歩けるロードバイク用シューズ探し - シマノRP5 2016年12月

 自転車のシューズを買い替えた。これまでのシューズのソールが擦り減り、接着が剥がれて、いよいよ限界が来た。何せ10年以上使ってきたのだ。  シューズの買い替えなど、取るに足らない個人の事柄なのだが、私と同様、「歩ける」と「ロードバイク用」の両立を求める人はいると思うので、メモにしておくことにした。 ■ペダルはSPDか、SPD-SLか  所有の自転車はクロスバイクとロードバイクの2台だが、ペダルはずっとSPDだ。SPDはシマノが最初に開発したビンディングで、私が導入した20年前の当時はロードバイクもマウンテンバイクもこれだった。その後、後発のSPD-SLがロード用として出て、現在のSPDは、マウンテンバイク用・街乗り用・初心者用といった位置づけになっているようだ。  SPD-SLについては、使った経験が無いので明言できないが、形状からして広い面で踏むことになり、ぺダリングにはやはりこちらが優位なのだろう。プラスチックのクリートで、軽量だが消耗は早いらしい。最大の弱点は歩きにくさだ。自転車の走りに特化していて、自転車を降りて歩くことは考慮外だ。  私がレース志向の硬派サイクリストならば、自転車の走りを何より優先し、ビンディングは迷わずSPD-SLだが、「歩ける」ことを考えるとSPDに気持ちが傾くことになる。  私の乗り方は、近所の買い物・街乗り、フィットネス程度のショートライド、たまにロングライドのツーリング・輪行といったものだ。買い物・街乗りではもちろん、ツーリング・輪行でも、ちょっと歩いて食事や観光などするのが常だ。「歩ける」ことを無視できない。所有のクロスバイクとロードバイクのペダルが不統一になるのも困る。やはりSPDだろう。 ■シューズはRT5か、RP5か  これまでのシューズは、シマノのSH-T092。SPDビンディング専用のツーリング向けだった。シマノのサイズ46(29.2cm)でちょうど合うことは実証済みだ。次も、シマノ製のシューズが候補になる。  ツーリング向けのSPD専用現行モデルは、RT5(SH-RT500)だ。ただ、RT5はこれまでのSH-T092と同様にラバーソールである。歩きやすい反面、ペダリングの力が逃げ気味という欠点も同じくありそうだ。ロードバイク用シューズとしての性能は、いまひとつかもしれない。  試し履きしてみて、私の足にはやや足囲が緩めで、ぴったりフィットしないのも気になる。3本のベルトで締めるが、一番先のベルトは甲革が大きなシワになり、ぴったりに締まらない。私は甲が低めで、普段の靴も狭い足囲のものが合うので、RT5の方こそが標準的な足囲なのだろうけれど。  RT5は、これまでのSH-T092直系のツーリング向けシューズで、長所、短所含めてよく似ている。短所も決定的ではなく、ダメなシューズということではない。まあ、自分の今の乗り方からすると、一番合っているシューズかもしれない。    ・シマノ RT5  もう少し視野を広げると、SPD、SPD-SL兼用のモデルとして、ロングライド、レクリエーションライダー向けというRP5(SH-RP500)がある。こちらのソールは曲がらないほど硬い。ペダリングの力が逃げず、また踏面が小さいSPDクリートの弱点をカバーしてくれそうだ。ロードバイク用シューズとしてはこちらが上だろう。しかし、その分歩きにくいことになる。  試し履きで、フィット感が良い。RT5とは木型が異なるのかもしれない。RP5の方が全体にやや細身だ。余分なブカブカが無くてぴったりし、しかもどこもあたる箇所が無い。つま先の天井だけはやや高めに感じるが、インソールで工夫できるだろう。  この、幅広め、狭めの違いも、シマノ流のツーリング用、ロード用の性格付けなのかもしれない。自分の足にはRT5よりRP5がフィットする。    ・シマノ RP5  「歩ける」はRT5、「ロードバイク用」はRP5、一長一短だ。「歩ける」と「ロードバイク用」を高次元でバランスしたものが理想だが、結局、シマノ製シューズにはそれが無いのだ。商品カテゴリーとして、ロードバイクでのブルベ、ロングライド向けSPD専用シューズ(SPD-SLとの兼用でなく)を作れば、需要はありそうに思うが。  ずいぶん迷ったが、結局、「ロードバイク用」としての走りの機能性を優先し、自分の足によりフィットすることもあってRP5を選択し、購入した。NHK番組「にっぽん縦断 こころ旅」の火野正平さんの乗り方より、ほんのちょっとだがしっかりロードバイクに乗りたい、といったところか(火野さんは、ビンディングを使っていないようだ)。 ■クリートの取り付け位置  購入したRP5には、アダプター SM-SH40を介してSPDクリートを取り付けた。RP5には直接取り付けることもできるが、平らな底面にSPDクリートが出っ張る形になり、歩きにくいを通り越して歩けないだろう。  ちなみにSPDクリートは、マルチモードのSM-SH56だ。シングルモードのSM-SH51の解除が踵を外側に捻る方向だけなのに対して、こちらは多方向に解除できるのがよろしく、これまでずっと使ってきた。さらにペダルの調節ねじで最弱の固定にしているが、想定外のタイミングで外れるような経験は無かった。  クリートの位置決めは、ペダリングの効率に関係し、悪くすると足の故障にもつながるので重要だが、なかなか微妙で難しいものだ。誰もが迷っていると思う。  改めて情報を集めると、よく言われているのは次の二つの説だ。   A「母指球がペダルシャフトのほぼ真上になるようにするのが基本である」   B「母指球と子指球を結んだ線上にペダルシャフトがくるようにする」  かつてはA説が有力だったと記憶する。この頃、もう少し深く(踵寄りの位置に)クリートを取り付けるのが流行ってきているらしい。B説なら数mm踵寄りになる。  試行錯誤していくほかないので、とりあえずはB説に従うことにした。  母指球(親指の中足指節関節)と子指球(小指の中足指節関節)の側面の位置を靴の上から指で探り、靴に貼った紙テープにマーキング。これをタコ糸で結んで、クリートの中心位置にする。といっても、感覚なので正確に一点を求めるのは難しい。試行錯誤の出発点に過ぎないので、5mmやそこらの誤差は気にしない。  クリートの前後方向の位置はそれで決まる。左右方向や振り角は、アダプターの取り付け穴、中心線マークを基準に、まずは中立の位置にした。  結果として、これまでのシューズのクリート位置と比べ、そう違わない位置だ。  これで乗ってみて、前後、左右、振り角を微調整していけば良い。  乗ってみると、このままでまずまず良い感じだ。  意図したB説の位置にほぼなっているようだ。ペダリングにうまく力が入り、足の捩じれなども特段なく、ちょうど良い感じだ。靴全体が足にフィットしている点、ソールが硬い点で、これまでのシューズより数段具合が良い。  強いて言えば、踏み込む時に右足の甲が外側に傾く不安定さが少々ある。これは、これまでのシューズで強く現れていた現象だ。それに比べれば改善されているが、傾かず水平で安定してくれると一層良い。これはインソールの調整になろうか。  クリート位置が一発で決まるとは拍子抜けだが、これでしばらく様子を見て、微調整することにする。 ■まとめ  SPDを付けたRP5は、硬いソールのおかげで、土踏まずや踵も含めた足の裏全体でペダルを踏む感じになり、なかなか良い。SPDの、踏面が小さい欠点が解消されている。  歩きについては、アダプターを付けてだがよちよちと歩ける程度で、50mでも歩きたくない。輪行で、駅の階段を自転車を担いで昇降するのは辛いだろう。  メリット、デメリット両方あるが、どちらも購入前に予想していたところであり、トータルにはRT5を選んで良かったと考えている。  なお、歩きの問題については、これまでのシューズを修理して温存し、輪行などの歩くことが多そうな場合にもうしばらく使うことにした。  硬いソールとSPDの組み合わせは、ロードバイクのロングライド用として見直されて良いと思う。硬いソールなら、SPDのポテンシャルは決して低くなく、十分ロードバイクに対応できる。  硬いソールと歩きは両立しにくいとは思うが、ソールの形状などの工夫で、アダプター付RP5より歩きやすくすることは可能ではないか。シマノには、硬いソールでなおかつ歩きに配慮したSPD専用シューズをぜひ検討してほしい。「歩けるロードバイク用シューズ」への需要はきっとあるはずと思う。