マンションの台風被害 - 屋上滞水の再発防止策 2020年3月

 私は2階建て20戸、築36年の小規模RC造集合住宅に住んでいるが、2019年度の1年間、住宅管理組合の理事のお役目だ。一昨年度も理事だったが、何しろ20戸なので順番がまわるのが早い。  もう今月で2019年度は終わるが、今年度の後半は台風被害への対応に振り回された。  わがマンションのことだが、他のマンションやビルの屋上にも共通する問題かもしれない。後述のように「通常の」やり方で設計・施工されているのだから。 ■2019年10月、台風19号による被害  まず、9月に首都圏を直撃した台風15号で、集会所屋根の一部が突風で飛ばされ破損した。板金屋さんに依頼して修繕を実施した。  続いて10月、またもや首都圏直撃の台風19号が来襲し、当地では12日明け方から深夜まで、最大時間雨量25.5mm、累計雨量230.5mmの豪雨になった。この雨により、住棟2棟の一つで屋上に水が滞留し、防水シートの下に水が浸入。結果として2階の2住戸で雨漏りが生じた。(この時、私は何も知らず、能天気に旅行中でドイツ ライプツィヒに滞在しており、まさに寝耳に水、理事長からのメールで驚いた。)  雨漏りは翌朝には止まっていたが、雨漏り被害の当事者でもある理事Nさんが、午後屋上に上がって確認してみたところ、滞留した水で屋上はプール状態。5箇所の排水口に詰まった落葉を取り除き、排水した。  この台風19号関係の後始末が大変だった。 ■屋上防水工事はシロ  屋上防水は、2015年度の大規模修繕で工事をし、さほど経っていない。大規模修繕のかかりつけ医になってもらっている工事設計・監理のコンサルタントに連絡し、工事施工業者、防水材料メーカーも含めた原因調査をしてもらった。  排水口まわりに溜まった落葉により、豪雨の排水不良が生じ、滞水状態になった。滞留した雨水が、脱気筒(160mm高)、防水層立上り端末(最低箇所165mm高)のいずれかから防水シート下に浸入し、コンクリート躯体の弱い箇所から浸み込み、2住戸の天井から浸み出したと考えられる、とのこと。  しかし、落葉が原因であるにしても、詰まっていた落葉の量は少量だった。  少量の落葉で詰まる小口径排水口(2度目の屋上防水工事で、50mm径に狭まっている)・小型ストレーナー(少しの落葉の貼り付きで詰まる)、また、160mmほどの滞水で侵入する脱気筒・立上り端末は欠陥ではないか、と食い下がった。  「脱気筒、立上り端末を含めて、施工は適切な工法で行われている。通常の口径の排水口、通常使われるストレーナーであり瑕疵とは言えない」、さらに、「屋上防水工事は10年保証だが、免責事項として台風が明記されている」とのことで、シロだという。  木を見て森を見ずの逃げ口上で、納得しがたい。しかしながら反論が困難だ。 ■自前の再発防止策  屋上防水についてはそのままで、改良の提案は何も無い。今後、同じような豪雨の場合、再発は必至である。今後、毎年度の住宅管理組合の理事は、大雨予報の度に屋上に上がって落葉の有無を点検することが義務付けられてしまう。  せめてもの再発防止策として、ストレーナーを大型化して少量の落葉では詰らないよう改良することを提案した。が、コンサルタントと施工業者は、落葉対策として有効と考えるが、新たな追加工事であり住宅管理組合の費用負担になる、とおっしゃる。  ならば、自前でやってやろうじゃないの。  排水口用ストレーナーの既製品に大型のものは無い。代用できるものを探した。部品洗浄、調理などの業務用品のステンレスかごに、適切な大きさ・形状で、1~2cm程度のメッシュ、耐久性もありそうな製品があり、これが最善と結論づけた。  かご上部の取っ手が邪魔なので切り取り、上下ひっくり返して排水口の上に設置すれば、大型ストレーナーになる。作業は簡単、工事というほどの大袈裟なものではなく、自分たちの手でできる。また、1箇所あたり9千円程度の材料費で、比較的低コストである。  材料は、次のとおり。 ステンレスかご:アズワン製 超音波洗浄機MCS/MCD-13用 300×270×130         (取っ手を切除し、上下逆にして排水口にかぶせる) レンガ:1/2ヨーカン型2個 計2.4kg、重し用 シリコン・シール材:隙間均し用  小型ストレーナーからの交換・設置は、2棟の計10箇所で行ったが、われら理事たちにより半日で完了した。  これで、めったなことでは落葉による詰まりは生じないはずだ。10年後の次回の屋上防水工工事の際には、排水口の口径を広げることもできれば良いが。 ■雨漏りした住戸への対応、マンション総合保険は対象外  雨漏りした2住戸は、台風19号当日だけで雨漏りは止まり、その後は雨があっても水濡れの問題は生じていない。  被害は、天井のクロスの染み・剥がれである。それぞれ、内装工事屋さんに修繕を依頼し、住宅管理組合の負担でクロスを貼り替えた。下地の石膏ボードには被害が及んでいないとの見解だった。  マンション総合保険に加入しているので、保険会社と協議したが、制約が厳しく、実際の役に立たないことを痛感させられた。  第一に、建物共用部分、共用設備・備品のみが保険対象で、専有部分であるクロス貼り替えは対象外。  第二に、水濡れの原因について、「風、雨、雪、雹、砂塵等の建物内部への吹込み、浸込みまたは漏入によって生じた損害」は免責事項、と限定的。  (給排水管老朽化による水濡れ事故が多発することで保険会社が免責事項を広げたようだが、雨も免責とは。)  第三に、免責額20万円の契約であり、修繕額がこれに満たない。  (ちなみに、台風15号による集会所屋根被害の修繕工事も、金額が満たず、保険金は出なかった。)  保険料は高いのに、何のためのマンション総合保険か。と、腹を立てても暖簾に腕押しだ。  こうして、どうにかこうにか台風被害への対応を終えた。