LANケーブルの自作
 - ぐっとすプラグとBelden 1874Aを使って 2015年9月

■材料  LANケーブルの自作は、専用のかしめ工具が無ければできないので素人には困難だ。そう考えていたところ、専用工具不要のLANプラグがあると知り、これを使って自作してみた。電気工作というほどのことでもないのだが、ネット上のLANケーブル自作の情報はほとんどが専用工具を使った方法なので、専用工具不要の方法についてメモしておくことにした。  ポイントとなるLANプラグは、パナソニックの「ぐっとすプラグ」という妙なネーミングの品だ。  一般のLANプラグ(RJ-45コネクタ)は、10個・100個の単位で売られ、1個あたり100円前後。しかし、プラグをLANケーブルに付けるためにかしめ工具が必要で、これが5千円、1万円とする。しかもプラグはメーカーごと、品目ごとに規格が異なり、それぞれ専用工具が要る。これでは、素人は躊躇せざるを得ない。  そうした中、専用工具不要の「ぐっとすプラグ」は貴重だ。素人にもLANケーブルの自作がし易い。ただし、ばら売りで1個が600円ほどとお高い。プラグ10個(LANケーブル5本分)も使うなら、そろそろ工具を買ってでも一般のLANプラグが良いのかも。  LANケーブルは、Belden 1874Aが廉価な割にネット上で音質の評判が良いので、これを試すことにした。秋葉原の桜屋電気店で切売りが1,000円/mで買える。  秋葉原に行き、愛三電機で「ぐっとすプラグ」6個だけ、桜屋電気店で1874A 1mだけを購入。  「ぐっとすプラグ」はプラスチックのおもちゃのような外見で、ネーミングともども頼りない感じだが、カテゴリー6対応と仕様は立派だ。  パナソニックの製品説明  1874Aは、硬めの外被で平べったい断面だ。心線はAWG23と太めの銅単線。これは、高周波信号は電線の表面を流れるので、撚線より有利な単線を採用したものだろう。2本を平行線にしてゆるくツイスト、これを4組横に並べている。線間距離を固定するねらいのようだ。珍しい構造だが、一理ある。  全体に硬いケーブルで、取り回しは良くない。こちらもカテゴリー6で、さらにエンハンストとうたっている。  Belden 1874Aの製品説明    ■工作は簡単  工作は、パナソニックの説明どおりにするだけで難しくない。  パナソニックの施工説明書  少し自分流の補足をすれば、こんな手順だ。 ①LANケーブルの外被を35mm剥く。(パナの説明書では50mmだが、そこまでは不要)  カッターナイフで切り込みを入れて剥くが心線を傷つけぬよう浅く。ここは注意点。  境目保護のため、アセテートテープと熱収縮チューブで処理する。 ②1874Aは心線が平行線なので裂いて、結線図に従い溝に入れる。(写真 中央)  細い心線の被覆を剥かなくて良いのはありがたい。 ③青のキャップを使って、1本ずつ、心線を溝の奥にぐっと押し込む。(これが名前のもとなのでしょう。)  これにより、被覆の一部が切れて接点ができる。  はみ出た心線をニッパーで切る。 ④接点復活剤を押し込んだ箇所に塗る(接触不良防止のおまじない)。  キャップをかぶせる。 ⑤ファインメット・シートを切って作ったテープをざっと巻きつけて完成(ノイズ抑制のおまじない)。(写真 右) ■まとめ  今回、Belden 1874Aで30cmを1本、20cmを1本作り、さらにこれまで使っていたサンワKB-T7の片端だけ「ぐっとすプラグ」に換える形で4.5mを1本、15cmを1本作った。  1874Aの2本は、PCオーディオ関係のNAS-スイッチングハブ間、スイッチングハブ-サーバPC間に使う。KB-T7の2本はPCオーディオ以外で使用する。4.5m以外は、最小限の長さで使うという考え方だ。  「ぐっとすプラグ」は、ハンダづけでも圧着でもない簡易な接続だが、まずは問題なく導通している。ただ、接点復活剤を塗っておいたものの、経年変化の心配は残る。接続のやり直しが効くので、1、2年したら作り直せば良いだろう。作ったことで弱点がわかるのは、自作の利点だ。  専用工具無しで簡単に工作できて、失敗する要素が特段無いのはとても良い。「ぐっとすプラグ」はLANケーブル自作用にお勧めできる。ただし、一般品コネクタに比べて値が張るので、少数自作の場合、という限定付きだが。  かしめ工具を使う一般のコネクターと比べての音質上の優劣については、比較していないので不明である。ノイズを拾いやすいといったことも、特に無さそうだ。いずれにしても、ケーブル線材に比べれば影響は小さいと思うが。  では、ケーブル線材Belden 1874Aの音質はどうか。  これまでのLANケーブルはサンワKB-T7。カテゴリー7ではあるが、オーディオ用の高価なLANケーブルということではない。せめてもの配慮で20~30cmの短いものを使っていた。これと比較して音質向上になったか?  サンワKB-T7をBelden 1874Aに替えての音は、俄然向上したとまでは言えないが、悪くはない。単線で外被も含めて硬いので、音に癖がつくかと懸念したが、大丈夫。数日エージングしたら、しなやかで、艶がある心地よい音になった。  Belden 1874Aは、自作用線材として悪くないと思う。 ■オーディオ用LANケーブルと比較した(補足)  使わずにいるLANケーブルを弟からもらった。エイム電子の「SHIELDIO」NA-1で、0.5mサイズ。SHIELDIOシリーズにはさらに高価なものが並ぶが、NA-1も十分高級なお値段だ。自作ケーブル(Belden 1874A/ぐっとすプラグ)のコストに比べれば約8倍。汎用品でない、ネットワークオーディオ用のLANケーブルを試すのは初めてのこと。  PCオーディオでは、NAS-スイッチングハブ間、スイッチングハブ-サーバPC間の2か所にLANケーブルを使っている。それぞれ0.2m、0.3mの自作ケーブルだ。1か所ずつ交換して比較した。  2か所のどちらを換えても、同方向の音の変化があったが、スイッチングハブ-サーバPC間(正確には、アコースティックリバイブ製LANアイソレータをスイッチングハブに繋げており、それとサーバPCとの間)の方が変化が大きかった。  吹奏楽の音源を聴いて、エイムLANケーブルの方が迫力が増して良い。音量感が大きくなるとともに、Dレンジが広がった感じだ。fレンジも、低域・高域のバランスがおかしくなるようなことは特に無い。  スイッチングハブ-サーバPC間の常用LANケーブルにすることにした。  市販のオーディオ用LANケーブルに低コストの自作LANケーブルが優れば愉快だが、結果はそうはならなかった。  ただ、音の違いは少しで、大差があるわけではない。コスト・パフォーマンス面で、自作のメリットはあると考える。  ところで、今回の比較試聴により、改めてLANケーブルの音質への影響を感じた。LANケーブルやスイッチングハブ、さらにはNASの影響は気になっていたところであり、「やはり」という感じだ。それぞれ、オーディオ用の高価な市販品が出てきているのもむべなるかなである。  PCオーディオで、私がずっと頼りにしてきたノウハウ情報源は、yung氏の「PCオーディオ実験室」サイト、digififan氏の「デジファイのおと」サイトだ。最近、両氏はともに、LANケーブル、スイッチングハブ、NASの影響を避ける試みをしている。yung氏はメモリー再生、digififan氏はUPnPレンダラーを使う方向だ。ネットワークオーディオプレイヤーを使わないPCオーディオでは、こうした根本対策が可能であるのが良い。どちらも私の現状の機材からの変更、使い勝手の変化があるので、敷居が高く、試していないのだが。  今回、とりあえずの対策として、LANケーブル1本の自作からオーディオ用市販品への変更とともに、スイッチングハブを二重にして、ルーターとWindows PCの系統のLANを遠ざけた。今後とも、LAN系の対策は頭に置いておかなくてはならない。