施設=特別養護老人ホーム(特養) ・介護保険法上は、介護老人福祉施設。要介護認定を受けた高齢者が必要な介護を受け暮らす施設。経済状態・資産は関係なし。2015年から入所要件が要介護3以上に引き上げられた。 ・老人福祉法上は、特別養護老人ホーム。介護を必要とする低所得の高齢者を措置入所させる施設。 ・社会福祉法人が設置主体で、施設数は増加しているものの、待機者が多く、3~6か月、あるいはそれ以上の順番待ちになるようだ。施設によりサービスの質に差があると思われる。職員離職率が高く、人員基準が満たせずに空床の施設もあると聞く。 (2)介護老人保健施設(老健) ・急性期の治療を終えた高齢者が、自宅に戻る準備として介護やリハビリを受ける目的の施設。医療法人が設置主体で、施設数は特養に次いで多い。 ・入所中の医療サービスについては医療保険の適用が無く、介護保険の適用(施設側の介護報酬)になる。 ・在宅生活復帰が建前のため、利用は基本的に3か月が限度で、最期までは難しい。実際には、特養の不足を補う施設になっていて、入所者がいくつかの老健を巡って終末を迎える場ともなっている。 (3)介護療養型医療施設、介護医療院 ・医療法人が設置主体で、病院の病床・病棟。公的施設の第3だが、実際には、施設数が少なく選択の対象になりにくい。 *居宅介護が困難になり施設入所を希望する場合の一般的な対応である。急性疾患で入院し、退院後に自宅に戻れない場合もこのケースになる。一般に、身体的には自力でトイレに行けなくなった時、施設に入所することなるようだ。一人暮らしで認知症が進んだ場合は、買い物などの外出、食事作りなどの家事が危なくなった時、ということになるだろう。  老々介護で自宅で頑張るとしても、どこかの時点で限界が来る。このケースは、要介護度が進んで居宅介護が困難な段階であり、状況は切迫している。一方、夫婦のもう片方も弱ってきていて、自力で施設を探し契約することが困難になっていることも大いに考えられる。地域包括センターに相談してどの程度補助してくれるだろうか。  利用施設の選択が課題となる。まずは特養を探すことが望ましい。施設数が増加し、居住する区内にも従来型4施設、ユニット型4施設があるが、待機者が多く、待たずに入所できることは稀だろう。その場にならないとわからないが、3か月~半年待って入れるかどうかだ。  空きが出そうになければ老健が次善策となる。居住する区内の施設は、従来型3、ユニット型0だ。老健の場合は利用期間の限度があり、期間が迫ったら、別の老健を探して移らなければならない。最後の策は次項の有料老人ホームだが、問題点が多そうであり選択を避けたい。  経済的には、介護保険サービスの自己負担分(1割)に部屋代、食費、日常生活費が加わる。要介護度や施設タイプによって異なり、国や市独自の高額負担軽減制度、助成制度もあるので、実際のところはよくわからないが、費用負担は大まかに月10~15万円程度だろうか。年金+貯蓄取り崩しでまかなうことになるので、その心づもりでそれまで生活をしていくということだ。 【選択2】民間施設に入所する ・公的施設ではなく、営利法人が設置主体の民間施設。自分で探し、契約する。 ・民間施設の種類 (1)介護付き有料老人ホーム ・食事、洗濯・掃除等の家事、健康管理を提供するほか、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていてホームの職員が介護サービス(入浴・排せつ・食事の介護)を提供する。介護保険対象の介護サービスは、1割の自己負担が発生する。施設側からすると、目いっぱいの介護サービスで介護報酬の収益を得る経営になる。 ・看護職員が配置され、一定の日常的な医療的ケアはあるが医療行為は限定される。外部医療機関に通院・入院が必要になり得る。 ・高額の入居一時金が必要。 ・倉本聰の2017年TVドラマ「やすらぎの郷」の舞台は、自立している時から入居し、レストランやバーを自由に使え、医師・看護師が常駐する医療・介護付きで、最期の時まで過ごせるリゾート風高級老人ホームだったが、無論これは架空の代物だ。 (2)住宅型有料老人ホーム ・食事を含めた生活支援サービスを提供。介護が必要になった場合は、訪問介護など外部の介護保険サービスを契約して利用する。 ・外部介護サービス事業者が設置主体系列で、事実上「介護付き」に近い経営構造の施設が少なくない。 ・看護職員の配置はホームによってはあるが、多くは配置が無い。医療行為は、研修を受けた介護スタッフに許される医療行為である胃ろうなどの経管栄養、たんの吸引に限定される。 ・多くの場合、高額の入居一時金が必要。終身利用権方式の契約だが、医療的ケアが無いため看取りまでは難しい。 ・介護付は特定施設で総量規制の対象のため、住宅型(かつ介護事業を併設するタイプ)が特養の不足を補う形で急増している。異業種からの参入も多いが、倒産・廃業も多数出ている。 ・なお、有料老人ホームには、介護付き、住宅型のほかに健康型があるが、要介護認定になったら退去するもので、選択肢にならない。 (3)認知症高齢者グループホーム ・認知症高齢者のための共同生活住居。5人~9人の共同居住で、食事の支度、掃除、洗濯等を職員と共同で行い、家庭的な雰囲気の中で生活を送ることを目的とするもの。 ・認知症で要介護度が比較的軽い人が対象。介護保険サービスの認知症対応型共同生活介護の対象となる。要支援者(要支援2のみ)、要介護者(要介護1以上)。 ・入居時、一般に入居一時金が必要。敷金程度で有料老人ホームに比べると低額。 *介護付き/住宅型有料老人ホームは、公的施設に空く見通しが無い場合の最後の策になるが、医療的ケアが限定され最期まで看てもらうことは困難だ。基本的に営利ビジネスと理解すべきで、選択は極力避けたい。私の居住する区内には、現時点で介護付き12、住宅型8の施設がある。  費用は、まず初期費用として入居一時金数百万円が必要で、介護保険サービスの自己負担分(1割)、部屋代、食費、日常生活費でおよそ月15~25万円程度か。入居が必要になる時期には、貯蓄も目減りしているだろうから、まかなうのは厳しいだろう。いずれにせよ、期間コスト高過ぎ、コスト・ベネフィット低過ぎだ。 *グループホームは、認知症があるが身体的には自立度が高い場合、選択肢となり得る。要介護度が進めば退所となり、改めて公的施設、民間施設を探すことになるが。施設数は急増しており、居住区内に21施設ある。私の場合、両親とも80歳を越してから認知症が出たので、この選択の可能性が高いかもしれない。  費用は、入居一時金数十万円の初期費用のほか、介護保険サービスの自己負担分(1割)、部屋代、食費、日常生活費でおよそ月20万円程度か。年金+貯蓄取り崩しでまかなう心づもりで行きたい。 ●終末期の在宅医療を望む場合 【選択】(新田医師が行っているような)緩和ケアを含めた終末期の在宅医療・ケアに携わる在宅療養支援診療所を探す。 *病院、施設でなく、自宅で終末期を迎える選択は、看取る人が存在する場合に限られるが、そうする場合には、地域包括支援センター、在宅医療相談室(区医師会館内)に相談し、紹介してもらう。居住区内に数か所、在宅療養支援を標榜する診療所がある。  ただ、わが家に即して考えると、その時点では夫婦のもう片方も弱ってきていると思われ、自宅で看取れるかどうかは相当難しそうだ。 ●終末期を病院、施設で迎える場合 【選択】治す治療が無くなって終末期が近づいている場合、緩和ケアを主体とし、胃ろう、気管切開などの延命治療はしない方針でいく。 *平穏な死を目標にし、必要に応じ、ホスピスへの転院、モルヒネによる疼痛コントロールも選択肢に入れる。 ■まとめ  将来起こり得る状況を考え、大まかだが介護・医療を予習してみた。  自分の両親の15年、20年前の終末期と比べると、介護保険制度が定着し、介護サービスは事業として確立して量的に拡大し、バリエーションも増えた。営利ビジネスとしての企業の参入も拡大し、現在なお新規施設が増加している。施設の量が少なく、選択の余地がほとんど無かった当時から比べると、状況は改善されていると言える。  しかし、個人の視点で自分とカミさんの将来を考え、頼りにして安心していられるかというと、そこまで充実してはいない。  改めて、自立して日常生活を送り、まあまあ元気に様々な活動をしている現状を貴重なものと思うようになった。疾患や認知症はいずれ来るだろうが、なるべく先送りに、なるべく小さいものにしたいものだ。また、来たにしても上手につきあって、自立度の低下をなるべくゆっくり進行させたいものだ。その積み上げで、ピンピンコロリはともかくとして、寝たきりの期間が短い終末になるのではないか。 ■資料 ・新田國夫・安藤 明「安心して自宅で死ぬための5つの準備」2012.11 主婦の友社 ・「横浜市介護保険総合案内パンフレット令和2年度版」2020.4 横浜市健康福祉局