自転車の事故対策 - 危険を減らすj走り方 2016年7月

■自転車の危険性  「自転車に乗るのは健康に良いかもしれないけど、交通事故の危険を考えると尻込みしてしまう」という人は少なくないだろう。  その心配ももっともなことで、交通事故の可能性は確かにゼロでないし、ひとたび事故となれば軽い怪我では済まないだろう。「大丈夫、事故なんてめったに無いから」などと言うのは無責任というものだ。  「平成28年度交通安全白書」に記載されている平成27年中の交通事故統計を見ると、全国の「自転車乗車中」の交通事故死者は572人(13.9%)、負傷者は97,233人(14.6%)と、かなり多くの方が事故に遭っている。「原付乗車中」「自動二輪車乗車中」に比べても多いのが実態だ。

状態別交通事故死者数、負傷者数(平成27年) 平成28年度交通安全白書
       自動車乗車中 自動二輪車乗車中 原付乗車中 自転車乗車中 歩行中 その他
死者数 1,322人 32.1%  447人 10.9%  230人 5.6%  572人 13.9% 1,534人 37.3% 12人 0.3% 4,117人 100.0%
負傷者数 442,319人 66.4% 33,046人 5.0% 37,210人 5.6% 97,233人 14.6% 55,428人 8.3% 787人 0.1% 666,023人 100.0%

 また自転車は、被害側だけでなく、歩行者に対しては加害側にもなる。例えば、歩道で乱暴な走行をし、歩行者にぶつかって転倒させれば、死亡事故にもなり得るのだ。  では、そんな「危険な」自転車に、私はどう考えて乗っているのか。  私は、多くの自転車乗りと多分同じで、交通事故はあり得るがその可能性をできるだけ低めよう、と考えながら乗っている。危険をゼロにできないにしても減らす走り方はあるわけで、全くのもらい事故はともかく、自分が原因の事故はほぼ無くすことができると考えている。  ということで、この項では、自転車の交通事故対策についてどうしているか、自分が実行していることを記してみることにした。特別なこと、目新しいことは無いが、「自転車を始めてみようかな」という方のご参考になれば幸いだ。  そうそう、話が脇にそれるが、「そもそも、自転車って健康に良いっていうけど、排気ガスとか日焼けとか、かえって身体に悪いんじゃないの?」と、健康面の危険性を言う人もある。これまた一理ある。  スポーツとしての自転車は、全身の有酸素運動、一部無酸素運動で、体脂肪の燃焼、心肺機能の強化、筋力の向上、免疫力の向上、ストレスの解消など、さまざまな良い効果があると言われている。その一方、排気ガス・PM2.5・光化学スモッグなど大気汚染の影響があり得る。紫外線は活性酸素を生成させるので、単に皮膚への影響にとどまらず、体内あちこちに悪影響があるということも言われる。  単純化すると、プラス効果で当面の健康をもたらすが、マイナス効果で長期的、根源的に不健康をもたらす、そんな図式か。プラス、マイナスで、結局どうなのか? ただ、人間の身体は複雑な系であり、様々な要素が作用して総合するのだろうから、単純化しすぎの理解は違っているのだろう。  ここでも、反論できないし、しないが、私個人としては当面の元気向上を重視して自転車に乗ることを選びたい。紫外線対策をせめてしながら。 ■自転車乗りには2種類ある  公道を走る自転車、その走り方にもいろいろある。  スポーツとしての自転車は、普及してきているがまだまだ少数派だ。  やはり多いのは、買い物のママチャリ、幼児を乗せた自転車、最寄り駅までの通勤・通学自転車など、日常生活で使われている自転車だろう。その全てを一緒にするのは無理がある。  少々乱暴かもしれないが、私は自転車を次の2種類に分けて考えたらどうかと思っている。  「乗り手がヘルメットをかぶった自転車」と「かぶっていない自転車」だ。  これは、外観ですぐ判別できる区分である。ロードバイクに乗っていても、ヘルメット無しなら後者だ。  自転車の場合、ヘルメットの装着は交通法規で義務づけられているわけではなく、各自の任意に任されている。ヘルメットをかぶるかぶらないは、交通事故の危険を意識しているか否か、意識の違いをそのまま反映しているのだ。  さらに言うと、ヘルメットの有無は、自転車と乗り手の様々な側面と相関性があるように思う。  スポーツ・趣味目的の長距離走行か、生活・実用目的のご近所走行か。  主に車道を走るか、歩道を走るか。  余裕を持った安定した走りか、フラフラと不安定な走りか。  交通ルールを知った走りか、知らない走りか。  タイヤ空気圧、チェーンなど自転車の整備がされているか、いないか。  違法駐輪・放置をしないか、してしまうか。 などなど。  ヘルメットの有無とぴったり一致するわけではないが、強い相関関係が感じ られる。  そして、交通事故とも相関性があるのではないか。  先に見た交通事故の統計は「自転車乗車中」という区分であり、それ以上に自転車を細かく分けた分析は無いのだが、もしヘルメットの有無別に分けた統計があれば、事故の多数を占めるのは「ヘルメット無し」群だろうと思う。  まあ、ヘルメット無しで走る自転車が圧倒的多数なのだから、事故件数が多いのも論理的に当然のことだが。ただ、乗り手人数あたりの事故発生率も、仮にそういう統計が存在するならば、「ヘルメット無し」群の方がずっと高いだろうと推測する。  世の多くのヘルメット無し自転車を見る限り、危険を減らさず増やすような走りが多いのだから。  私自身は、主にスポーツとして自転車に乗っており、朝の自転車散歩、時たまの長距離ツーリングは、ヘルメットをかぶっている。そして、「俺たちゃ、ヘルメット無しの連中とは違うぜ。自転車といっても別ものなのだから、一緒にされたくないよ」などと思ったりしている。  かくいう私も、近所のスーパーや図書館などに行くときは、ヘルメット無しなのだが。  そんな私は、これから記すような注意をしながら走っている。また、ヘルメット無しの自転車はどうしたら良いのか、自分なりの考えを述べたい。 ■他の車両から見ておかしな走りをしない  私の走り方の大原則は簡単で、「他の車両が自転車に期待する走り方をする」というものだ。  車やバイクのドライバーが見ていて、自転車が突然に想定外の動作、ルール破りの動作、周囲の交通の流れに合わない無理な動作、思いもかけない不可解な動作をすれば、驚かせて、危険な対応を呼ぶことになる。  自転車なら普通はこうするだろう、こうしてほしいと期待する動作、予測内の動作を的確にしていれば、問題は起きにくい。  自転車は車に比べて、物理的にも、走行台数でも、まるで敵わない存在なのだから、我を張っても始まらない。相手に合わせるのが賢明というものだ。  この大原則では、例えば、一時停止して左右確認すべきところではする、他の車両に譲るべきところでは譲る、待つべき時には待つ、合図すべき時にはする、といった走り方になる。  赤信号であっても自転車ならば問題なく左折できてしまう、といった場面があるが、あえてそれをせず信号を守る。合図無しで随意に進路変更して歩道から車道に下りたり、また歩道に乗り上げたり、といったことをしない。とび出しやすり抜け、路上での競争といった傍若無人な走りもしない。要するに、他の車両が顔をしかめるようなことをしない、一個の車両としてふるまう、ということだ。  自転車に対する「他の車両の期待」というものも、地域の道路事情によって、厳しく容赦無いものだったり、多少優しく理解があったり、土地柄があるものだ。  私の住む横浜市、神奈川県は、交通量の多さに比べて道路整備状況がよろしくない。古くからの幹線である県道クラスの道路幅員が狭く混雑するし、新たな都市計画道路の整備は進まない。他県と比べて基本的に自転車が走りにくい環境であるし、自転車に対する「期待」もシビアかもしれない。  私の経験では、群馬県ははるかに走りやすかった。国道、県道の交通量がずっと少なく、車のドライバーも自転車を追い抜く際に多くが速度を緩めてくれるなど、気持ちにゆとりがあるように感じた。  横浜、神奈川の自転車乗りとしては、道路整備の進捗に期待するばかりである。 ■交通ルールを守った走りをする  「他の車両の期待」の大原則に従うと、自動的に、次の原則「自転車に課せられた交通ルールは基本的に守る」もまた導かれる。例えば、車道の左端を走る、信号に従う、といったことで、まあ当たり前のことなのだが。  では、「車道の左端」とは具体的にどこを走っているか。多くの場合私は、車道左端の白実線の少し右(目安としては15cmほど右)の車線内を走っている。  この白実線の左外側は、歩道の無い道路では路側帯、歩道のある道路では路肩となるが、横浜市、神奈川県の道路事情では、この左外側部分の幅に余裕が無く、L形側溝のみという道路が多い。  自転車等の軽車両は、左外側部分の走行が許されている。あるいは自動車のドライバーの中には、こここそが自転車の走行すべき所と誤解している人もあるかもしれない。しかし、L形側溝は外側に向けて傾斜がついており、排水口の鉄格子(グレーチング)がある。道路舗装との継ぎ目が数ミリの段差になっていたりもする。ここを走行すると、これらにハンドルを取られる恐れがあるし、もはや左側の緊急避難の余地を失うことにもなる。L形側溝は、自転車走行レーンの代わりにはならないのだ。  交通ルールは守るべきであり、そうしているが、道路交通法を教条主義的に守ることで、かえって安全確保が難しくなることもある。そうした場合は、「他の車両の期待」の大原則に戻って適切な行動になるよう、適宜判断している。  例えば、道路左端に駐停車している車があったら、左端走行にこだわって車の左をすり抜けるより、右側に回避して追い越すのがずっと安全だろう。  また、道路の左側車線が左折専用ということがある。直進したい場合は右側車線(の左端)に車線変更しなければ、立往生してしまうことになる。  少し困るのは、交差点の右折について二段階右折が義務づけられていることだ。全ての右折に義務づけているのはあまりに形式的だ。私としては、交差点の大きさ、交通量の状況などケースバイケースで、二段階右折するか、右折車線に車線変更するか、判断している。安全のためには、車の交通の流れに乗った自然な動きにすることも大事だと思う。  こうした判断について、これまでのところ取り締まりを受けたことはない。しかしながら、あくまで自己流の判断だ。仮に事故が発生すれば、交通法規違反を咎められることだろう。その覚悟を持ちつつ、そうは言ってもこの場面ではこれがベターだ、という判断を自己責任で行っている。他人様にお勧めするものではない。  歩道通行については、歩道はなるべく走らないを基本にしている。車道の交通量、交通状況から安全上必要と判断した時は、例外的に歩道を走らせてもらう。例えば、長い上り坂、交通量が多く車道幅員に余裕が無い道路、といった場合だ。  歩道を自転車が通行できる条件は、道路交通法、同法施行令で限定列挙されている。「自転車通行可」の標識等がある場合、13歳未満もしくは70歳以上、または身体の障害を有する人の場合、安全確保のためやむを得ないと認められる場合、だけだ。いずれの場合でも、歩道を走るときは歩行者優先で、車道寄りを徐行しなければいけない、と定められている。  私の場合は「安全確保のため」なのだが、客観的に「やむを得ないと認められるとき」にあたるかはわからない。徐行は守っている。 ■もらい事故を避ける走りをする  自分が交通ルールを守っていても、起きるかもしれないもらい事故。その第一は、車に追い抜かれる際の接触だ。  走行速度の違いがあるので、自転車が車に追い抜かれるのはしょっちゅうのことだが、一方的に抜かれるばかりで、自転車側にできる対応が何も無い。車側にはあるいは、路側帯・路肩にもっと寄ってくれよ、という期待があるかもしれない。路側帯・路肩に余裕があるならそうするのだが、上述のようにL形側溝だけという現状ではままならないのだ。  安全無事に抜いてほしいという願いは、全ての自転車乗りに共通だろう。多くの車の中には、運転技量未熟なのか、車幅感覚が無いのか、逆に車幅感覚が特段に発達しているのか、故意の嫌がらせなのか、すれすれのところを追い抜いていく車がある。嫌なものだ。  幸い、これまで25年ほど自転車に乗ってきて、実際に接触された事故経験は一度も無いのだが、だからといって大丈夫というものではない。ひとたび接触されれば、自転車は転倒して重大事故になりかねないのだ。  自転車側ができる対策といっても無いのだが、大型車の交通量が多い道路や多い時間帯を避けること、目立つような色のウェア・ヘルメットにすること、車道の左端をふらつかずに安定して走行すること、そんなことを実行している。  そんな注意をしても怖いと思っているのは、中型トラックの張り出した大きなサイドミラーだ。大型トラックのサイドミラーは自転車の乗り手の頭より上に位置するが、中型の場合はちょうど頭や肩の高さなのだ。ヒンジで折れ曲がる構造らしいが、それでも接触すれば相当な衝撃だろう。ドライバーの車幅感覚の正常を祈るのみだ。  自転車にとっての理想の道路は、大型トレーラーに追い抜かれても余裕の広幅員、交通量はまるで少なく、たまに通る車は紳士・淑女の運転、そんな道路だが、なかなか無いものだ。  第二に考えられるもらい事故は、歩行者や他の車両の飛び出しだ。曲がり角からの飛び出しもあるが、歩行者の思いがけない所での道路横断、他の自転車の右側逆走、信号無視など、いろいろとあり得る。車だって、とび出し等のおかしな運転がある。対歩行者、自転車の場合は、死傷事故の加害者になる可能性もある。  対策としては、とび出しの可能性を想定して、前方、時に後方に注意を払い、左右確認をしっかりすることだろうか。特に危ない場所、危ない時間帯というのはあるものだから、それを避けることも必要だ。  例えば、朝7時頃からの駅周辺道路は、通勤通学に急ぐ自転車やスクーターが集中し、われ先に駐輪場に向かっている。無論、歩行者や、家族を駅に送る乗用車も増える。かげからのとび出し、待つべきを待たずのとび出し、信号無視、道路横断、突然の車線変更、無理な追い越し、逆走、何でもありだ。自分が同じことをしないのは言うまでもない。ここは、いちいち腹を立てても仕方ないので、そうしたものだと観念して、心静かに相手の動きを予測して対応することだ。より良いのは、そんな場所、時間帯に行かないことだ。  第三に考えられるもらい事故は、相手自動車側が、こちら自転車側を認知しないまま走行した結果・・・というケースだ。自転車が死角に居て気づかないというだけでなく、さまざまな場合があり得る。自転車が車の前方なら、いわば前方不注意なのだけれど、何かのかげになり見えなかった場合、ぼんやりして見過ごした場合、夕暮れどき、居眠り、酒酔いなど様々あるだろう。酒酔いは論外だが、注意だ、集中だといっても、途切れる瞬間があるのが人間だ。これは対策が難しい。この危険は、自転車だけのことでなく他の車両に乗っている場合も、歩行中でも同様であるが。  自転車としては、できるだけ認知されるようにすることが重要である。やはり、ウェアやヘルメットは派手な目立つ色が良い。右左折・進路変更・停止などの手信号、目を見ての会釈などのコミュニケーションをし、自分をアピールすることも必要だ。常に、相手に認知されてないかもしれない、と意識しておくことだ。  もちろん、「車の死角に入らない」ことは当然の原則だ。車の後方、斜め後方、側面にいれば、ドライバーに認知されない可能性がどうしても大きくなる。普通の交通の流れならば、自転車は車と並走する速度を保てないから、死角でずっと走ることは無い。 渋滞で速度が遅い場合、交差点で停車している場合も、極力、車の死角に入るべきでない。存在をアピールする位置に居ることだ。左側のすり抜けなどすべきではない。  私自身、認知されないことによる事故に遭った経験がある。もう20年近く昔、1997年のことで、左折巻き込み事故だった。 ■私の経験した事故  私はロードバイクで、藤沢市の市街地の片側1車線道路を走っていた。前方に見える交差点は小さなT字交差点(直進と左折)であり、直進して通過するつもりで、車道左端を15~20km/h程度で走っていた。  交差点の直前約10mの地点で、後方から乗用車が追いつき、左に幅寄せしてきた。私は、できるだけ左に寄って避けながらブレーキをかけた。乗用車は減速しながら私の右側を追い抜き、すぐに進路を塞ぐ形で左折した。自転車の私は、さらに急ブレーキをかけ停止寸前になったが停まり切れず、乗用車の側面後ろ三分の一あたりに自転車の前輪タイヤが接触した。私の身体の接触、自転車の車体の接触は無かったが、前輪を強烈に振られる形になり、自転車と私は路上に横転した。  相手方は若い女性で、免許を取ってさほど経っていなかったようだ。教習所で指導される、左折の前に道路左端に寄せる動作をしたのだと思う。  そもそもこの左寄せという動作は、道路交通法第34条第1項で、左折前にあらかじめできる限り道路の左側端に寄り、徐行しなければならない、と定められている。これは二輪車や自転車が左側に入ることを防止して巻き込み事故を予防することが狙いのようだ。そのためには、交差点のだいぶ前からぴったり寄せなければ意味が無い。一般に、教習所は左折の約30m前までに左端から1m以内に寄せるよう指導しているようだ。  だが、この左寄せの趣旨はどれだけ伝わっているだろうか。30m前、1m以内をそのとおりに実行するドライバーはまれだ。まあ自転車の立場から見ても、前方を走る車が左折の方向指示を出していれば、その車両に追い付き左側にわざわざ突っ込んで行くことは無いわけで、左寄せはいささか形式主義では、と私も思う。左寄せしていようがいまいが、自転車としては、そもそも車両の左側に入って行かない走行が基本である。  私の事故の相手方乗用車は、約1m以内の左寄せを実行したが、タイミングは交差点の手前30mよりずっと遅れ、手前10mほどの地点で寄せた。自転車の私を追い抜きながらであり、本来の狙いと逆に自転車を左側に入れてしまったのだ。この動作の遅れがまず問題だ。 (念のためだが、事実関係は上述のとおりだ。先を走る乗用車が左寄せ動作を始める直前に、左後方の死角にいた自転車の私が追い付いて自ら乗用車の左側に入った、とかではありません。)  さらに乗用車の問題は、自転車で左端を走っている私に追い付き、追い抜きながら、まるで私がいないかのように機械的に左寄せをしつつ減速し、左折に入ったことだ。追い付くまでは、ずっと自転車の私が見えていたはずなのだが、前方不注意なのか、ぼんやりしていたのか私の存在をちゃんと認知していなかった印象である。もし気づいていたなら、当然、左寄せ動作に入らず、もっと減速して徐行し、私を先に行かせてやり過ごすなどしたはずだ。見ていても見過ごす、認知していない、ということが時にあるのだろう。  あるいは、よほど相対速度の感覚が無く、この交差点直前のタイミングでも、問題なく自転車を追い抜いて左折できる、と思ったか。そのあたりは不明だ。  幸い、身体は擦り傷、打ち身程度で軽傷だった。ヘルメットの頭を道路で打ったが、中身は守られた。  事故の直後、転んだだけで大したことないと思い、相手方にもその場でそう言って、事実関係の相互確認をきちんとしなかった。連絡先だけは書いてもらったが、警察への事故届もしなかった。  しかし、自転車はフレーム変形、前・後輪変形など損傷していたことがわかり、その後半年、相手方の保険会社と交渉するはめになった。事後だが、警察に届け出た。  事故の時は、自分も相手方も気が動転しているし、おおごとにしたくない心理も働くが、だからこそ、その場で警察に連絡して指示をしてもらった方が良いのだ。  事故後は、サドルバッグにメモと小鉛筆を入れている。メモは次のような項目だ。   ・自分の住所・氏名・生年月日・血液型   ・健康保険の種類・番号   ・自転車保険の会社名・番号・保険期間・事故時連絡先   ・事故の相手方の氏名・住所・電話・免許証番号・自動車ナンバー(を書く空欄) ■ヘルメット無しの自転車について考えること  ヘルメット無しの自転車も、ここに書いたように交通ルールを守り、周囲に注意を払いながら走るべきであり、そうしてほしいと思っている。しかしながら、現状は、私個人が願ってどうこうなるといった状態では全く無い。  歩道を徐行せずに走ったり、右側通行をしたり、交通ルール無視の走りが横行している。そもそも、多くの乗り手は交通法規を知らないままなのだろう。無法状態と言うと大げさだが、自転車はどう走るべきか、どう走らせるべきか、市民の間にコンセンサスが無い状態だ。  例えば、自転車は軽車両で左側通行だ、ということを意識している人が一体どのくらいいるだろう。わがカミさんは、「人は右、車は左」だけど自転車は「人」だから、と冗談半分に?申していた。そのように思って右側通行の人は、少なくないかもしれない。  歩道走行についても、自転車は「人」だから歩道があればそこを走るのが当然、という解釈かもしれない。とんでもない誤解だ。  歩道走行があくまで例外であること、走行する場合も徐行すべきことを分かっている人が一体どれだけいるだろうか。歩道をスピードを落とさずに走り、背後から歩行者を追い抜いて行く輩があまりに多い。上述のように、午前7時頃からの駅周辺の状況も全くひどいものだ。加害者になる危険の意識が無さ過ぎだ。  ただ、現状の交通環境では、車道は危険なので怖くて走れない、という人々に車道走行を無理強いすることもできにくい。  自転車悪者論も出て、バスなどの公共交通にシフトさせるべきといった議論もある。が、買物や通勤通学などの自転車は、重いものや幼児を載せて楽に走れる、待たずに早く目的地まで行ける、高齢者も子どもも乗ることができる、など相応に合理性があるから使われているのだ。  自転車を邪魔もの扱いしても問題は解決しない。都市内の交通手段の一つとして認め、しかるべく位置づけるべきだ。交通管理者(都道府県警察の交通部門)、道路管理者(国・地方公共団体の道路部門)がよく検討、協議して、走らせ方、走り方のコンセンサスを市民の中に作っていくべき、と私は思う。  自転車レーンを主だった道路全てに設置するというのも、横浜市、神奈川県の道路事情 では大変難しく、現実的でないだろう。当面の実行可能解を検討するほかない。  仮に車道を走らせるということなら、例えば、駅・商店街周辺ゾーンを設け、車の制限速度を厳に30km/h以下に制限して、自転車優先を原則にして、車道で安全に共存できるようにしたらどうか。そうでもしなければ、自転車は車道に降りないだろう。  逆に、お年寄りや児童の自転車だけでなく、買い物自転車、幼児を乗せた自転車も車道はとても無理だから歩道走行を認める、という現状肯定型でいくなら、歩行者優先の原則を徹底するため、徐行しない自転車を厳格に取り締まったらどうか。平成27年6月から「自転車運転者講習制度」というものができて、取り締りの手段はできている。  歩道での乱暴な自転車走行は、マナーやエチケットではなく、明白な交通法規違反の問題なのだ。交通安全運動などの啓発だけでは解決しない。当分の間、厳しい取り締りを行って、乗り手の意識変革を求め、社会全体のコンセンサスを作り出すべきと考える。 ■自転車保険  交通事故対策そのものではないのだが、事故に遭ってから、保険に入るようになった。自分の死亡・高度障害の場合、賠償責任発生の場合に対しての保険だ。自分が原因(の一部)となっての事故の可能性に備える必要がある。  20年ほど前だが、何社か自転車総合保険と呼ぶ制度があった。期間3年で保険料は車に比べればずっと安かった。その後下火になり、ついに自転車総合保険は無くなってしまった。このところは、一般的な傷害総合保険を組んでもらっていた。  児童の自転車が歩道上で歩行者に衝突して死亡させた事故で、1億円近い賠償を命じる判決が2013年に出て、加害者としての自転車事故について、一般の関心が高まった。このため、急に自転車保険が復活している。自治体や外郭団体が自転車保険制度を創設するといったことも出てきている。保険会社と提携しているのだが。  いずれにしても、自転車保険に入ることで、自転車の走り方、交通ルールへの関心も高まるだろう。良いことと思う。  私の保険も近く保険期間が切れるので、今年から始まった横浜市交通安全協会の「ハマの自転車保険」というものに入ってみようと思っている。  最も保険料が高いプランCで、賠償責任1億円、本人死亡・後遺障害保険金1千万円、入院保険金日額2千円。自分の自転車の損傷に対する補償が無いのが残念だが、家族分も込みで、保険料は年間掛け金3千円とお安い。これまでの傷害総合保険よりずっと有利なのはありがたい。