日光・足尾・大間々 ― 初夏の栃木・群馬日帰り輪行 2016年6月2日

●テーマ  足尾銅山跡を訪ね、渡良瀬川上流の初夏の景色の中を走る。 ●行き先  実は、今回は前もって計画したツーリングではなく、当日の朝、急に思い立って決めた。ほとんど下調べしないままの、行き当たりばったり輪行だ。  だいぶ以前だが、わたらせ渓谷鉄道の鉄道旅がテレビで紹介されていて、自転車なら終点の足尾から日光に抜けられそうだ、と地図を見て考えたことがあった。これを思い出した次第だ。  当初、わたらせ渓谷鉄道そのままに桐生市・みどり市側からスタートするつもりでいた。が、北千住駅で東武線に乗り換える際、日光方面の特急の方が先に来たので、臨機応変、日光からスタートの逆コースに変更した。  結果、東武日光駅からスタートして足尾へ行き、渡良瀬川上流の初夏の景色の中をみどり市大間々の赤城駅まで走り下るというコースになったが、これはこれで良かったようだ。登りが少なくなったし、渡良瀬の渓谷をずっと左手に眺めることができた。 ●ルート(東武日光線)東武日光駅~日足トンネル~足尾銅山跡~草木湖~(東武桐生線)赤城駅 ルートの詳細は http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=7d4ba7044ebe0d7c6b599a68ee700ace ●行程  自宅を7時50分発。東武日光駅まで輪行、ちょうど正午到着。駅売店のパン2個で昼食。自転車を組み立てる。  12時45分、東武日光駅からスタート。天気は上々。からりとした晴れで、長袖ジャージが少し暑いか、という程度の自転車日和だ。  コンビニで、スポーツドリンクの900ml、500mlを1本ずつ購入。 東武日光駅駅前 日光の表玄関である神橋  日光市街から国道120号線を行く。緩い上り坂が続くが、出発していきなりの登りなので足が慣れておらず、けっこうきつく感じる。この道は3年前の「日光から長野へ」でも通った。いろは坂へ向かう序の口の道なのだが、こんなに登りだったか。  細尾大谷橋で右折し、足尾・桐生方面の国道122号線に入る。今日のコースはこの122号線がほとんどになる。  今日は、坂に備えてフロント3枚のクロスバイクで来たが、道路勾配が一層急になり、一番軽いギアを使うことがほとんどになった。  途中、サドルが15mmほども下がってきているのに気づき、上げたらペダリングがスムーズになった。上り坂をきつく感じたのはそのせいもあったか。私のクロスバイクは、きつく締めていても、何日か乗っているうちにサドルが下がってくる不具合があるのだ。 国道122号線 細尾町を過ぎたあたり  ようやく登り切って、午後1時45分、日足(にっそく)トンネルに到着。2,765mという長いトンネルは、自転車には難所だ。  トンネルによくあるように、ここでも壁際に一段上げて幅1m強の歩道がある。しかし、もし自転車で走行すれば、暗いトンネル内では左側壁が迫る感覚が生じ、右側車道に落ちかねない。明るい場所の平らな幅1mのレーンと違って、とても走れるものではない。  前後のライトを点灯して車道左端を走ったが、トンネル内で車に追い抜かれるのはとても嫌なものだ。車の通行量は結構あり、多くはスピードを落としてよけながら追い抜いてくれたが、こちらを回避しない追い抜きが3台ほどあり、ヒヤリとさせられた。対向車、後続車が大型トラック同士ですれ違いになる場面では、停車して左側歩道に身体を傾けて難を避けた。こんなところで変に突っ張ってはいけません。 日足トンネルの入り口  トンネルを越えるとその先はずっと下り坂で、トンネル出口付近が今回のコースのピークだった。今回のコースの最大の難所は、日足トンネルだった。  道路は下り坂で路肩も広く、一転、快調に走ることができた。  午後2時半頃、旧足尾町(現在は日光市)に入り、間藤、さらに赤倉の銅山跡まで行ってみた。  赤倉には明治23年に掛けられた古河橋(旧橋)が残り、重要文化財指定になっている。渡った先は精錬所で、建物は旧足尾線の足尾本山駅(貨物専用駅で現在は廃駅)だ。  銅山としての往時の盛んな事業活動が偲ばれる。赤倉の町並みも活気があったのだろう。  エネルギーをつかい、腹が減った。買っておいた菓子パン1個で補給。 古河橋(旧橋) 精錬所入口(現在も何かの事業所として使われており、一般の立ち入りは禁止)  旧足尾本山駅の一つ手前、間藤駅が現在のわたらせ渓谷鉄道(かつての足尾線)の終点だが、そこまでの線路敷が残されていた。せっかく岩を切り通して造った踏切なのだが。 旧踏切脇の廃線路敷  間藤駅の次は足尾駅。凛とした風情の木造駅舎で、駅構内もなかなか広くて立派だ。 足尾駅正面 足尾駅のホーム 上り方面 足尾駅のホーム 下り方面  廃車両には「桐生ー間藤」という行先表示があった  足尾駅のさらに次の駅、通洞駅は、かつての足尾銅山の抗道の一つ通洞抗の坑口があった場所で、昔は精錬所、選鉱所もあり、銅山の社宅も立ち並んでいたようだ。  現在は、観光施設「足尾銅山観光」があって、坑道にトロッコで入ることができるようだが、もう午後3時をまわっているので入場はしなかった。古河の関連会社が経営し、足尾銅山の往時をポジティブに展示しているようだ。  近くにもう一つ、「足尾歴史館」というNPO法人経営の小さいミュージアムがあったので、こちらを見学した。パンフレットから趣旨を要約すると、鉱害の原点ともいわれる影の面と、わが国の近代国家づくりに貢献した光の面の両面をあわせ持つ足尾の歴史と情報を発信し、世界遺産に登録されることを願っている、としている。銅山関係の資料とともに、田中正造らの鉱毒反対運動の資料、いわばネガティブな面も展示されている。  渡良瀬川下流の氾濫、鉱毒被害をうけて、政府が数十日という極端に短い期限を切って鉱毒予防工事を命じたこと、閉山の危機に直面し、排水のろ過・沈殿池、脱硫装置を非常な突貫工事で設置したことは、ここでの展示で初めて知った。古河鉱業の努力に加え、住民たちの協力もあったとのことだ。  ただ、渡良瀬川の源流域である足尾の山が鉱毒ガスではげ山になり氾濫のそもそもの原因であったこと、鉱毒予防工事の効果は不十分だったようでその後も戦後に至るまで下流の鉱毒被害が続いたことを思い起こさざるを得ない。 足尾歴史館のパンフレット  歴史館を出ると、もう午後4時近くになっており、大間々までの道を急がなくてはいけない。ところどころ少しの登りはあるが、基本はずっと渡良瀬川に沿っての下り坂で道も良く、車の通行量もほどほどなので、快適に走ることができた。  左手の渡良瀬川の河川敷には、丸みのある巨大な石がごろごろしていて、良い景色だ。 原向(はらむこう)付近の国道122号線  さらに下って行くと、短いトンネル2本を抜けて、群馬県側のみどり市に入る。  草木ダムのダム湖が、5kmほどにわたって続く。中ほどには赤いトラス構造が優美な橋(草木橋)があった。 草木橋からの草木湖の眺め  また腹が減ってきて大間々までもたない感じになったので、途中、ドライブインに寄り、ジャムパン1個で補給。  市境が入り組んでいるようで、みどり市大間々に入る前にいったん桐生市に入る。 小黒川橋(花輪駅・水沼駅の間)から眺める小黒川(渡良瀬川の支流) みどり市から桐生市への市境  午後5時30分、本日のゴール、大間々の東武線赤城駅に到着。  地元の食堂でしっかり夕食をとって空腹を満たし、ひと休みと思っていたのだが、特急が6時00分発で、次は丸々1時間後。食堂を探す時間は無く、さっさと自転車をたたんで、乗車しなくてはならない。  車中、おにぎりと地酒「赤城山」で夕食。眠気に身をまかせながら、乗り換えての乗車3時間半。家への帰着は午後9時45分になった。 ●まとめ  往復の鉄道乗車が長く、自転車は半日だけの輪行だったが、満足度の高い一日になった。  ルートラボによる走行距離 計64.2km、獲得標高上り796m。山道の半日ツーリングとしてちょうど良い距離だった。  標高は、スタートの東武日光駅が546m、13km先の日足トンネルがピークで920m、ゴールの赤城駅が174m。標高の高い日光からスタートしたので、上りが少なく、下りが多いコースになり、良い塩梅だった。日光スタートで正解!ただ、足尾-日光間にある日足トンネルが自転車には危険なので、コースとしてお勧めはできない。  体調はずっと良好。スタート直前の昼食を軽くしたので、胃の負担はなかったが、途中空腹になり、2度菓子パンを食べて補給することになった。飲料もスポーツドリンクで特に問題なし。日光でも大間々でも、地元料理を何も食べられなかったのは残念でした。 ●装備関係の覚え書き ・自転車(アラヤ クロスバイク)  坂を考えてクロスバイクを選んだ。タイヤは、いつもの28Cのパセラ。  ツーリング中、特に機械的トラブル無し。パンクも無し。サドルが下がっていたので、上げる調整を途中で行った。 ・服   ・長袖ジャージ1 上り坂ではやや暑く、夕方の下り坂ではやや涼しかったが、ほぼOK。   ・半袖アンダー1   ・パール 7分丈レーパン1   ・靴下1   ・グローブ 指先なし1 ・列車乗車時、ナイロンベスト、ナイロン長パンツを着用   *天気予報をにらみ、雨具上下は省略。 ・バッグ類   ・輪行袋、フロントバッグ、リュック ・携行品 ・身に着けて   ・時計、万歩計、財布(保険証、カード類、鍵)、ハンカチ、ティッシュ ・フロントバッグに入れて   ・地図コピー、iPad mini、筆記用具・メモ帳、携帯電話   ・食糧 ・リュックに入れて   ・輪行袋・用具、工具、ライト   ・ナイロンベスト・長パンツ