前橋・富岡・法師温泉 ― 春の群馬輪行 2016年3月20日~23日
●テーマ 出身県ながら不案内な群馬を、自転車で3泊4日、のんびり巡る。 ●行き先 当初構想は、世界文化遺産になった富岡製糸場、祖母方のルーツである前橋市、草津と並んで群馬を代表する温泉伊香保の3か所だった。 結果としては、前橋高崎市境にある上野国分寺跡、小幡藩の町並みが残る甘楽町小幡の2か所を加えた。また、山奥の秘湯、法師温泉が予約できたので、伊香保温泉を取りやめてこちらに輪行することにした。 ●ルートその1 JR高崎線神保原駅~前橋市~上野国分寺跡~甘楽町小幡~富岡市~安中市~JR信越線安中駅 ルートの詳細は http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=b27998c2dcd556232ad4540cf7c73e0d ●ルートその1、その2の間 鉄道を使って輪行。 ●ルートその2 JR上越線後閑駅~法師温泉~JR上越新幹線上毛高原駅 ルートの詳細は http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=0dc1407466e1abe44ce984c4ef1eed0d ●第1日 3月20日(日・春分の日) JR高崎線で輪行し、神保原駅(埼玉県児玉郡上里町)下車。自転車を組み立て、10時30分出発。 国道17号を走り出すと、すぐに県境。烏川沿いの自転車道に入る。この日は風が強く、堤防の上は横風、向かい風に翻弄される。ゆっくり走るほかない。菜の花が土手のあちこちに見られ、風さえ無ければうららかな春だ。 ただ、この季節、すぐに花粉症の鼻水が・・・。持ってきたマスクは、眼鏡が曇って使えない。 烏川堤防の自転車道 さらに井野川、利根川と移って、川沿いの自転車道で前橋まで行くことができた。県庁近くの群馬大橋で自転車道を降り、国道17号で前橋市の中心部に入った。12時30分。 ちなみに、この自転車道に限らず、群馬県では自転車道と、車道・歩道の自転車レーンがよく整備されており、意識してネットワーク化しているようで、自転車で走るのが楽だ。これは大したものだ。中高生の自転車通学、買物自転車が多く、安全を確保する必要がある、ということだろうか。 前橋市内の幹線道路は幅員が広く、広い歩道の中に自転車レーンを設けている。歩道の広さに対して歩行者の通行量が少ないのも有利に働き、走っていてあぶない思いをすることがなかった。 車道両脇の白線(路側帯)の外側を1.5mくらい取っている道路もある。買物自転車より速く走るスポーツ自転車にとってはこれがベストだ。歩道の自転車レーンは徐行することになるので。 昼食後、前橋駅近くの中心部をあちこちまわった。明治時代、祖母の実家があった旧相生町の通りを眺め、隆興寺で先祖の墓参りをすることができた。 旧相生町の通り(表町1丁目交差点西側の通り) 隆興寺の山門 その後は、群大病院前を通り、敷島公園へ。ここにあるグラウンドは中学生の頃、陸上競技の県大会で来たところで懐かしい。近くの喫茶店で休んだ後、この県の大きな書店、煥乎堂に寄って、17時頃、宿泊する前橋駅前のコンフォートホテルに入った。 ビジネスホテルだが、すぐ近くに「天然温泉ゆーゆ」がある。混んでいたが温泉に浸かって身体を休めることができた。夕食は、近くの「炭火焼ワインバルLom」なるところでとった。グラスワインは良かったが、料理の味付けが濃く、塩辛いのが残念。 この日の走行距離約38km。 ●第2日 3月21日(月・振替休日) 朝6時に起床、睡眠はちょっと浅い。筋肉の痛みは無いが、3年前に捻挫した右足の甲がうずく。少し長い運動で痛みが出るのだ。ホテルの朝食が6時半からなのでありがたい。 食事後の時間をおいて、7時50分にホテル発。 上野国分寺跡は、高崎市東国分町・引間町と前橋市元総社町をまたぐ所にある。ホテルからは30分強で行ける距離のはずだが、少し迷って9時前に到着。持って行った地図が10万分の1のドライブマップのコピーなので、細かいところがわからず、迷うことが何度かあった。観光地化していないので、案内標識も最小限だ。iPad miniを持って行ったので、現在位置の確認に使えば良かったのに。 国分寺跡は、当時の敷地を確保し、発掘調査をして七重塔、講堂の基壇を復元している。天平時代、8世紀といういにしえの建立である。周辺の地名にも、国分町、国府小学校など、名残がある。職員の方がガイダンス施設を時間前に開けてくれ、丁寧に説明してくれたので、十分に堪能できた。10時少し前に出発。 上野国分寺の敷地 かなり広い 七重塔の復元された基壇 前方は講堂の基壇 予定より遅くなったので、県道10号を一路南下し、甘楽町小幡に向かう。天気も穏やか、風も弱く、少々のアップダウンはあるが、快適な走行ができた。写真の道路は自転車レーンがないが、大型車の通行が無く、また気をつかって追い抜いてくれる車がほとんどで、走りやすかった。 県道10号(高崎市沖町) 12時ジャストに小幡の中心部に到着。「お休み処大手門」でトイレ休憩。お茶をご馳走になる。案内地図をいただき、町めぐりに出発。 小幡は、江戸時代の織田氏の所領、小幡藩であった。町並みに城下町の風情が残っている。日本の名水百選に選ばれている雄川堰、用水路があって、美しい景観だ。桜が咲いたら、さぞかしきれいだろう。あまり知られていないので、休日にもかかわらず、観光客は少なかった。富岡製糸場にも近いし、ここは穴場だ。 県道脇の用水路 桜・歩道の左手は明治期の養蚕農家が並ぶ 観光地化していないのは良いが、唯一のうどん店が休日で休み。昼食を食べるところがまるで無い。パンを売っている店も見つからない。やむなく小幡を切り上げて、富岡に向かうことに。すると、走りだして間もなく「道の駅甘楽」があり、13時、ここでコロッケ弁当の昼食。 富岡までは県道46号を走って間近で、13時30分、富岡製糸場に到着。 製糸場は休日で多くの観光客が来ていたが、いっときほどの混雑ではない。解説ガイドツアーに参加し、40分ほどでひととおり案内してもらう。明治日本における産業革命の現場であり、やはり興味深いものがあった。 ガイドさんから説明を聞くツアー一行 15時頃、富岡を出て、今夜の宿泊地、安中に向かう。低いひと山を越える形で、河岸段丘もあって、少しアップダウンがある。安中駅まで行ってしまい、国道18号(中山道)でホテル・ルートイン安中まで行く。16時20分着。 このホテルもビジネスホテルだが、昨年オープンしたばかりで新しいのが良い。大風呂があるのも、自転車旅にはゆっくり疲れをとることができてありがたい。富岡市内の薬局で買った消炎クリームを、足の甲に塗りこんでマッサージ。 隣接の和食店でソースカツ丼の夕食。1,000円でまあまあ。 この日の走行距離、約65km。 ●第3日 3月22日(火) 6時前に起床、6時半からのホテルの朝食を食べる。右足の甲はまだ痛みが残るが、ペダルを廻せないほどではない。 8時、ホテルを出発。ホテルのすぐ裏は中山道の旧道で、杉並木が残っている。 旧中山道の杉並木 そのまま旧中山道を走って、史跡をいくつか見てまわる。新島襄旧宅、旧安中藩武家長屋、旧安中藩郡奉行役宅、新島ゆかりの安中教会、旧碓氷郡役所、安中宿本陣跡(安中郵便局)など。 新島襄旧宅(150m離れた実際の場所からの移築とのことだ) 9時にJR信越線安中駅に到着。自転車をばらし、輪行袋に入れる。 ここからは輪行で、9時39分発に乗って高崎駅で上越線に乗り換え、11時22分に後閑駅に到着。高崎駅の待ち時間に、午後の走りに備え、おむすび弁当で早い昼食。上越線内で少し仮眠もとれた。 後閑駅で自転車を組み、12時に出発。走りだして見える景色がすがすがしい。白く雪が残る山並みが眺望できる。苗場山あたりだろうか。 後閑駅からすぐの眺望 後閑駅から法師温泉までは登りだが、距離は22kmほど。標高差が400m程度なので、大した行程ではない。 国道17号も、このあたりでは2車線で狭幅員、古い幹線道路の風情だ。川沿いで、勾配は最大でも8%程度で、自転車の登りとしては楽な方だ。天気も良く、時間もたっぷりあるので、のんびりと走る。 国道17号(三国街道) 1時間ほど走ってダム湖の赤谷湖に着く。ここでひと休み。 赤谷湖 猿ヶ京PAの先で県道261号に入る。この県道は、法師温泉のほか枝分かれしてスキー場など、いずれも行き止まりの道。最悪の場合、未舗装で急勾配かもと覚悟していた。が、実際には予想外にしっかりした道路で、舗装されて勾配も緩く、助かった。 この道で行きかう車は、法師温泉の客くらいでごく少ない。温泉近くでは、猿が走って道を横断した。熊を見かけることもあるそうな。 県道261号 14時、法師温泉に到着。法師温泉は旅館が並ぶ温泉地ではなく、法師温泉長寿館1軒だけ。建物は木造で、歴史を持った温泉宿の風情がある。 パンフレットによれば、この温泉は「自然湧出で、豊富な湯が湯船の底から湧き有効成分が失われることなく人体に吸収されます」「約50年前に降った雨が長い年月をかけて今、岩盤の割れ目から自然湧出しています」とのことである。適温の源泉の上をそのまま湯船にして、加水や加温をせずに済んでいる。まさに天然、自然の温泉で、天の恵みだ。この源泉の温度は年間通してほとんど変わらないそうだ。 メインの「法師の湯」の風呂場は明治の木造建築で、大きな湯船が4槽。40度未満で、長く浸かっていられるがややぬるい。湯船の底は小石が敷いてあって、何か所か湧出スポットがあり、42度くらいの適温の湯が、ガスの泡とともに湧き出ている。このスポットでゆっくり温まるのが何とも心地よい。温泉の効用か、右足甲の痛みも次第に薄れた。 「法師の湯」は女性専用時間も設けているが、基本は混浴だ。女性は入りにくかろう。男性も気を遣うことになる。私は、2日間に計5回入ったが、うち3回は一人きりで、落ち着いてゆっくりできたのは良かった。(なお、女性向けには別に小ぶりの「長寿の湯」が用意されている。) 法師の湯(写真は撮れないので、パンフレットより) 山奥の古い木造の温泉宿であり、宿泊代は高めだが、部屋、料理はそれなり。これは期待する方が間違っている。温泉自体がご馳走、という宿である。私は、この温泉はとても良いと思った。 楽しみにしていた法師温泉だが、期待は裏切られなかった。 この日の走行距離、安中で約5km、後閑から法師温泉で約22km、計約27km。 ●第4日 3月23日(水) 5時半起床。法師の湯に一人ゆっくりと浸かる。朝食後にも、もう一度温泉に入った。 この朝は小雨が降った。雨が上がって日が差しても、雪が舞っていた。気温が下がっているのだが、部屋は不思議と寒くない。窓に隙間もある古い建物なのだが、前夜も朝も寒い思いをしていない。建物全体が温泉の地熱で温められている? 気温がなるべく上がるのを待ち、玄関わきの囲炉裏でお茶をいただいて時間調整した。10時半に宿を出発。 昨日と同じ道をたどって上越新幹線上毛高原駅に向かう。今度は下り坂なのでペースが速い。フリースのベストも含め、持ってきたウェアを重ね着して冷えを防ぐ。 上毛高原駅は後閑駅より高台にあり、最後が少し登りになる。11時50分、駅到着。輪行袋に自転車を入れて、12時9分発上りに乗車、今回の自転車ツーリングを終えた。 この日の走行距離、約22km。 ●まとめ ルートラボによる4日間の走行距離 計149.9km、獲得標高1,020m。 3泊4日のわりには走行距離が短く、自転車ライドより観光主体の旅になった。 体調はずっと良好だった。花粉症には終始悩まされ、右足甲が痛んだのは上述のとおり。右足甲は、法師温泉に何度も入った御利益か、帰り道は痛みが気にならないほどに軽減していた。 ●装備関係の覚え書き 自転車(アラヤ クロスバイク) ・クロスバイクは、今回のような坂のあるツーリング、泊りがけの輪行にはロードより適している。タイヤも、いつもの28Cのパセラ、空気圧7.5で問題なし。 ・ツーリング中は、特に機械的トラブル無し。パンクも無かった。 ・が、帰りの輪行を終えて、自宅近くの駅で自転車を組み立て、走り出したら異変があった。リアのギアポジションをローにすると、スプロケットの内側にチェーンが落ちてしまう。また逆に、スプロケットの外側、トップとその次のポジションにギアが入らない。これまで無かったトラブルだ。リアディレーラをよく見ると、ディレーラ本体とケージプレートの間に隙間があいている。 ・サイクルショップ・フルヤに修理を依頼した。やはりリアディレーラが原因だ。今はもう無いサンツアーの製品なので交換部品が無く、代替できるシマノの品に交換することになった。ついでに、ホイールの振れ取りもしてもらった。 リアディレイラは輪行の際ぶつけるなどで壊しやすいパーツで、気をつけねばならない。でも、輪行はたまに行うことなので、ばらし、組み立てのコツや注意すべきポイントがどうも身につかない。折り畳み自転車でないので、今回のようなトラブルは輪行にはつきもの、ランニングコストのうち、と考えたほうが良いのかもしれない。 装備品 ・服 ・モンベルジャージ長パンツ+裾止めバンド ・パール パッド付きアンダーパンツ1 ・長袖ジャージ1、半袖ジャージ2 ・長袖アンダー2 ・ウィンドブレーカ1 ・靴下2 ・グローブ 指先あり1 *今回は、天気予報をにらみ、雨具上下を省略。 ・バッグ類 ・輪行袋、フロントバッグ、リュック ・身に着ける ・時計、万歩計、財布(保険証、カード類、鍵)、ハンカチ、ティッシュ ・フロントバッグに入れる ・輪行袋・用具、工具、ライト ・地図コピー、iPad mini、筆記用具・メモ帳、携帯電話、ウェットティッシュ ・ウィンドブレーカ、食糧 ・リュックに入れる ・着替え、洗面具、ティッシュ予備