デスクの照明環境 - デスクライト改作とクリップオンライト 2020年9月

■デスク照明への不満  これまで使ったデスクライト。記憶をたどると、中学校・高校は松下電器製の蛍光灯スタンド、大学から社会人初期は白熱電球の山田照明Zライト、しばらく自分のデスクとライトが無い時期があり、その後は現在まで三洋電機製の白熱電球スタンド(途中から電球型LEDに交換)、の三つだ。  三つのデスクライト、思えば少々不満があった。  松下と三洋は、ライトの背が低くて使い勝手が悪かった。光源位置がデスク面から約30cmと低いため、照明範囲が狭いのだ。広く照らそうとシェードの角度を浅くすると、光源が目に入る。また、光源が蛍光灯やLEDのため、何となく快くない。  Zライトは、Z型のアームで光源位置を調整でき、白熱電球で温かい(時に暑苦しい)光色だった。が、アームが回転するスペースが必要で意外に場所をとる。経年劣化でアームが垂れ下がるようになって位置調整もしにくくなり、使うのをやめた。  最近、六十(代後半)の手習いで絵を描き始めた(「美術」にまで至らない「図画工作」です)。LED化した三洋ライトでは用をなさないので、絵のための照明環境を考えることにした。 ■快適なデスク照明の検討  自分が求める条件を考えると、第一は50cm四方(できればそれ以上)が適度な明るさで照らされること。われら高齢者は若年者の約2倍の照度が必要だそうで、確かに、読書にせよ手作業にせよ暗めは見づらい。また、手元だけ明る過ぎる一点集中も困りもので、もっと周りまで一様にほど良く明るいのが快適だ。光源の照度とともにポイントとなるのは光源の位置で、私の座高ではデスク面から40cm程度の高さが適当だ。また、LED素子は光の指向性が強いので、面的に拡散させる何らかの方策が必要だ。背が低く、LED直接の光というデスクライトでは、どうしても手元中心になる。  第二に演色性が良いことだ。絵のためには、色の微妙なニュアンスがわからないのは困る。演色性というのはいま一つわからない概念だが、様々な色の見え方が自然光(太陽光)で見た場合に近いかどうかということのようだ。平均演色評価数(Ra)の値が100に近いほど良いらしい。一般の蛍光灯やLEDはRa70前後で、三洋デスクライトに付け替えたLED電球もそんなところだろう。最近はLEDも演色性が意識されるようになり、Ra90以上、中には95以上のものが開発されているようだ。そのくらいの高演色のものにしたい。  第三は色温度である。色の見え方には色温度(ケルビン値 Kで表される)も関係すると思うが、これと演色性とはまた別ものらしい。例えば、白熱電球は光の波長分布が暖色系にやや偏って色温度が2800Kと低いが、Ra値は満点の100だという。そうはいっても、白熱電球のもとではどの色も黄色みを帯びて、自然光と比べると色のニュアンスは異なると感じるが。光色に視覚が順応して、色の見え方には影響しないということなのだろうか。  色の見え方には、演色性と色温度の両方が関わるように思う。美術館や画廊の展示照明はどうしているか少し調べてみたが、演色性(Ra)は高い方が良いとされるが、色温度については定まった標準が無いようだ。例えば、自然光に近い高い色温度が推奨されるといったことも無い。現場では、むしろ中・低の色温度の照明が多く使われているようだ。  オフィスなどには活動的な気分になる5000K(昼白色)くらいの自然光に近い光が、自宅の居間などには温かみがあってリラックスする2800K(電球色)・3500K(温白色)くらいの光が良いようである。絵のためのデスク照明としては、独断だが、両者の中間の4000Kあたりが自然光との違和感が少なく、温かみも少しあって良いのではないかと思う。展示照明の現状にも重なる。条件の第三は、色温度4000K前後ということになる。  市販のデスクライトを調べてみると、ほとんどがLED光源であり、作りとして長いアームの先に光源が付くもの、そうでないものがある。長いアーム付きのタイプは光源の高さと照明範囲を自由に調整できる点は良いが、Zライトと同様にアームが邪魔になりそうだ。アームが付かないタイプは、子どもの勉強用ということか、一様に背が低い。光源位置が低いため、照明範囲が狭く、照度のむらも出そうだ。  演色性については、高演色を掲げる品があるにはある。山田照明のZ-80PROⅡ(Ra97 5000K)、ホルベイン(絵の具、画材のメーカー)のレンダライト RL-A(Ra94 4000K)などがそれだが、かなり高額だし、アーム付きタイプだ。  色温度は、高めの5000K(昼白色)から6500K(昼光色)くらいの製品が多い。調色機能として色温度を変えることができる品もあるが、演色性との両立が難しいようでRa値は低くなる。  結局、既製品の中にこれぞというものが見当たらない。光源は白熱電球、蛍光灯からLEDに置き換えられたが、デスクライトとしての進化はあまり見られず、昔の電気スタンド時代の弱点がそのまま引き継がれている印象だ。  市販デスクライトをあきらめ、①古いデスクライトの改作、②クリップオン型ライトの購入、という二方面作戦で行くことにした。二つの照明を使い分ける、あるいは併用する。 ■デスクライトの改作  ①の工作だが、三洋デスクライトの上半分、フレキシブルネックからシェードまでを取り外して利用し、台になる下半分を自作する。電気系はスイッチとコードを交換して配線するだけだから、電気工作というより木工工作だ。  改作前のデスクライト 三洋電機 LS-6032(K)   (撮影しておくのを忘れ、写真は「ジモティ」サイトからの引用です。感謝)  改作後のデスクライト(大きく立派になりました)  光源位置を10cm高く、安定のためベースを大きく重く、というのが改作の要点だ。  材料は、ベース部は25mm厚カリン材(吉野町駅近くの米屋材木店で端材を見つけ、継ぎ合わせた)。裏面に鉄厚板の建築金具を付け、ウェイトにした。柱部は5.5mm厚MDF材と2mm厚アクリル板(どちらも手持ちの端材)。電源スイッチはミヤマ製のトグルスイッチDS-122。  写真のとおりの簡単な工作なので細かい説明は省くが、部材をまず作り、順序を考えて塗装、組み立て・接着を少しずつ進め、1週間ほどかけた。素人細工で、エポキシ系接着剤によるイモ継ぎだ。正確で強度ある接着のためには、いっぺんに組み立てず、少しずつ少しずつ。塗装は、油性つや消しニス、黒の水性ペイントを使い、組み立て前に塗っておいた。  光源は、以前のLED電球から高演色LED電球に交換した。パナソニックのプレミアX LDA7WW-D-G/S/Z6 7.4W(60形相当) Ra90 3500K(温白色相当)だ。普通のLED電球より高価だが、2倍程度。   ベース部の裏面(鉄金具は2枚重ねで計約1kg)   柱部の内側(斜めカットの補強桟など、内側はあちこちお粗末) ■クリップオンライトの購入  ②は、クリップオンライト(クリップ型ホルダー、電球ソケット、コードのセット。電球は付属しない)とLED電球を入手した。工作作業は、中間スイッチをコードに付けるだけだ。  デスク左側に本棚があるので、棚板の適当な位置にクリップして使用する。  LED電球はSORAA社のLDR8W-M-E11で、高演色のスポットライトタイプ。7.5W Ra95 4000K 25度配光のハロゲンランプ型。こちらは値が張って5,000円近い。  組み上がったクリップオンライト(シンプルで質実剛健) ■結果  ①改作デスクライトと②クリップオンライトの二つで、デスク照明環境が整った。  ①は、光源が10cm高くなり、60cm四方ほどの広範囲でむらのない適度な明るさになった。三洋ライトから受け継いだ大きな反射傘と60形白熱電球型LEDの組み合わせで、うまく光を拡散してくれる。希望どおりの機能のデスク照明になった。  ②は、デスク面に対してはやや照度不足だが、卓上のイーゼルに光を当てると、ちょうど良い照明範囲でまずまずの明るさだ。シェードが無く、むき出しの電球そのものだが、配光角25度と指向性が狭いので、光源を直視しない限りまぶしさの問題はない。  色温度は、①3500K、②4000Kで数値上は近いのだが、実際の光色は結構違う。①は暖色が強くて白熱電球に近い印象だ。絵のための環境としては、4000Kの②がより白色、ニュートラルな感じで好ましい。絵以外の作業では①、②どちらでも良いが、二つを併用すると違和感がある。4000Kの高演色LED電球があれば光色が揃って良いのだが。  演色性については、①Ra90、②Ra95だが、①の色の見え方が明らかに劣るということはない。点灯すると、まずは色温度による光色の違いの方が目につく。しばらくするとその照明の光色に目が順応するが、Ra90と95の違いとなるとよくわからないのだ。